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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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式典とパーティー

 何か騒動でも起きればすぐに鎮圧されるだろう。それだけ強力な装備と武器を携えている。教団の護衛騎士団ともなれば、それだけのものを揃えられる財力もあるという事なのだろう。


 他にもステージに近い位置には、同じくツクヨ達が出会したという街医者のカールがいた。彼もジークベルトに招待されていたのだろう。ツクヨの話では別の博物館で、大司教と接触していたらしい。


 それにアルバの街でも数少ない医者とあれば、それなりに優遇される事も多いのだろう。実際、彼からそう遠くない位置に大司教の席が用意されている。周囲の者達や本人の姿を見れば一目瞭然。


 すぐ側の席には軽装ではあるが、屈強な肉体をした人物が座っている。恐らくその人物こそが、ルーカスの依頼で名前を知ることとなった護衛隊の隊長ではないかと思われる。


 他には、ジークベルト大司教の席の近くに、ここグーゲル教会の司祭であるマティアスの姿もあった。フェリクスが自身の役割を全うする為に教会へ戻ったのなら、彼が教会に戻って来ているのも頷ける。


 その後の演奏は、フェリクス自らが演奏したり一緒になってオーケストラの演奏者らと共に、現実世界でも聞き覚えのあるような有名なバッハの曲が演奏された。


 特に有名どころで言うと“小フーガト短調“や、“メヌエットト長調“といったものや、“二つのヴァイオリンのための協奏曲“という曲では、フェリクス自らヴァイオリンを引いてみせるなど印象深いものもあった。


 音楽に疎い者でも十二分に楽しめるほど、充実した時間が過ぎていった後、席を立ったマティアス司祭の方から長い話があり、教団に関する話がされていた。


 だが、すっかり音楽監督であるフェリクスの組んだプログラムや見事な演奏の虜にされており、マティアスの難しい話が入ってこなかった。実際は彼の話していた教団の話というのも、人間はこうあるべき、信仰を大事にしなさいといった類の教えであり、シン達の求めるような教団に関する重要な話などは一切なかった。


 演奏から演説へと変わり、すっかり眠りへと誘われたツバキとアカリはうとうとと眼を閉じて静かにしている。周りの席の者達も大概はそんな感じであったが、何とか踏みとどまっていたシンは意識をしっかりと持ち、辛うじて教会での式典を乗り越えてみせた。


 何の話か分からないが、マティアスの話やジークベルトからの挨拶などが済んだ後に、教会何に拍手が沸き起こる。その音で眠っていた者達も目を覚まし、取り敢えず周りの行動に合わせようと手を打ち鳴らす。


 式典は終了し、この後は宮殿にて後夜祭となるちょっとしたパーティーが開かれると説明があり、一般客の方から移動が開始となった。しかしここでも、フェリクスの音楽監督の降板の話は出てこなかった。


 全ての話を把握していた訳ではなかったシン達だったが、それでもそんなアルバにとって重要な発表があれば教会内が荒れていたり、ざわついていてもおかしくなかっただろう。


 「なんか重要な話してたか?」


 「いや・・・これといって重要そうな話はなかったけど・・・。って、君も寝てたのかい!?」


 ミアが式典での演説の事をツクヨに尋ねていた。どうやら彼女も眠っていたらしく、一番起きていたと思われるツクヨに聞いたのだそうだ。そんな彼女の期待通り、ツクヨだけはしっかりと演奏後のマティアスやジークベルトの挨拶にも耳を傾けており、形式上の式典の姿をその目と耳でしっかりと聞いていたようだ。


 「宮殿のパーティーは、階級や特別な人物の関係者達と一部の者達で会場が分かれてるみたい。私達は推薦状を貰ってはいるものの、大司教やマティアス司祭達とは違う会場らしいよ」


 「まぁ、予想はしていたけどな」


 「何だよっ!俺達とは一緒に食事もしたくねぇってかぁ!?」


 「階級が無く得体の知れない連中なんて近づけたくないだろ?」


 ミアの言うように、自分の身が狙われてもおかしくない地位や財力があるのものだとしたら、確かに招待状や推薦状があるとはいえ見ず知らずの人間を近づけたくないと思うのは、ごく普通な一般的な考えであると言えるだろう。


 「仕方がありませんわ。あんなにいっぱい護衛の方々を連れて来るほどなんですもの。それだけ警戒するお方なら当然と言えば当然だと思います」


 「その為にルーカスさんは、あんな依頼を私達にしてきたって事だろうからね」


 「要するに、上手く忍び込んで誰にも怪しまれずに、自然に情報を聞き出せって事かぁ?ったく、無茶させるよなぁ〜。バレたらどうなっちまうんだよ?」


 「目的を吐かされた上で、最悪始末されるだろうな」


 ルーカスもシン達にこの依頼を任せる時、命を第一にするようにといってくれていた。あくまで情報は可能であれば入手して欲しい。それが無理なら、強引な手段には出るなと彼らの身を案じていた。


 ただ、依頼をこなせたシン達だからこそ情報の入手の可能性や、危険とあれば脱出する事もできると判断したのだろう。


 「パーティーに参加される方はカードをお忘れにならないようお願いします」


 教会の入り口付近にいる案内人達がそれぞれ声を上げている。この後のパーティーでも受付の時に渡された証明書となるカードが必要になるようだ。


 「カードを忘れないようにですって」


 「・・・なんで俺を見て言うんだよ!言っておくけどお前もだからなぁ、アカリぃ!?」


 眠気の覚めた二人は、すっかり元気を取り戻しいつもの言い合いを繰り広げていた。一行はしっかりとカードを持っている。案内人の指示に従い、教会を出た者達はそのまま帰る者達と宮殿へ向かう者達で分かれ、別々の方へと歩いて行く。

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