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わたしはちぃ。双子妖精のお姉ちゃんの方です。

作者: 滝藤秀一

 妖精は自然のエネルギーの使い手なんです。

 妖精が惹かれ、妖精を必要としている主が承諾したときのみ、その人の傍にいることを許されます。

 片方だけではシンクロできません。主と妖精2人の心がつながるとき、はじめて契約できるのです。


 わたしの名前はちぃ。

 双子妖精の一応お姉ちゃんだよぉ。

 誕生してすぐに飛べたわたしに、周りは物凄い期待をかけ、それを見たみぃ(妹)は努力して、飛べるようになり、すぐに浮遊スピードも抜かれちゃって……お姉ちゃんの面目丸つぶれ。


 1歳になったちぃは妖精力テストを受けたの。

 妖精力っていうのはね、火、水、風、雷の4系統。みぃは雷だったんだよ。

 で、ちぃは……一人だけ火、風の2系統持ちだった。

 先生はそれを凄いと褒めてくれて、喜んだみたい。

 でも、わたしは……みんなと違うのがたまらなく嫌だった。


「……」

 

 系統別修行でも、ちぃだけ2系統だから、時間が足りずに居残りで。お友達もだんだんいなくなって……

 ある日、わたしは先生に話をしました。


「せんせい、わたし修行するのはみんなと同じで1系統でいい?」


 ちぃの担当の優しい女神の先生は、


「よかった。先生もちぃちゃんと話をしたかったの。確かに2系統鍛練するのは大変だよね……なら毎日1系統ずつやってみようか。それならお友達とも遊べるし」


「うんっ。うんっ」


 ちぃはわかってくれた先生の目の前で笑顔になり頷きます。


「でもいいのかな? 手を抜いても。いつか現れるちぃちゃんを必要としてくれてる人は、いつもがんばるちぃちゃんだからこそ一緒にいたいと願うんじゃないかな……」


「ちぃだから……」


「みんなと違うことは恥ずべきことじゃないんだよ。空を飛ぶスピードをわざと抑えているのも、系統演習の時、手を抜いていることも知ってるよ」


「……だってわたしが全力でやったら、みんなに余計注目されるし、目立っちゃう」


「みぃちゃんは全力でやって仲間外れにされてないよ」


「……みぃは最初から全力だから……」


「出来ないことを努力で出来るようになることと、出来るのに出来ないように見せるのはどっちがかっこいいかな?」


「……最初の方……」


「ちぃちゃんが努力してるのは、先生知ってるんだけどな。みんなにもちぃちゃんの本気を見せてあげた方がいいと先生思うよ。最初からちぃちゃん2系統を1系統の時間で訓練出来るでしょ。隠さなければ、お友達とも遊べる時間出来ると思うな……」


 ……この先生にはわたしの考えがまるわかりみたいです。


「わたしとみぃ、変じゃない?」


「変じゃないよ」


「でも、他の子は哀しんだり、涙を流してないよ。なんでわたしだけ喜怒哀楽持ちなの? みんなは喜楽だけなのに」


 先生は頭を撫でてくれて、


「人の心がきちんとわかる妖精さんだからだよ。きっとそれは主を見つけた先に必要なんだよ。先生も辛いこと、哀しいこといっぱいあるよ。ちぃちゃんとはそのお話が出来る」


「それってラッキー?」


「うん。それがわかることが出来るから、喜と楽の素晴らしさがよりわかるでしょ。悩む前にもっと楽しんで!」


「……わかった。わたし、楽しむ。そして本気でやりまちゅ」



 それから、わたしは学びも遊びも楽しむことにしました。

 最初はあまりに違い過ぎるわたしを見て、みぃ以外のみんなは困惑していたけど、すぐに仲間に入れてくれるようになって、より楽しい毎日を過ごすことが出来るようになりました。



 ある日、ものすごい美人の剣士が女神さまの修行場に顔をだし、みぃは彼女の心に惹かれたという。


「ちぃ、あたしはシェルマさまを主に決めたよ」


 黄色い髪を揺らし、嬉しそうにみぃは上下左右に飛行します。


「シェルマさまはモクモ住民だよね?」


 モクモは女神さまの修行場の真下にある移動都市です。


「そう。ときどき顔見せに来てくれるって言ってくださったの」


「……心に惹かれるってどんな感じ?」


「なんていうか……ダメ、上手く言葉に出来ないわ」



 みいが主となる人を見つけても、ちぃにはなかなかその人が現れなかった。

 そんなある日、今にも消えそうな姿の人がやってきました。下界の人だとは一目でわかります。どうやら女神さまへの訓練の為にここに来た様子。


 そしてわたしは出逢うのです。その人に……

 こちらに近づいてくるその人に、わたしの体は吸い寄せられるようでした。

 シェルマさまと共にやってきたのは、男の人で……

 ドキドキしながらも、肩の上に失礼して着地してみます。ものすごい緊張でした。顔は赤くなり、心音が自分にも聞こえてくるよう。


 少しだけ探ってみます……

 すごい暖かい心だけど、どこか淋しさを感じます。そのことがわたしをより引き付けました。

 この人が妖精を必要とするなら、わたしでありたい。


「みぃ、さっきの男の人、シェルマさまとすごい仲良しだったけど、シェルマさまって男の人お嫌いじゃなかった?」


「ちぃは恋愛感知能力だけはダメなんだから! さっきの人は理久様。シェルマさまの未来の旦那様よ」


「えっ~! そうなの!」


「見てればわかるでしょ。あんなに嬉しそうなシェルマさま初めて見た……ちぃ、理久様を主にしたいんでしょ? きっと下界に行くだろうから、戻る前に選んでいきそうだけど……競争倍率高そうよ」


「そんなぁ……」


「まあ、心に惹かれたのはちぃだけだったんだから。理久様が選択してくれれば選んでくれるかもよ。シェルマさまの旦那様ならいい目を持ってるだろうしね」


「……」


 わたしは赤と緑が半々になった髪を手で整える。


「理久様を信じてまちゅ」



 そしてその時はやってくる。

 妖精を連れて行くと言うことで、理久様の前にはみんなが殺到します。

 みんな、モクモとこの修行場しかしらないので、外に出てみたいんです。

 みんなに押し出されるように、ちぃは遥か後方に飛ばされてしまい……割り込むのは気が引けます。

 かといって諦めることはしたくありません。


 理久様の妖精はちぃですから!

 選んでくれますように……両手を合わせ、祈るのみです。元々、わたしは上手くアピールなど出来ませんから。


 願いは届いて、ちぃは理久様の妖精になることが出来ました。

 理久様とシェルマさまはちぃとみぃ、双子妖精がお助けするんです!


ちぃちゃんは連載中「幼馴染を女神にシェルマをお嫁さんに~ちなみに俺はレベル1から最強剣士をツンデレ兼ラブデレのシェルマは良妻を目指してます~」に登場予定です。

https://ncode.syosetu.com/n6606ey/

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短編は難しいと私は思うので、短編でこれほどまでにしっかり書けるのは凄いという意味です!! 読み返すと変な感じがしたので再度書かせて頂きました!! m(_ _)m
[良い点] 物語をつくる構成力と文章力が短編だからこそでしょうか、とても綺麗でした!! 妖精の話でほのぼのしました。 こういったほのぼのは間延びが怖いかもと思うのですが、この作品はそんな事は無く、飽き…
[良い点] 「いつか現れるちぃちゃんを必要としてくれてる人は、いつもがんばるちぃちゃんだからこそ一緒にいたいと願うんじゃないかな……」 こういった考え方や表現を出来る、考えられることが素晴らしいと思い…
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