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龍王の存在


ワイナール皇国暦286年、4の月




「タクシャカめ、本来の龍体に成るなど付近一帯が不毛の地になってしまうぞ…

何故(なにゆえ)(われ)人形(ひとがた)()り、この地まで態々(わざわざ)やって来たのか意味が解っておらぬのだろうな、困ったものだ」

“やれやれ困ったものだ”と頭を振りながらも、アナヴァタプタの顔は嗤っている


元来、血の気が多い龍王が山に引き篭もって泰然と過ごしているのは

龍王の力を思うままに振るってしまうと、あらゆる生命を滅ぼしてしまう為だった

別に此の世の平穏無事を願っている訳では無い、龍王達も気付いていない理由があっての事だ


「さて、ああ化るとタクシャカは止まらぬぞ、我にも止められるかどうか

大山椒魚が何かは解らぬが、小さき者よ、その勇敢さは褒めてつかわすが如何にするのだ?」


「おやおや~?随分と上から目線だね?

デカイから強いって思ってるバカが龍王を名乗ってんの?

舐めんなよ?」


「先から大言壮語を吐くのう、その小さき四つ足は加勢せぬのか?

隙を伺っておるかとも思ったが、黙って見ておるだけの様だが?」

「アナヴァタプタ!何をベラベラと喋りおるのか!」


【え?私?少し前なら手伝いもしたけど、もう必要は無いから見てるだけで充分だけど?

彼は龍王2人がかりでも厳しいよ?

だけど、どうしてもって龍王が言うなら手伝うのも(やぶさ)かではないよ?】

コマちゃんがアナヴァタプタを見つめながら、異様な気配を醸し出す

【どうするの?】


“カタカタカタカタカタカタカタカタ…”

“カチカチカチカチガチガチガチガチ…”

「「な⁉︎何だこれは⁉︎」」

「我の身体が震えておる⁉︎」「口が勝手に音を鳴らしおる⁉︎」


「ククッ、コマちゃんの神気にビビってやんの

んで、本能で身体がビビってんのに頭が理解出来ないマヌケっぷりがウケる」


「…神気…だと…」「我が(おそ)れているのか…」



“““““グギャアアァァァァーー”””””

高空で旋回していた下位龍が一斉に降りてくる


「む、いかん、僕龍(しもべ)が滅したせいで下位どもの統制がとれておらぬ」

「アナヴァタプタよ、早う僕龍を創ればよかろう!

下位は僕龍の命しか聞かぬぞ!」

「タクシャカよ、それが同じ僕龍が創れぬのだ

小さき者が僕龍の龍体を隠したからかもしれぬ」

「クッ…オノレ!オノレー!小馬鹿にしおって!」


「悠長に話してるけど良いのかな?

自分達で自分達の首を絞める事を言ってるよ?

頭潰して身体隠せば復活出来ないんだよね?

ククク…永劫の闇を味わってもらおうか」

ロウが右手に強大な魔力を、左手に光剣を構える


「「なっ⁉︎」」


「今まで世界の頂点に踏ん反り返ってたせいか、自分達が封印されないとでも思ってるから

そんな迂闊な言質を取られるんだよ

上から目線は時と場合によるって事を、常世の国で噛み締めるんだね」


【ちょっと待ってくれる?

せっかく龍王がリクエストしてくれたから、私が最初に動こうかな?

たまには力を使ってみないとね?】


「え?創世神って事を忘れてたけど、その創り出す神が滅ぼして良いのか?」


【構わないよ?龍王って事情があって8龍創って放置してるんだけど

最近は、あまり役にも立っていないみたいだしね?】


「あと6体もいるんだ?

って事は前世で言う八大龍王ってヤツなんだ?」


【そうだね、でも高位の存在だから物を食べる様には創ってないんだけどね?

身体が大きな高位の存在が無差別に捕食すれば星が滅びるからね

いつから食べる様になったんだかね?】


「そりゃ生物の嗜好(しこう)は変わるからなんじゃない?

龍王を庇うつもりは更々無いけど、コマちゃんが口を創ったのが失敗なんじゃない?

