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陰謀と野望と無謀と


ワイナール皇国暦286年、3の月




ガロ家族に裏ワザを教えた後に、他の旅人達が居る焚き火に戻ると

おもむろにトランプを取り出した

「ちょっと娯楽の道具を作って持って来たんだけど、みんなでゲームでもしようよ

感想も聞きたいしね」


「これは?」「娯楽って?」「玩具なのかな?」「絵と、数字?」「俺は文字は読めないが数字は大丈夫だ」「あ、あたしも」


『あ、そうか、この世界の識字率も中世から近世西洋並みか

まぁ前世日本以外じゃ仕方ないな

中世から近世日本の識字率が異常なだけだしな

紙も高いし…』

「これはトランプって言います

えーっと、そうだな、英雄達も遊んでた筈のゲームを復刻したんです」


「え?そうなの?ロウ!英雄が!?」


「うん、ガルム、間違いなくね

英雄達が遊んでたぐらいだから、戦術とか駆け引きが楽しく学べるかもしれないね」


「やってみたい!ロウ!教えてくれよ!」

「ほほう興味深いですね、頭取に教えても?」


「ガルム、そんなに焦るなよ夜は長いんだから

ポロ、もう知ってるかもしれないよ?

家に置いてきたからね、これは馬車の中で作ったんだよ」


いくつかのゲームを教えて、旅人達を交え、代わりばんこにゲームをする

その夜の野営場は、いつになく騒がしく賑やかで、夜が更けるまで笑い声が絶えなかった

そのお陰か、夜に獲物を求める野獣が一切出なかったという



翌朝

ロウ達一行は馬の世話を終え、朝食も摂り

出立の準備に余念がない

そこへ、ガロ家族とポロ、ペローがやってきた


「ロウ君、昨晩は有り難い情報をありがとうな

お陰で皇都に行って闇雲に仕事を探さずに、吟味して探す事にしたよ」

「ロウ、いろいろと教えてくれてありがとう

トランプも面白かったよ

ロウが皇都に戻ってきたら、また会いたいな」


「あ、そうだ、ガルムは机上演習って知ってるかい?」


「いや?分からない、それは何?」


「うん、ダイスとかあれば戦術のやり方を簡単に勉強出来る方法だよ

例えばね?」

と、しゃがんで地面に適当に縦線横線を引きマス目を描き

中心線を挟んで両側に小石を並べる

そしてポケットからダイスを出す

「簡単にだけど、この線から両側が敵味方で並べた小石が兵

で、小石を交互に動かして相手の小石にぶつかったらダイスを振る

ダイスの数字が大きい方が勝ちってゲームみたいな勉強法

後は自分なりの縛りルールとか作ればゲームの幅も拡がるよ

ね?簡単でしょ?」


「凄いなロウ!自分で考えたのか?」


「まぁそうなんだけど…モニョモニョ」


「なんだよ、モニョモニョ言って」


『前世知識とか言えないんだよ…』

「まぁその辺はいいじゃないか、勉強頑張ってよ、ダイスもあげるよ

学校に行けるように祈ってるね」


「あ、あぁ、ありがとう」

「ロウ君、ガルムの為にありがとうね

母親として感謝するわ」

「うん、弟の為にありがとう

ロウ君が皇都に戻ってきたら、お付き合いしてあげようか?

頭も良いし、良いとこの子みたいだから、お姉さんは大歓迎だよ?ウフフ…」

「「……………」」

リズとミアのコメカミに青筋が浮かび殺気が漲る

「あ…あははは……」

「姉さん…」


「ロウ様、その机上演習は御家の方々は御存知なんですか?」


「いや?多分知らないと思うよポロ」

『その内、将棋とか作るつもりだけどな』


「では、御伝えしましょう。ペロー、頼んだ」

「はいよ、了解!」


「あ、そうだポロ

隠れて付いて来るのも面倒でしょ?一緒にくれば?」


「え?御迷惑では?」


「今更だね、それにハンプティも今や僕の部下だ

あくまでもポロがハンプティの部下で、僕の下には付いてないって言うならしょうがないけどね?」


「滅相も無い、大恩ある頭取のボスは私のボスですよ」


「じゃあ決まりね?

