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密談の刻


ワイナール皇国暦286年、1の月



俺がコマちゃんから勉強とは名ばかりの情報収集している時

父の自室にはクローディア第1夫人(25)、アルモア第2夫人(25)、エリー第3夫人(22)が集合していた


「3人揃って自室に呼ばれるのは珍しいですわね、あなた?」

「うん、ちょっと子供達抜きで大事な話しがあってね、アルモア」

「あら?それこそ御珍しい!?

いつも子供達にも明け透けに話しをされるロマン様らしくもありませんね」

「まぁね、でも君達が絶対に知っておかなければならない話しだからしょうがないんだよ、エリー

そして、今から話す事は絶対に他言無用だ。いいね?」

「あら、少し怖いですわね?何処までの守秘を?」

「今、ここに居る4人以外ではロウまでだね」

「ロウ様?すると話しは今日の祝福の儀からコマちゃんまでですの?」

「話が早くて助かるよ」

「まぁ、ここ最近は今日ぐらいしかコロージュン家に変化がありませんでしたので」

「あはは…うん、そうだね

しかも、飛び切りの変化だね」


「さて先ずは、君達はコマちゃんをどう思った?」

「コマちゃんですか?あの仔は可愛らしいですわねぇ

なんと言いますか、ロウ様の従魔と聞いて、それしか無いと納得致しました」

「ええ、本当に、従魔に当て嵌める言葉ではありませんが

ロウ様とは本当にお似合いですわ

並んでいると、なんと言いますか、こう、シックリくると言いますか」

「なるほどね、私もその感覚には賛成するよ」

「でも、それがどうしたのですか?別に内密に話す様な事とは思えませんわ?」


「うん、まぁね…コマちゃんがタダの従魔であれば話しは簡単なんだろうけどね

いや、従魔自体が珍しい存在だから簡単ではないか…」

「なにを仰りたいんですの?タダの従魔では無いのですか?」

「う~ん、君達は、どうやって従魔を従えるか知ってるかい?」

「それは、魔獣が棲息する秘境へ行き、戦い屈伏させ…

あら?ロウ様が行かれたのは皇居?」

「そうなんだよねぇ、それに本来は魔獣とは秘境であってもあまり人前には出て来ないほど賢い

賢いからこそ魔獣の子供は絶対に人前に出て来ない

【見た目が】コマちゃんみたいなのは尚更だね」

「?、では、どういう事なのでしょう?」

「うん、コマちゃんは魔獣では無いと言う事だね」

「魔獣ではない?では、普通の動物?でも、普通の動物は従魔にはならない…」

「降参ですわ、真相を教えてくださいませ」


「うん、コマちゃんは神使というモノなんだよ」

「「神使!?」」

「そう、そして私は使が付かない神使だと予想している」

「え?それは神そのものだと仰りたいの?」

「うん、クローディアは見てたよね?あの神社から迸る神威」

「はい、見ているだけで足が竦みました

人が軽はずみに触れてはならないモノ

そう、禁忌と言うべきですわね」

「そう、その途轍もない神威が収まって神社から出てきたのがコマちゃんとロウ

あの神威は、とてもとても神使様が降りてくるレベルではなかったねぇ

まぁそれでも凄いんだけどね

そして、その一連の出来事とコマちゃんと陛下との会話」

「コマちゃんは人と話す事が出来るんですの?」

「陛下とは会話していたね

そして、神社から食事中までずっと見ていたがロウとも間違いなく会話しているね」

「そうでしたの…コマちゃんが私どもが言っている事は理解していると思って見ていましたが…」


「それにねぇ、これが1番重要で墓まで持って行ってもらいたい事なんだけどね

約束出来る?

もし出来ないなら、ここで話しは終わる」


「………約束しますわ……」


「「えぇ…」」


「本当かい?

もし話しが漏れたら私の全力で漏れた先まで滅ぼすよ?