千年万年生きてれば口寂しくもなるさ」


【え?私のせい⁉︎でも、君が言う事も理に適ってるね

そうかぁ~そうだったのかぁ~失敗しちゃったのか~

じゃあ、ますます不要な存在になったから龍は滅ぼそうかな

とりあえずは、そこまで来た下位龍を滅ぼそう】


コマちゃんからユラリと神気が立ち昇り、目前まで迫った下位龍の群れを包み込んだ

“プチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチ”


「「「なあっ⁉︎」」」


「ブハッ!コマちゃん容赦なさ過ぎぃ~」

「下位とはいえ、僕龍が創りし龍だぞ⁉︎」

「創…世……神………様……だと……」



【どう?見直した?】


「うん、見直した!なんだよ、マジ神様じゃん

本気で駄神って思っててゴメンなぁ~?」


【くっ…ひねもすのたりのたりしてたから言い返せない…】


「へっへっへっ~♪だろう?

まぁ、つっても要所要所で手助けや助言してくれるからありがたいよ

下位とはいえ100匹ぐらいの龍なんて面倒でしょうがなかったしね

コマちゃんに手伝う様に言ってくれてありがとうね、龍王」









リズ、ミア、フワック達7人が街中であるにも関わらず、フル装備で疾風の様に騎馬で駈け去った後

冒険者組合ではヒト騒動起きるのも当然の成り行きだった


「お、おいおい、代行達行ってしまったぞ?」「どうすんのこれ?」「業務続けるしかないのか?」「いや、先ずは入り口の修繕だろ?」「それもそうなんだが危ないヤツが来てんだろ?防備が先じゃないか?」「冒険者に召集かけるか?」「いや、刻限が不味い…こんな昼過ぎに街中にいる冒険者はいないだろう」「うーむ…そうだな、稼いでる最中か…」「取り敢えず街門を固めてもらうか?」「竜人って言ってたな?だったら見間違いはないかな?」


「おい、ジャイ!大丈夫か?」

「派手に蹴り飛ばされたなぁ?」


「あ…ゴフッゴフッ…あゝ、大丈夫だ

あたた…あのアマ、思いっきり蹴り飛ばしやがって…」


「おまえなぁ…」「こいつ、全然懲りてないな…」「あのー」「おまえの物言い何とかしろよ」「よくよく考えたら、さっきもコイツのせいで死にかけたんじゃねーか?」「まったくだ!この馬鹿野郎が!」「おまえの危機意識はどうなってんだ!」「あのー」「おまえの向こう見ずさは、ただのバカじゃねーか!」「俺はコイツのせいでチビッちまったよ!チクショウ!」


「はあ?ふざけんな!なんで俺ばっか責められてんだよ!」


「「「「「「はあ?」」」」」」

「おまえ本気で言ってんのか?」「組合長代行も蹴り殺してくれりゃよかったのに…」「あのー」「自分が勝てる相手かどうかも分かんねーのかよ?」「何年、冒険者やってんだよ?」「よく、そんなんで生き残ってきたな?」


「あのっ!!!」


「「「「「「えっ?」」」」」」

「あ、トゥリーサちゃん?」「どうした?」「なんか聞きたいのか?」「なにごとだよ、トゥリーサちゃん?」


「はい、組合長代行たちは?何処に…って言うか、凄く危ない竜人だったみたいだけど討伐に行ったのかしら?」


「ん?そうなんじゃないか?」

「あゝ、ジャイが言うには俺たちを逃がしてくれた子供が組合長代行たちの主人(あるじ)って話だしな?」

「ただなぁ…あの竜人を組合長代行たちが討伐出来たとしても間に合わないんじゃないか?」

「確かになぁ…どんなに急いでも半日以上はかかるだろ?」

「しかし、あのちっちゃな子供がフワックさん達の御主人なのか?」

「いやぁ、あのリズさん達の雰囲気からしてそうなんじゃないか?」

「しかし、あの噂の修羅場潜った御主人なんだろ?」

「その先代って感じなんじゃないか?」


「え?フワックさん達の主人って子供なんですか?」


「いや、見た目は確かにそうだったよ?」

「うん、凄く小さな子だったな?」

「あぁ、まだ10歳にもならないだろうな?」

「ただ、後ろ姿見ただけだったけど雰囲気はあったな?」

「あぁ、あんな小さいのにズドンと壁が立ち塞がったみたいな安心感があった」


「えぇ?あのフワックさん達が逆立ちしたって敵わないって言ってたのが子供?