独りでは寂しいでしょ?ついでだから馭者してよ?ヴァイパーも良いでしょ?」


「では…はい、喜んで。ヴァイパー、ヨロシク頼むよ」

「ヒヒン」(シッカリ ヤレヨ)

ヴァイパーが鷹揚に頷いた

『プッ…ヴァイパーは先輩風吹かせてんな』


「本当にロウ君は獣人と対等に接するんだな」

ガロが感心したように頭を振る


「それはもう、《私達のロウ様》ですから♪」

「ええ、《私達のロウ様》は亜人差別なんて致しませんわ」

リズとミアが、キアンを見ながら澄まし顔で言う


「…………さあ、行こうか…」


「「「「「「「「はい!」」」」」」」」


野営場に居る皆んなに手を振ってロウ達一行は出立した






「旦那様、関所に遣わした騎兵が夜通し駆け、戻って参りました」

「おお、そうか、して如何であった?」

「それが…先ずは報告にあった事だけを申します」

「うむ、言ってくれ」

「先ず、惣領の名はロウ、年齢は6歳ぐらい…」

「なに!?6歳!?そんなに幼いのか?」

「はい、そのようです

次に、同行の従者は騎士が5名とメイドが2名

騎士は全員が人間種ですが、メイドは獣人とエルフの目が醒める様な美人」

「は?6歳の幼な子の従者が、たった7人しか居ないのか!?

しかも公爵家惣領の側仕えが獣人とエルフだと?

意味が分からぬな…変態か?」

「次は、騎馬が5頭と大型馬車、馬車を曳くのは馬型の魔獣だそうで額に捻れたツノが生えていた、と…」

ケイワズが額に手を当て頭を振る


「最後に…」

「まだあるのか!?」

「その惣領が言ったらしいのですが

《僕が東へ旅立った事を伯爵は御存知なのですね?

あまり知る人は居ない事だったのですが

流石はケイワズ伯爵だ、御耳が良い》

と言われ騎兵は2人共に追い返された、と…」

ケイワズが本気で頭を抱えた


「儂とした事が…勇み足であったのか?

侮っていた訳でも無いが迂闊であったか…

しかし、その惣領は本当に幼な子なのか?

小柄な青年ではないのか?」

「それは、今の時点では何とも申し上げられません」

「そうか、うむ、そうだな、下手な予測をしたら同じ失敗をしてしまうな

しかし、領府まで来たら どの様に扱うか…

騎兵を出した手前、今更無視は出来ぬし…

情報通りの幼な子であるならば、社交場へは招待し難いから晩餐会も難しいな」

「まさか、そこが狙いなのでしょうか?

公爵家惣領に恥をかかせ、公爵家への不興にすり替えるとか」

「む…無い話ではないな…試されておるのかもしれぬな」

「やはり、姫様に協力を願いますか?」

「う~む、願って素直に聞くかが未知数ではあるがな…」

「左様で御座いますね…しかし、遅くとも2日後にはオルチへ到着するでしょうから

早急に打てる手は実行しなければなりません」

「む…そうだな、ではメリルを呼んでくれ」

「は、かしこまりました」

「後は、門衛には惣領一行の特徴を伝え、無条件に通せと

間違っても足止めなどはさせぬ様に釘を刺しておけ

そして、街に入ったら即座に城に報せるように言っておけ

不測の事態に備え、兵も待機だな」

「は、抜かりなく」

「とにかく、無事に我が領を出て行かせる事を大前提とせよ」

「はい」





「ポロ、どうだい?寒くないかな?」

馭者台へ顔だけ出して、馭者台にポツネンと座るポロへ声をかける


「はい、お借りしたコートとテンガロンハットのお陰で問題ありません」


「そっか、そりゃ良かった」


「しかし、手綱が無い馬車は初めて馭しますが

便利でもあり退屈でもありますなぁ、ハハッ」


「ヴァイパーは賢いし、言葉を理解しているからね

休憩は指示するから居眠りしてても良いよ」


「ハハッ、そうさせて頂きましょうか

まぁ報告書を作成したりした後にはなりますが」


「うん、馬車は揺れないから簡単な作業でしょ?