例えそれが我が子であってもだよ?」

「それほどなのですか?でも、それほどの覚悟が要るということなのですね…」

「大丈夫ですわ、私どももコロージュン家の女です

家の不利益になるような事は致しません!」


「そうか、じゃあ私が予測している事を言うよ?

コマちゃんは神そのもので、ロウが神使になっていると思う」

「「「えっ!?」」」

「(神使になっている)じゃなく(神使になった)かもしれないけどね?

表面上は変わらないロウだけど雰囲気が全く別者になっているね

ロウはロウで気を使っているのか変わらない様にしているみたいだけど

今まで私を呼ぶ時【父様】だったのが【父上】になってたりとか微妙な変化があってね

だから、帰りの馬車の中で私より年上みたいだって、少しだけカマをかけてみたんだけど

見事に無言で返されたよ、はっはっはっ…」

「少しだけ口惜しいですわね、私どもには分かりませんでした…」

「うん、まぁしょうがないさ

で、だね、今何故そんな天上の存在が降りてきたのか。って考えてみたんだ

現在、皇国は286年、ロウが20歳になると皇国は300年になる

そして、数字の3が頭に付く年は動乱の兆しがあるって

昔、なんかの書物で読んだ記憶があるんだよね


と、言う事はだよ?

それが現実になるとしたら

これからのロウは人として世を統べる古の英雄の様な者になるかもしれない

でも、あの場にはワイナール皇国皇帝が居て、英雄誕生の瞬間を見ていた


このままで済むと思うかい?」


「「「…………思いません…………」」」


「と、言う事はだ、ロウとコマちゃんは一先ず皇都から離した方が良いと思うのだよね?」

「でも、我が家の兵力は皇家と比べても遜色ありませんわ?」

「そうですわね、それに私どもの実家、3家の兵力を合わせると皇家を遥かに凌駕しますわ」

「と、思うだろう?

でもね、そうすると皇帝は他の3公爵家と連合するだろうね?

間違いなく私だったらそうする

すると向こうの兵力は2倍~4倍と倍々に増えるね

はいペシャンと潰される」

「だから、当面ロウ様とコマちゃんを皇家の目から隠すと言う事ですの?」

「うん、まぁ隠しようは無いだろうから

皇家やウチから離して【危険はありませんよ】アピールだね

それと、それだけだったら、さすがに私も癪に触るから

離れている間に先代の所で力を付けてもらおうかと思ってるよ」

「え?ご隠居様の領地へ?」

「そう、あの【英雄の成り損ね】の父ロシナンテの元にね」

「そう…ですか…ご隠居様の所へ…遠いですわね…」

「ずっとって訳じゃないさ、12歳になったら呼び戻すつもりだよ?

行くかは分からないけど皇立学園にも通わせたいしね

それに、あの父の元で6年も過ごしたら そうそう害される事もなくなるだろう」

「では、その旨を皇家へ伝えるのですか?」

「まぁいずれは伝えるけど、その前に伝わるさ

ウチに居る皇家の間者によってね」

ロマンがニヤリと嗤った






父と母達がそんな事を話しているのを終ぞ知らない俺は

コマちゃんと、あ~でもないこ~でもないと料理話しをしていた

【いや、やっぱりケチャップは作ってよ!】


「いや、ケチャップ作るのは簡単な事なんだけどさ

トマトが夏のモノなんだから、この時期は無いだろっつってんの!」


【君の作ったオムライスが食べたいんだよぉ~

あのフワフワトロトロ半熟玉子がケチャップライスの上に乗っかったフワトロオムライスが食べてみたいんだよぉ~

萌え萌えキュンが欲しい訳じゃないんだよぉ~】


「俺のオムライスは店の人気商品だったから気持ちは分かるが

物理的に無理だ!っつってんの!

