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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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犯行の推測

 一行はケヴィンとマティアスの申し出を受け入れ、共に事件解決に協力する事にした。それは自分達が宮殿から解放される為でもあるが、向こうも自身の私欲の為とはいえ見ず知らずのシン達を、式典やパーティーに参加できるよう工面してくれた恩がある。


 「分かった。その話、受けよう。みんなもそれでいいよな?」


 「あぁ、勿論だ」


 「じっとしてても暇だしなぁ」


 「自分達の身の潔白を、自分達で証明するのですね!こういうの、何だか燃えてきますね!」


 部屋に閉じ込められ、事の顛末を待ち続けるよりも、自ら最良の結末を手繰り寄せられる選択肢があるのなら、それに手を伸ばさないのは勿体無いというのが、一行の判断として結論付いたようだ。


 シン達の返事を聞いて嬉しそうな表情を浮かべるケヴィン。しかし、どうにも彼の笑顔には裏がありそうで素直に協力したいと思えなくなっていたシン。だが今回に限っては、ケヴィンの動向を伺う第三者としてマティアス司祭も行動を共にする。


 ケヴィンとて、教団に目をつけられるのは望まぬ展開のはず。今度は監視の目も多くなり、不審な動きがあれば仲間達とすぐに共有できる。彼の思惑や目的を探るという意味でも、今回の話は一行にとってかなり有益な展開となった。


 先ずは事情を説明しなければと、ケヴィンとマティアスはシン達の宿泊していた部屋へ共に戻り、調査の段階や今現在で把握している事などを共有した。


 とはいうものの、事件に関しては多くは分かっていないようで、犯人は手掛かりとなる証拠を残さずして現場を去っていったという。しかし、それは同時に今回の犯行は突発的に起こされたものではなく、計画的なものだった可能性が濃厚になったとケヴィンは語る。


 それもシンの扱う影のスキルのような、テクニカルな使い方をするスキルなどを用いた犯行ではなく、何らかの古典的な犯行であったのではないかと睨んでいるようだ。


 と、いうのも、犯行現場や宮殿三階の要人達が宿泊していたエリア付近は、それぞれの護衛達により新手の人物を感知するスキルや、そもそもスキルの発動とその位置を感知する能力によって、厳重な警戒体制となっていた。


 そんな中でスキルを使用しようものなら、護衛達に囲まれすぐに御用になるのがオチだ。そこでケヴィンが鑑識の者達に重点的に調べるよう依頼したのは、部屋や家具、食器などありとあらゆるところに、人間にとって“毒“となる成分が付着していないかどうかだった。


 「何故“毒“だと思ったんだ?」


 「簡単な事ですよ。ジークベルト氏の部屋は密室でした。中で大きな音がしたり、揉め事があったという話はありませんでした。何より選りすぐりの護衛隊がそうおっしゃるのなら信用してもいいでしょう」


 「やけに教団の護衛隊とやらを信用しているんだな・・・」


 ミアがケヴィンの話を聞いて疑問に思ったことを尋ねる。確かに教団の者ではない探偵のケヴィンが、盲信的に護衛隊の話を鵜呑みにしているのは気になるところだった。


 「確かにそう言われるのも無理もないですね・・・。ただ、オイゲンという人物を知っていれば、彼が依頼を受けている護衛の対象を、その仕事中に始末するなんて考えづらいからです。じゃないと、騎士団最強の盾なんて異名では呼ばれませんよ」


 実績やそれに付随する名声があるからこその信頼度という事だろうか。確かに他の得体の知れない者達よりも、そういった多くの仲間や街の人々に慕われる有名な人間の方が信用はできると言ったところだろうか。


 「勿論、彼らが直接ジークベルト氏を殺したという可能性も無くはありません。ですが、そこに時間を割いているほどの余裕はありません。他にも疑わしき人物は、この宮殿内に多くいるのですから・・・」


 可能性が低いところは後回しにし、最も信用度のある彼らを中心に犯人を探すのがいいだろうということで、それぞれのシン達のような団体は逐一彼らに報告を義務付けられている。


 その代わりとして、各団体から得た情報は公開されるとのことだった。つまり集めた情報は共有され、犯人へと繋がる情報を手にする事もできるかも知れないということだ。


 「話を戻しますが、私が毒による犯行を疑っているのは、それが最も今回の犯行に適しているように感じたからです」


 「適している・・・?」


 「ジークベルト氏の部屋に入れた人物は限られています。それにスキルや特殊な能力による侵入は考えづらい。となれば、彼が心を許した人物による犯行か、接触しなければならなかった人物。或いはジークベルト氏が外で何かに触れた事により毒を盛られたか・・・。なんにせよ、遅延性の毒であれば誰にでも犯行は可能だったという事です」


 すぐに効果の出ない毒。一見それでは役に立たないように思われるが、戦闘やすぐに死に至らしめる場面では使い勝手は悪いかも知れないが、証拠を残さず確実に狙った相手を暗殺するには、これ以上ないほど適した殺害方法だったという事なのだろう。

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