じゃあヨロシク」


「はい」


扉を閉めるとリズが温かいお茶を出してくれた

「はあぁぁ…やっぱ風が冷たいね

あったかいお茶が美味しい、ありがとうリズ」


「うふふ、どういたしましてロウ様♪

でも、言葉だけじゃなく頭なんかを撫でてくれてもよろしいんですよ?」

リズがシナを作りながら頭を出してくる


「はい!?」


「リーズー!突然、何を言っているのかなー!」

膝の上でコマちゃんを撫でていたミアがいきり立つ

「あらミア?あなたも思ってるんでしょ?」

「当たり前じゃない!アタシが言いたいのは頭だけじゃなく他のところも撫でて欲しいってことよ!」

ミアがコマちゃんを膝から降ろして身体をクネらせる

「そうでしょうそうでしょう」


「ミア!?」

『なんだ?なんで急にサカってんだ!?意味が分からないんだけど?

なんかあったっけ?』

「えーっと、君たちは何を言ってるのかな?」


「だって、私たちが油断してると直ぐにキアンみたいな女が出てくるんですもの」

「そう、私たちはロウ様に悪い虫が付かないように託されたんです」


「あゝそっか、なるほどね

じゃあリズは頭をコッチに、ミアはお尻をコッチに向けて」


「「は~い♪」」



“ゴチン!” “パチーン!”

「キャア!?」「ヒャア!?」

リズが頭を抱え、ミアがお尻を押さえ海老反ると

“ブハッ、アーッハッハッハッハッ”

