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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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餌を使った揺動

 二人が最初に向かったのは、マティアス司祭が普段いるグーゲル教会へとやって来た。案の定、教会は静かな様子だったが、念の為中を覗いてみると、普段と変わらぬ様子で別の牧師や教会の者が仕事をしていた。


 中に入り事情を伺うと、マティアス司祭は昨日の式典以来戻っていないそうだ。だがそれは事前に知らされていた事のようで、自分が戻らなくとも普段通り教会を回して欲しいとの事だったようだ。


 やはり教会は彼らを微塵も疑う事なく、持ち合わせている情報を提示してくれる。二人は少し踏み込んだところで、宮殿で何か起きたのかどうかを教会の者に尋ねてみる。もしかしたら宮殿内の情報が何か聞けるかもしれない。


 しかし、教会の男は何かあったとはどういう事だと逆に突っ込まれてしまい、これ以上はまずいと判断した二人は、その場をうまく誤魔化し教会を後にした。


 「やっぱり司祭は宮殿か・・・。後は口止めされてるのか、本当に何も知らないのかだが・・・ジルはどう思う?」


 「口止め・・・といった様子はなかったように思うけれど・・・」


 「まぁ、考えても仕方がないか。次はニクラス教会だな」


 司祭が宮殿から戻っていない以外に、目新しい情報を掴めなかったジルとレオンは、アルバにあるもう一つの教会で、今正に犯人ではないかと疑われ監禁されているルーカス司祭の務めるニクラス教会へと向かう。


 だが、どちらかというと二人が期待していたのはグーゲル教会の方だったのだが、そこで何も掴めなかったというのが少し二人の心に影を落とした。


 しかしそんな彼らの不安は、とある人物によってかき消される事になる。それが良いことなのか悪い事なのかは分からないが、全く進展のなかった二人のところに新たな風を巻き起こしていく。


 二人が重たい足取りでニクラス教会の前へやって来ると、中から何者かの声が響いていた。その声は教会に似つかわしくない怒号のようなもので、言い争っているというよりは、一方的に一人の人物が騒いでいるような雰囲気だった。


 ジルとレオンは顔を見合わせて、急ぎ教会の扉を開ける。するとそこでは、教会の者に食ってかかる若者の姿があった。扉が開いた事により光が差し込んだのが目に入ったようで、声を上げていた人物と教会の者が二人の方へ視線を送る。


 片方は、教会の主人であるルーカス司祭ではない別の牧師のようだ。そして問題の人物はその牧師の前で声を荒立てていた青年。だが二人はその青年の顔を知っていた。姿こそ彼らの知るいつもの服装とは違っていたが、その人物は二人と同じ音楽学校の生徒である、カルロスだったのだ。


 「んだよ、お前らか・・・」


 「カルロス?何故教会で騒いでいるんだ?」


 「騒いでる訳じゃねぇ!こいつらが何か隠してやがるから問い詰めてるところなんだよ!」


 一瞬、なんの話か分からなかったレオンだが、後ろからついてきていたジルが彼の服を引っ張り、何かを訴えるような表情をしていた。そこから何かを察したレオンは、カルロスが教会の者に聞いていたという話の内容について尋ねる事にした。


 「お騒がせしてしまい、申し訳ありません。彼の話は私達が伺います」


 「あぁ!?なんでッ・・・!」


 今度はカルロスの方へ周り、今は黙ってレオンに従うようにと彼を宥めた。ジルとレオンが一緒にいる事にも驚いた様子を見せたカルロスだったが、そんな彼らが自身の邪魔に入るのも何かおかしいと違和感を感じたようで、困惑しながらも三人は教会の隅にある席へと向かい腰を下ろした。


 「何で邪魔すんだよ。ってうか、何でお前らが一緒にいるんだ?お前らそんなに仲良かったのか?」


 「馬鹿を言うなカルロス。それより、さっきの話について聞かせてくれ。教会の人に何を聞いていた?」


 何か聞きせまる表情をしていたレオン達の剣幕に押され、カルロスは先程教会の者に訪ねていた内容について明かした。


 「何って・・・。アイツら司祭が宮殿から帰ってこない理由について、片付けだの何だのって、そればっかりしか言わねぇんだよ。だからよぉ、マティアス司祭のパシリやってるクリスに何か知らねぇか聞こうと思ったんだけど、アイツも昨日、宮殿で見かけて以来誰もどこにいるか知らないって言いやがるんだ・・・」


 カルロスの話によると、どうやら帰ってこないのは司祭達や式典に関わった者達だけでなく、何故か音楽学校の学生であるクリスまでもが宮殿から帰ってきていないらしい。


 クリスに用事があったというカルロスは、彼がどこへ行ったのか周りに尋ねるも誰も彼の行方を知らず、宮殿から帰ってきた者に尋ねようと色々と独自で調べてみたところ、一部の者達が軒並み宮殿から帰ってこないと言うことに行き着いたのだという。


 明らかに彼らの言う片付けに関係のない人物まで帰らぬ事に疑問を持ったカルロスは、宮殿で何をしているのかを隠しているのではないかと疑っていたのだと二人に話したのだった。


 「おかしくねぇか?司祭達ならまだしも、関係のない連中まで何人か宮殿から戻って来てねぇんだとよ」


 「・・・・・」


 考えている素振りを見せるレオンに、ジルは例の事件について話してみてはどうかと提案する。何の話だと不思議そうな表情を向けるカルロスに、レオンは彼を上手く利用できないかと考える。どうやらジルも同じ考えだったようだ。


 二人は宮殿で大司教が亡くなったという情報をカルロスに話し、彼の動向を伺ってみる事にした。

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