それに、辺境まで来る間に戦闘訓練指導もしてたって…」


「んー、あの俺たちを乗せてきた魔獣のお陰とか?」

「おいジャイ!いい加減説明しろ!」

「あぁ、おまえ知ってたんだろうが!」

「おまえ、子供だったから(かたく)なに黙ってやがったな!」

「何とか言えや!」


「…ボウド達……刺客………よせて………」


「「「「「は?」」」」」

「な~にをボソボソ言ってやがんだ!」

「聞こえねーし!」

「シャンと話せや!」


「だからよぉ……ボウド達ん時に、犯人を囮になって(おび)き寄せて…組合長代行になったヤツらの指揮執ってたのは、あのボウズだったんだよ…」


「なんだ?指揮を執ってただけなのか?」

「犯人と闘ってはいないんですか?」


「あぁ、その場で闘ってはいないな

ただアイツらは、あのボウズが1人だと犯人8人を殺すしかないから

アイツらと他に狼獣人とか合わせて10数人で犯人を捕獲したんだって言ってた…」


「なに⁉︎ボウド達を殺した奴等は8人もいたのか⁉︎」

「つーか、あのフワックさん達が犯人8人を殺すしかないって言ってたってこた

あの子の実力を全く疑ってないんだな」

「で?おまえは何してたんだ?捕獲を手伝ったのか?」


「……………」


「マたダンマリかよ⁉︎」

「ジャイ、おまえなぁ」

「やっと、話したかと思やぁ」

「くそみたいに焦れってーな⁉︎」

「たのむぜ?よお?」

「たすけて貰ったのか?」

「ずるいヤツだ、すぐ黙りやがる」


「やかましいわ!言いたくねーんだよ!」


「おまえ…さては、子供にやり込められたな?」「あー、だからか」「子供に、してヤられるってどんだけだよ」


「うるせーうるせー!あのボウズにゃ少し呆れられただけだ!」


「呆れられたって…おまえ…」「子供相手に何やってんだよ…」「あのボウズにゃ、ってこた、フワックさん達には怒られたのか…」「しょうもねぇ…」


「ちょっとアタシは辺境伯様に報告してくる!」


「え?さっきライザーさんとスーさんが行った時に報告してんじゃねーの?」

「うんうん、わざわざトゥリーサちゃんが行かなくてもいいんじゃねーか?」


「連絡が行ってなかったら後で怒られちゃうじゃない!

それにリズさんとミアさんって、ちゃんとしないとおっかないんだよ⁉︎

いざとなったら辺境騎士団にも出てもらわなくちゃならないんだから!」

トゥリーサが辺境伯の城へ駆け出した










「さてと、後は龍王が2匹だけだね

さっきまで少し興奮してたけど、コマちゃんのお陰で冷静になれたからわかったよ

勝算が無かったら適当に逃げて、作戦考えてから対抗するつもりだったけど

デカくなったぐらいで勝てると思う様なバカに負ける要素は無いな

ちゃんと色んな素材にしてやろう」


「グ、グ、グルオアァァァァァァーー!

ナメおってコワッパアァァァァーーーー!」

タクシャカが怒髪天を衝く…と言うより龍体ごと天を衝く


だが、そのタクシャカの上から何かが覆い被さった


「⁉︎⁉︎何をしおるか!!アナヴァタプタ!!!!」


いつの間にか金銀煌めく龍体に変じたアナヴァタプタだった


「待たぬかタクシャカ!怒りで我を忘れるでない!

あの小さき者は、ワザと挑発しておるのだ!

それに、あの内包する魔力を感じろ!

どう視ても尽きる事ない魔力ではないか!