でも多分、萌え萌えキュンはウチのメイドに頼めば出来るぞ?w」


【しょうがない!使うか御技!フワトロオムライスの為に!冬のトマトを実らせてみせよう!】


「ヤメレ!左前足腰に充てて右前足を天高く突き上げるんじゃない!いきなり生態系を壊すな!我欲の塊か!なんて神だ!」


俺たちは平和だよパパン








皇帝執務室にてシュラバイツ、セト、シュルツ、アシュラム侍従長が話し合っている


「やはり、神でしたか?」

「うむ、ショーテンのあのザマを見ればな…」

「では?」

「あゝセトとシュルツが言った計画、ワイナール皇家を潰す可能性があるロウを辺境へ追いやる事を実行しなければならぬ

しかし、皇都に居る間に手を出せぬのがもどかしいな」

「陛下、それは仕方ありません

皇都での動乱などあってはならない事です

いまロウを害せば間違いなくコロージュン公は兵を興します

その時に他の3公爵家が取る立ち位置が見えません

ショーテン様のようなマネをすれば、危機感から3公爵家がコロージュン家に付く可能性は高いです」

「分かっている、だからセトとシュルツの提案に乗ったのだからな

しかし、何故、神の降臨ということが今起こったのだろうな?」

「それは、3の動乱期が関係するのではないでしょうか?」

「ほう、シュルツ、詳しく」

「はい、【頭に3が付く年は動乱が起こるだろう】と

古より伝わる予言の様なモノと解釈しています

そして、14年後は皇国暦300年…」

「ロウは心身ともに充実する20歳か…」

「はい、辻褄が合いすぎて気持ち悪いですね」


「ふ~む、セトの勘が当たるか?」

「それは判りかねます、私に巫女の素養があるとは思ってはいませんので」

「しかし、始祖の血を引いているのだ

全く無いとは言えぬかもしれぬぞ?」

「確かに、始祖シュトロムは神職でしたが

隔世遺伝にしても300年近くとなると遠過ぎはしないでしょうか?」

「そうかもしれんが、そうで無いかもしれん

その3の動乱という予言も300年や3000年という途方も無い刻の予言ならば

神ならぬ人の身如き刻など永遠に感じても一瞬かもしれん」

「それはそうですけど…」

「それに英雄ロンデルの子孫ロウに名指しで神使が付くのが偶然とも思えぬ

今まで神が視ていたロンデルの子孫だから、と考えるのが自然であろう?」

「それもそ…あら?同じ事ばっかり」


「くっ…くくく…相手の言葉を誘導する、これも政治だ」

「父上には敵いませんわ」


「さて、追いやった先でロウをどうにか出来れば万々歳なのだがな?」

「こちらで行き先を指定出来ない以上は難しいでしょう

かといって、何の手も打たないのは愚の骨頂ですが」

「当然だなシュルツ、打てる手は全て打つのが為政者の務めだ」

「して、もう既にいく通りかの手は考えておられるのではございませんか陛下?」

「ああ、いや、まだ3通りぐらいだな侍従長

だが、最低でも5段構えぐらいにはしたいから残りはロウの行き先が決まってからだ」

「なるほど、既に3通りでございますか。流石でございます陛下

内容を御教示頂いても?」

「あゝ侍従長だけに話そうと思うから今はな

セトとシュルツが自室へ戻ってから話そう」


「父上、コマちゃんは引き離せませんか?」

「神使を?お主はまだ諦めておらんのか?」

「あら?諦める必要がございますの?」

「ふう…好きにすればいい

神使を此方へ引き込めればシメたものだ

しかし、手助けはせぬ

神使の怒りを買えば切り捨てるぞ?

その覚悟で臨むのであれば良いだろう」

「えぇ構いません、問題ないでしょう

皇家にはまだシュルツも居りますし」

「買いかぶりですよ姉上、私は書物などを読み漁っているのが趣味なだけの男ですよ

政治的に見れば姉上が向いています


それに、私はこの世の森羅万象が探究出来れば満足なんです

それには皇家というものは都合がいい

しかし、それが何らかの理由で邪魔されるならば

如何なる手段を用いても邪魔を排除するのは吝かではありません」

「うふふ…シュルツらしいですわね

では先ずは古典的な方法を取ってみましょう

父上は何をするか知らない方がよろしいでしょう?

