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World of Fantasia  作者: 神代コウ
1209/1694

ミアの意外な一面

 「おぉ、流石ツクヨだな!ビシッとキマってるぜ」


 「素敵です!ツクヨさん」


 ツバキとアカリに絶賛され、少し照れた様子を見せるツクヨ。ちゃんとした物が用意されているのだと安堵する一行。ツクヨを人柱のようにしてルーカス司祭のセンスを確かめた事により、不安よりも期待に胸を躍らせながら次はツバキが試着室へと向かった。


 「すごいね。採寸なんてされてないのにピッタリだ」


 「試着室はどんな感じだったんだ?」


 「中は広かったよ?店員さんが見て目だけでサイズを見極めてくれて、最初の一着目で着心地を確かめて微調整して、その後に自分が好きな見た目を選ぶ感じだったよ」


 「へぇ、選択式なのか」


 あまり服装の話をしないミアが、興味を引かれているのか顎に手を当てて何かを考えている素振りを見せる。彼女もこれまでアバターを変える事はなかったが、オシャレに興味があるのだろうか。


 男女でどんな服装が準備されているのかまだ分からない中、シンとツクヨはミアとアカリがどんな衣装を選ぶのかを想像しながら、勝手に期待を膨らませていった。


 暫くすると、ツクヨよりも時間を掛けずしてツバキが試着室から姿を現した。


 「ジャーン!どうよッ!」


 彼が選んだのは、上着の裾がツバメの尾のように二つに割れた、別名イブニングコートとも呼ばれる燕尾服だった。グーゲル教会で中を除いた時に見たという、フェリクスの服装を見て着るならこれだと決めていたようだった。


 「似合うじゃないか、ツバキ!」


 「馬子にも衣装だな」


 「褒めてんのかぁそれぇ?」


 悪態をつくミアだったが、ツバキには彼女の言っている意味が伝わらなかったようだ。恐らくミアもそれを分かった上で口走ったのだろうが。


 ガラッと印象を変えたツバキの変化に目を輝かせていたのは、彼よりも少し年上のアカリだった。自分も変身するように変われるのかと胸を躍らせる彼女は、次は自分が試着したいと気持ちを露わにし、紅葉をミアに預け試着室へと向かった。


 「女性用の衣装はどんなものが用意されてるんだろうねぇ」


 「あぁ、楽しみだな」


 「変な期待はするなよ?」


 アカリの着る衣装を想像しながら口数の増えるシンとツクヨに、ジロリと鋭い目を向けて釘を刺すミアの目は、自分の時も同じような想像をするなよという強い意思を感じさせた。


 ミアの迫力に圧倒され恐縮するシンとツクヨを尻目に、ミアはツバキの燕尾服を見て不思議そうな表情を浮かべる。その視線に気が付いたのか、ツバキはじっと眺めるミアに意外にも照れた様子で彼女の視線の意図を問う。


 「なっ何だよ・・・変か?」


 「いや、似合ってるぞ」


 「そっそうかぁ?へへへ・・・」


 新しい服が嬉しかったのか、いつのも生意気なツバキがまるで嘘のように少年らしい可愛らしさを見せていた。少し背伸びした格好が嬉しかったのだろうか、その後もツバキは全身を映し出す鏡の前で自分の格好を様々な角度から何度も眺めていた。


 待っている間、店内に並ぶ様々な衣服を眺めていると、男性陣待望のアカリが試着室から出てくる。


 まるで時間が遅くなったかのようにゆっくりと現れた彼女は、淡い桜色のドレスを見に纏い、袖や裾などの方は朱色へとグラデーションが掛かっている、何ともアカリらしい色合いになっていた。


 「おっ・・・おぉ・・・」


 「すっ凄いな・・・」


 すっかり様変わりして大人っぽくなったアカリは、普段身につけていないネックレスやオシャレなパーティバッグを身に付けて、恥ずかしそうに頬を赤らめながら仲間達へ感想を求める。


 「どっ・・・どう・・・ですか?」


 美しい衣装に恥じらいを見せる乙女の姿に男性陣は勿論、あのミアまで思わずドキッとしてしまう程、一行を虜にした。


 「なっ何だよ、お前・・・やるじゃねぇか」


 「褒めてるの?それぇ?」


 前へと歩み出す彼女の姿を、仲間達はただ黙って見つめる。視線を釘付けにするアカリは、ミアに預けていた紅葉を受け取りに行く。そして彼女は女性として尊敬するミアにも、自分の姿が変ではないか、おかしいところはないかと不安そうに尋ねる。


 すると、ミアは声を掛けるでもなく突然アカリを抱きしめたのだ。


 「えッ!あっあの・・・ミア・・・さん?」


 自分でも思いもしなかった行動に、ミア自身も驚いておりすぐにアカリをその腕の中から解放した。


 「すまッ・・・ごっごめん!」


  いつもの様子からは微塵も想像できないミアの行動に、仲間達は大口を開けて唖然としている。ミアも初めは動揺していたが、すぐにいつもの調子を取り戻すと一行が唖然とする中、まるで妹の晴れ姿を優しい微笑みで迎える姉のように、お預けになっていたアカリの姿への感想の言葉を送る。


 「大丈夫。とっても綺麗だよ」


 その光景は、さながらラブストーリーの告白の一場面のように、一行の瞳に焼き付いた。

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