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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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未知なる地下研究所

 施設内にはツクヨの知らない装置があり、似たような生体反応を探知する機械もあるのだという。それを用いる為にもツクヨの存在が必要なのだと。十六夜の語りは止まらなかった。


 いつの間にか彼女は、現実の世界では話すことのなかった様々な知識や技術を身につけており、余程興味が引かれた事だったのだろう。好きなこと語る時の十六夜は饒舌で目を輝かせていた。


 「蜜月の居場所を突き止める為にも、貴方の協力が必要なの。どうかお願い!力を貸して」


 「あぁ、それは勿論。あの子を見つけられるなら、いくらでも協力するとも。だが・・・」


 普段から仕事を優先してしまっていたツクヨは、十六夜や蜜月がどんな事を好んで何に夢中になっているのかなど、考える暇もなかった。勿論、家族を蔑ろにしていた訳ではない。


 ツクヨが仕事に打ち込んでいたのは、家族の為でもあった。いくら仕事の量を増やしても家庭が裕福になることはなかった。それでも少しだけ贅沢ができる。


 故にツクヨが仕事で忙しくなる時は、決まって家族の記念日や大事な日を迎えようとしている数日前からだった。


 そしてそれが招いた事件が、彼の家族を襲った凄惨な出来事だったのだ。家族の為に働くことで家族から遠退き、大事な時に側に居られなかった。その事がずっとツクヨの心を縛り付け、罪の意識から様々なトラウマのトリガーになっていた。


 だからか、漸く再会できた十六夜の言葉に彼は争うことが出来なかった。


 「よかったぁ!それじゃすぐに案内するわ」


 「あっあぁ・・・」


 十六夜に連れられるがまま施設を進んでいくと、これまで歩んできたルートとは違った見たことのない通路を通り、下の階層へ向かうエレベーターのような装置に乗せられた。


 「十六夜・・・これは?」


 「これは電動でワイヤーを巻いたり、重りで引き上げたりしてリフトを移動させる装置よ。これがあれば上下の階層に簡単に移動することができるの。地下深くの場所であってもね」


 「それは・・・」


 現実の世界で暮らしていた彼女なら、それによく似た機械の存在を知っている筈。何故構造を説明するような周りくどい言い方をしたのか。これも本来の彼女の趣味からくるものなのだろうか。


 「地下には別の通路があった筈じゃぁ・・・」


 「研究所のマップでも見たの?ここは一部の研究員だけが知る、謂わば専用機よ。マップに記されている場所からは、大きな機材を地下へ運ぶの。だから大掛かりなリフトが必要だったのよ」


 隠された通路、一部の研究員だけが知るという地下へ続くエレベーターの存在。十六夜がこの施設でどれだけの立場でいたのかは分からない。


 だがこれは、ツクヨにとっても好都合だった。地下へ行く事ができれば、シン達とも合流することができる。


 エレベーターが地下へ着くまでの間、ツクヨと十六夜は互いのこれまでの話や現実世界での事を語り合った。嫌な記憶だろうが、重要な手掛かりでもある彼女の記憶を頼りにしていたが、やはり彼女の記憶もショックのあまり曖昧になっていたようで、犯人の顔や何をされたのかまでは思い出せないのだという。


 WoFの世界へやって来てからは、すぐに研究所の者達に拾われ研究員の一人として迎え入れられたのだという。元から興味のあった研究に、彼女は徐々に没頭していき、いつしかツクヨや蜜月を探す為の装置の事を知っていったそうだ。


 WoFというゲームの遊び方は、プレイヤーによって様々であると、シンやミアから聞かされていたツクヨは、十六夜のように戦闘や旅といったものではなく、日常や現実では体験できないような研究や知識を身につけるといった遊び方をしていたのだろうかと想像していた。


 十六夜が何やらゲームに没頭していた事は知っていたが、ろくにゲームをする時間もなかったツクヨには、彼女が話すゲームの内容があまり頭に入ってこなかった。


 無碍にしていたつもりはないが、疲れや興味のなさそうな反応を彼女に悟られてしまったのか、次第に彼女がWoFのゲームについて語る事はなくなっていった。


 彼女と話せば話すほど、あの時ああすればよかった、こうすればよかったという思いが強くなっていった。失った事で知った後悔を活かす為にも、今度こそ二人と暮らすことが出来るのなら、二度と同じ過ちを繰り返さないと誓うツクヨだった。


 いつしかエレベーターは地下へと到着し、これまでの雰囲気とは明らかに違う陰鬱でじめじめとした不気味な通路が彼らを迎える。先の見えない薄暗い通路を、十六夜は躊躇うことなく進んでいく。そんな彼女の後をついて行くツクヨは、珍しいものでも見るかのように周囲を見渡す。


 暫くして辿り着いたのは、十六夜のカードキーで開いた扉の先にある個室に、何も入っていない容器が数台並んだ研究室のような場所だった。


 「着いたわ」


 「ここは?」


 「私の研究室よ。ここで貴方の生態データを使って蜜月の居場所を調べるの。さぁ、装置の中に入って?」


 そういって彼女が誘うように手を伸ばしたのは、同じく部屋の中に並んでいる容器の物とは違った装置の中だった。

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