私は先に部屋へ戻らせて頂きますわ」

「うむ、そうだな、一応は健闘を祈っておく」


「シュルツは何か手を考えているのか?」

「ふむ、考えているかと言えば考えています…

ですが、私は自分で言うのもなんですが学者肌なもので

父上や姉上とは別の角度から切り込もうと思います」

「なるほど、それは面白くなりそうだな

我としては、そなたがロウの下に付くのも予想しているぞ?

それはそれで良い手だからな」

シュラバイツが人が悪い笑みを浮かべた

「お戯れを父上…

では、私も部屋へ戻ります」


執務室を出て部屋へ向かうシュルツの背は冬なのに汗ビッショリだった


先に独り執務室を出たセトは自室へ向かって歩く

10mほど歩くと廊下の角から若い侍女が出てきた

そして、セトを見かけると深々と一礼し近付いてきた

ネコ科の獣人らしく所作がしなやかで足音がしない

「姫様、お部屋へ戻られているのですか?」

「そうよミア、丁度良かったわ。一緒に私の部屋へ来なさい」

「はい、かしこまりました」


自室に入ったセトはミアが入ったのを確認すると自分で素早くドアを閉めた

そして、ミアにソファーに座る様促す

「い、いえ、畏れ多い事でございます!」

「良いのよ、貴女は私専属の侍女ではないのですから今はお客様です

さぁ早く座りなさい」

「は、はい、失礼致します」

「つかぬ事を聞きますが、貴女はたまに陰働きをしていたわね?

あゝ隠さなくても大丈夫、あと時間の無駄です」

「ぐ…は、はい…」

「うん、ヨシ、ではお願いがあります…」



奇しくも潜在的な敵味方の思惑が妙な具合に合致した日だった







「コマちゃん、トマトも大事だけど

オムライスに必要な、もっと大事な何かを忘れていると思わないのか?」


【もっと大事な何かって何よ?】


「ふっ…これだから素人は…w」


【何さ?ケチャップ以上?】


「俺がオムライスを作っていたのを、よ~く思い出してみるんだ」


【え?え~っと、先ずは玉葱みじん切りと鳥胸身の小間切りを用意して

ボウルに玉子を2個割り入れ5回ぐらい菜箸で軽くかき混ぜ用意

バター2欠けも用意

中華鍋に、油少々入れ少し煙りが出るぐらいまで熱したら

鳥小間と玉葱を一気に炒めて塩胡椒

そこに茶碗1杯分のご飯を投入して軽く炒めたら

砂糖小さじ1杯入れて、その上にケチャップ

軽く焦げるぐらい炒めたら中華オタマの形を利用して丸く皿に盛る

素早く中華鍋をタワシで洗ったら、直ぐ火にかけて水気が飛んだら油を引く

油を引いたら直ぐにバター投入して1回しして玉子投入

数回、中華鍋を回すと玉子の真ん中半熟で周りが膨らんでくるから

ケチャップライスの上に流し被せる

あとは、ケチャップかけるか、デミグラスソースかけるか、だったよね?】


「お~大正解!よく覚えてたね!?」

パチパチパチパチと拍手


【食べたかったからね~身体が無いのが口惜しくて悔しくて…】


「さて、いまコマちゃんが言った中に1番重要な食材があったんですがねぇ」


【?………ハッ!?……米か……】


「せ~いか~い、俺、この6年間で米喰った事無いんだよね?あるの?」


【……ある……けど、皇都には無い…】


「へえ?どこにあんの?」


【東の辺境領…】


「ほう…え?それって!?」


【そう、君のお祖父さんの隠居先だね…】


「は~、狙ってない?」


【全然…】


「どっちが天然なんだかな(苦笑)」



ドアがノックされメイドの声が聞こえる

「ロウ様、夕食の刻限です」


「はいはい、今行きますよ

さぁ晩飯だコマちゃん」





全てが合致した日になった…



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