本気で我等龍王を常世(とこよ)に封ずるつもりぞ!」


「グ…グウウゥゥゥゥ……」


「しかし創世の神よ、何故(なにゆえ)今世(こんぜ)に顕れたのか?

しかも、(おの)ずから御創りになった我等を滅すると言われる

如何なる存念があるのか拝聴したい」


【そうだね、先ず言っておくと、我が為す事に理由は無い

そう()()くして()り、そう()()きして()、と言う事かな】


「禅問答かよ、哲学過ぎて誰にも解からないんじゃない?」


【ふふふ、神の為す事を理解できる者がいるはずないじゃない

私が手ずから創った君でもチンプンカンプンでしょ?

それが君達が言う全知全能の神って存在だよ】


「ふ~ん?つまりは気まぐれ屋さんで、行き当たりばったりで、ある者には感謝されまくり、ある者には傍迷惑で人騒がせな存在って事か」


【ヒドイ言われようだけど、まぁ正解】


「な⁉︎なんという…」

「では神に問う!我等は創世神の気紛れで発生したのか!」


【ん?龍王を創った理由はあったよ?此の世で最初に創った存在だからね?

龍王が僕龍(しもべ)を創って増やしたのは意外だったけどね

それと、人型を喰らうのもね?

物を食べなくても星からの気で満ち足りるように創ったんだけど

まぁ、増えたら減らす様にはしていたから仕方ないのかもしれないね】


「ん?って事は、ひょっとして龍王が人を喰らうのは嗜好品

例えばタバコとかガムとか酒みたいなもんなのか?」


【多分ね?そうだと思うよ?】


「ふむ、飢えじゃなく嗜好で喰ったのか…

知恵がある者からすりゃ愉快犯かサイコパスだな」


【おや?らしくないね?

激おこぷんぷん丸かい?】


「え?いや?そんなに腹は立たないかな?

嗜好とは言え喰ってるからね、何の利用もせずに殺すだけなら不快だっただろうけどね」


【ククク…君も前世からブレないよね

流石に長く自営飲食やってただけはあるなぁ

ちゃんと、いただきますから御馳走様までが染み付いてるね

後は、有効活用しないのが不快なのは、やっぱり貧乏性かな?】


「悪かったな

で?龍王を創った理由って?

あちらさんも知りたがってるみたいだけど?」


アナヴァタプタとタクシャカが頷いている


【ん?此の世のバランス…此の世を調和させる為だね】


「「「調和?」」」


【そう、天と地と水の気を調和させて魔素が増え過ぎない様、減り過ぎない様にする為に強大な力を持たせたんだよ

ただし、それでも8龍も必要だったんだけどね】


「うおっ⁉︎何か壮大な話しになってきた…

つまり、魔素って、この星の気やら宇宙の気ってこと?」


【そうだね、そういう諸々が混ざり合って魔素になってて

此の世、この星の生命体は魔素が無いと生きてはいけないんだよ

それを存在するだけでバランスよく調整するのが八大龍王

まぁ、生命体の中には龍王が調整した魔素を受け付けない体質の人もいるけど

あのチッキーみたいにね?】


「あ⁉︎そうか!だから地龍の血で劇的に回復したのか⁉︎」


【そういう事だよ、でも、あの地龍は自然発生の希少種だから余計に効果があったんじゃないかな?

それこそ龍王並みにね?】


「なんと⁉︎我等の様な龍が自然に生まれていると申されたか⁉︎」

「なるほど、だから我等を滅しても惜しくは無くなったと」


【そういう事、今のままじゃ龍王を存在させる理由が無くなるね

私が創った存在を私が滅するのが(スジ)だとは思うけど

この星に最初に創った存在を滅するのは気が引けるから

彼、此の世ではロウに任せようかと思う】


「あれ?何気に責任重大にした?

そ・れ・と、何気に初めて名前を呼んだ?」


【え⁉︎ウソ⁉︎私、君の名前を呼んでなかった?】


「ん~?たぶん呼んでない、と思う……

後で読み直してみるよ」


【なにバカ言ってんのさ!】




「「あの…」」

「我等は…」「どうなるのであろうか…」





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