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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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目的と種族の違い

 森を進む中で、ガルムは表向きの任務内容をミアに説明する。本来、敵戦力のようなものを見つけた場合準備をしてから複数人で部隊を組み向かうのだが、今回彼らが小隊で本来の目的を偽って出掛けたのは、他の者達を心配させずに真相を探ると言うのもあるが、獣人族の個人的な調査の為に他の種族の者を巻き込めない事からだった。


 偶然、関所で出会ったミアは戦力としても申し分なく例外ではあったが、今彼らと共にいる者達は事情を知った上で協力してくれると申し出た有志達による小隊だったのだ。


 ただその中で、研究員だけは別枠だった。獣の生態や容態を調査するのには欠かせないが、その処遇は必要なら殺してしまっても構わないという辛辣な者だったようだ。


 これまでに彼らがしてきたことを思えば仕方のない事のように思えるが、ここでの研究員達の命はあまりにも軽い扱いを受けている。そこは今後の彼らの活躍により、獣人族やエルフ族といった森に巣食う種族達の信頼を勝ち取っていくしかないだろう。


 しかし、どうして突然こんな話をガルムが始めたのかというと、本来の目的を遂行し完了したところで、関所での表向きの外出理由を無視して戻ることは疑いを生んでしまう。


 そこで彼らに設けられた第二の目的というのが、初めにミアがしようとしていた食糧確保にも繋がる狩猟となっていた。要するに、森からリナムルへ帰る際に何体かの動物の肉を持ってからなければならないというものだった。


 「なるほど、カモフラージュって訳ね」


 「そういう事だ。関所でも言われてた通り、そっちの目的達成の為にも大きな音は避けたい。周りに動物がいなくなってしまうからな」


 「モンスターは食わないのか?」


 狩猟による肉の調達は、何も野生動物だけではない。WoFの世界では、食用で狩られるモンスターなどもいる。その場合はその場で倒してしまうのではなく、捕らえるといった一手間が必要になる。


 狩人やモンスターテイマーといったクラスのスキルであれば、何もアイテムは必要としないのだが、ドロップ品を獲得するのとは違い、食材としてモンスタアーを捕らえる場合は、特別なアイテムである麻酔薬を打ち込む必要がある。


 「食わない訳ではないが・・・その為に一応、麻酔のアイテムも持ってきている。君の獲物であれば容易に打ち込むことができるだろ?それも、音を立てることなく」


 「なんだよ、ちゃんと期待してやがったのか。抜け目ないな」


 それらしい理由をつけて出発した彼らだったが、ちゃんとミアの能力を考慮してプランを練っていたようだ。獣人族の身体能力であれば、モンスターに麻酔を打ち込むのも難しくはない。


 だが、こちらの存在がバレて騒がれるよりも不意打ちによる一撃で静かに事を収められるのであれば、それに越したことはない。


 「しかし、捕えなきゃいけないとはまた随分と面倒なんだな。倒してドロップする肉じゃ駄目なのか?」


 「取れるアイテムの数という違いもあるけど、それ以上に必要な部位を取り分けられるというのが一番大きいかな?」


 「取り分ける?何だってそんなことを?」


 「・・・。さてはミア、君は料理をしないな?」


 「!?」


 突然見抜かれた事に対し、ミアは目を丸くして驚いた。WoFユーザーが就けるクラスの中には料理をする事のできるクラスやスキルもあるが、基本的に自身に使えるアイテムというのは、ゲームのシステム側で自動的に取り分けられている。


 つまり、食用に捕らえたモンスターを使える素材別に分けようとすると、自動でアイテムとして手に入ってしまう為、何がいらない部位で何が使えるものなのかはユーザー達には殆ど知らされることのない情報なのだ。


 「人間やエルフ族が食えるモンスターの部位は限られている。ましてエルフ族ともなれば、食べられる部位など殆どない」


 「何故だ?」


 「モンスターには悪性の魔力が身体に染み付いている。それは体内の肉や皮であっても同じだ。それをそのまま食べるとでもなれば、そういった悪性の魔力を身体に取り入れてしまう事になる。我々に似たモンスターを見たことはないか?極端に言えば、そういった悪性の魔力をたくさん溜め込むと、あぁいったモンスターに変貌してしまう者も出てくる」


 ガルムの言うように、獣人やエルフによく似たモンスターというのもこの世界には多く存在する。モンスター化してしまうと言う話はあまり聞くこともないが、無い話ではないのだ。


 一部のモンスターの設定資料には、種族のものから悪性の魔力を多く身に宿す事によって変貌してしまった者が、発生の根源となっているモンスターもいる。


 「だから基本的にはモンスターの肉はあまり好まれないんだ」


 「アンタら獣人はどうなんだ?」


 「我々も例外ではないが、種族的に我々はそういったモンスターの悪性魔力を分解しやすい体質らしい。だから人間やエルフ達と違って影響が出づらいんだ」


 身体能力に長けた種族である獣人族は、食に関しても他の種族よりもエネルギーを摂取し易い身体になっているようだ。その隆々とした筋肉を維持する為にも、消化や吸収力といった面で秀でており、必要とする量も多くなってしまうのだという。


 その消化と吸収力が弱点となってしまう場合もあり、食から毒を盛られる事に関して非常に弱い体質でもある。故に獣人族の周りでは、毒によるトラブルやゲームのシステム面の話をすれば状態異常に掛かりやすいという話が多い。

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