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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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それぞれの戦地にて

 “ヨハン・アンブロジウス・バッハ“


 WoFの世界において音楽の父と称される、ヨルダン・クリスティアン・バッハの父として知られる人物。


 しかしながら、音楽家としてはそれほど名を残すような事はなく、ヴァイオリニストとしての才能こそあったものの、息子ほど飛び抜けた音楽の才があったとは伝えられていない。


 それでも余所者であり音楽の知識を持たなかったケヴィンでも知っていたのは、やはり息子のバッハの影響が大きいようだ。バッハのことを調べればついでに出てくる、といったような人物。


「これは驚いた・・・。まさかあのバッハのお父上にお目に掛かれるとは。しかし随分と様子が変わってしまっているようですが・・・」


 ケヴィンが口にしたバッハという名に反応したのか、僅かに演奏する手を止めるヴァイオリンの男。だがその直後、男は血相を変えて力強く弓を引き始めたのだ。


 音の振動は糸を伝いケヴィンの身体へと流れる。糸の繋がれた部位に激痛が走り、流石のケヴィンも悲痛な声をあげる。衝撃は緩急を付けながらも断続的にケヴィンの身体に流れ込み、急激にその意識を奪っていく。


「どうやら・・・普通ではないようですね・・・。貴方に何があったのか、それが犯人に繋がる秘密を・・・解き明かす事になるでしょう・・・・」


 シンとは対照的に、激しい痛みにより意識を奪われたケヴィンは長くは保たなかった。薄れゆく意識の中で、資料で見た顔とは明らかに違うその形相を見つめながら、ケヴィンはその場に倒れてしまった。


 ニクラス教会、バッハ博物館に続きグーゲル教会で始まった戦闘も、一行の敗戦が濃厚という戦況が続く。それぞれ街に出た一行がそれぞれぼ場所で、それぞれの謎の人物を操る親玉と激突する。


 この者らが犯人とどんな関係があるのか、それともこの者らが今回を引き起こした犯人なのか。どちらにせよ、彼らに残された戦力は宮殿にいる者達だけとなってしまった。


 宮殿には今も尚、謎の人物達の討ち入りが続いていた。しかし街で行われていた戦闘のように、その者達を束ねるような親玉らしき者は未だ現れていない。どこか他の場所へ援軍を送らせぬよう、足止めをしているようでもあった。


 宮殿の一階にある大きな一室にて、そこを現場の司令室にして状況の把握と人員の割り当てを行なっていたオイゲンら一行。散り散りになったシン達の仲間の中で唯一宮殿に残ったツバキは、ケヴィンに託されたデバイスや電子機器を用いて宮殿で戦う者達に的確な指示を伝えていた。


 正確にはケヴィンのデバイスを宮殿内のカメラに繋ぎ、起動しているカメラにマイクを取り付けながら、各所へオイゲンの声を伝える手助けを行なっていたのだ。


「すまないな少年、君の助けがなければ現場を持ち直すのは難しかっただろう」


「いいってことよ!それに機械弄りは得意なんだ」


「それにしたって初めて扱ったんだろう?それをよくここまで昇華させたものだな」


 シン達が宮殿を去っていった後、中では街と同じように教団の護衛や警備隊が持っていた通信機器が軒並み使用できなくなるという事態が起こっていた。それに加え、宮殿に取り付けられたカメラなどもまた次々に通信を遮断されていった。


 恐らく街の調査を行おうとした、ケヴィンのカメラを故障させたのと同じ原理なのだろうが、一斉に機能が停止しなかったことからも、広範囲で電子機器を止める電波が発せられたという訳ではなさそうだった。


 つまり襲撃を受けてから一つずつ壊されたという事になる。壊されなかったカメラも幾つかあることから、全部を壊しきれていないのか邪魔なものだけ壊せればよかったのか。


 ただ一つ、分かっているのは各々が持つ通信機器が使用できなくなったのは、襲撃を受けた場所からという事だ。要するに謎の人物達が近づくと、電子機器に障害を起こすというのが分かっている。


 その証拠に、護衛隊に守られているツバキの持つカメラは壊されていない。取り付け用のカメラと違い、ケヴィンから預かったカメラは遠隔操作で移動させることが出来る。


 その機能を利用し、ケヴィンの蜘蛛型カメラに急遽作り出したツバキ特製のマイクを持たせて、宮殿の各所に取り付けに向かわせていたのだ。


「通信網は回復してきたな!おっさん、これで今度はこっちから攻められるな!」


「・・・俺はまだおっさんではないが。そうだな、宮殿の方が落ち着き次第、街の方へ人員を割けるようになるだろう。そうしたら彼らの元にも・・・」

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