と馭者台から笑い声が聴こえてきた


「君達は、ちょっと反省しなさい!」


「「はい…」」

と、正座でペシャンと項垂れるリズとミア

そこですかさず、頭を撫でてやった


「「はあぁぁ、ロウ様ぁ…」」


「感謝はしてるんだからね、ご褒美だよ」







「なあフワック、俺たちって旅に出てからヘマばっかしてねぇか?」

騎馬を並走させながらオムルが話しかける

「あゝそうだな、ロウ様に負んぶに抱っこになっちまってるなぁ…」

「拙くないか?」

トロリーも話しに乗ってきた

「あゝ拙いなぁ…なんとか挽回しないとなぁ…」

「リズさんとミアさんも遣り手なんだよなぁ」

「このままじゃ俺たちって要らなくないか?」

「拙いな…」


「お~い、フワックさん達よ、大丈夫だとは思うが警戒はしてくれよ~」

馭者台からポロが声を飛ばした


「はっ!?あゝわかってるよ!」


「ホントに大丈夫なんかね?」





数時間進んだところで

「ロウ様、村が見えてきましたよ

立ち寄りますか?素通りしますか?」

馭者台からポロが声をかけてきた


「ちょうど昼時だね?食事出来たりするかな?」

ロウが馭者台に顔を出して問いかける


「さぁどうでしょうか?貧しくはなさそうですが、村なんで食事処は無いかもしれませんね」


「そっか、じゃあ素通りで良いよ

村を通り過ぎて適当なところで馬車停めて昼食にしよう」


「はい、承知しました

お~い、フワックさーん…」




暫く進んだら小さな村が見えてきたが、ロウ達一行は速度を落とす事なく村を横目に見ながら通り過ぎる

と、村の見張りか、数人の村人が一行を見ていた

村は昼飯時か、村中央の竃から数本の白い煙が天高く登っていく


村から1kmほど進んだ街道

ロウ達一行の前に、街道脇から1人の農夫が街道上にヒョッコリ出てきた

「おお~い、危ないぞ~」

フワックが大声で呼びかけると、慌てた農夫がフラフラし出す

フワックが進路を少し右に切れば、農夫も右に

左に切れば、農夫も左に

まだ距離はあるがお見合いになる


と、とうとう距離が縮みフワックが並足になり

自然、他の騎馬とヴァイパーも並足になった

フワックが農夫に近づき

「おいおい、危ないじゃないか

申し訳ないが街道脇にどいてくれないか?」


「へい、すいやせんすいやせん」

農夫がペコペコ頭を下げる

「あゝ謝らなくて良いから、さっさと退いてくれ」


「へい、へい」


“ヒュン” “ピュン” “ヒュッ” “ピュッ”


「フワック!避けろ!」

ポロが叫びながら

「ヴァイパー!あっちだ!」

と、ヴァイパーを来た道の方に向けて馬車で前から飛んでくる矢を受ける

ただし、矢はアッサリと弾かれた

フワックは「うわっ!」っとコートで顔を隠すと

矢が“バスッ”とコート当たるも刺さらずに落ちる


フワックがコートで顔を隠したのをチャンスと見たのか

ペコペコしていた農夫が鉈を振りかぶりフワックに斬りかかる

と、農夫の顔にハルバードの槍先が吸い込まれ

農夫が膝から崩れ落ちようとするも槍先に支えられ宙ぶらりんになった

「しっかりしろよ、フワック!」

オムルが怒声を発する

「すまんオムル」

「来るぞ!」

馬車の後方でライザーが叫ぶ


「うらあぁぁー」「おとなしくしろやー」

剣や斧や弓を持った農夫風の男達が、ざっと50人以上か、前後から走ってきた

「少人数だ!さっさと殺してズラかるぞ!」

「「「「「おおう!」」」」」


「リズ、ミアはフワック達のサポート!

ポロはヴァイパーの留め具を外した後は好きな様に動いて!

フワック達は、前方の敵から防衛!

身体の守りは鎧とコートに任せろ!

ヴァイパーは後方の敵を蹴散らせ!

敵の生き残りは1人か2人でいい!」


「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

「ヒヒイィィィィン!」


前方でフワック達が下馬し多人数と激突するも、フル装備のお陰で怪我する事もなく蹴散らしていく

後方ではヴァイパーが集団に向け角から光線を発し薙ぎ倒す、というより細切りにする

ポロは後方集団の射手に肉迫し、ナイフで首を切り裂き

リズは前方集団後方を射撃し

ミアは前方集団の射手を探しだし始末する


襲撃から30分も経たない内に襲撃してきた集団は潰滅した


「ロウ様、後方には2人ほど生き残りが居ました」

ポロが小突きながら連れてくる

「ロウ様、前方には3人です」

トロリー、ライザー、スーが、それぞれ連れてきて馬車前に突き飛ばす


5人の襲撃者を見ながらロウが

「後方の2人は、さっきの村にいたね」


「はあぁぁ?なにふざけた事を言ってやがんだクソガキが…」

そのまま何か言いそうな口のまま、頭が半分に離れて前のめりに倒れこむと

背後にククリを振り下ろした体勢でリズが立つ

「ロウ様を侮辱する言葉は赦されません」


「ヒッ!」「チッ!」「クソッ…」「………」


「それで、さっきの村は拠点なのかな?」


「さあな…」

首が宙を舞った


「はっ?」「何も侮辱してねーじゃねーか!」「なんて事を…」


「最終的に喋ってくれる口は1つあればいいからね」


「俺たちも、お前らを殺したいんだよな」

オムルが1人の脇腹にククリをめり込ませると血が流れ出す


「ぐうっ…あの村は、取り敢えず占拠しただけだ

あんたらが通るのを待ってたんだよ!」


「ふ~ん、村人は生きてんの?」


「女子供は生きてるはずだ…」


「なんで僕たちを待ってた?その情報は何処から仕入れた?」


「それは本当に知らねぇ、頭に命令されてきただけだ」


「ふん、頭はどこにいる?」


「コッチにゃ来てねえ、この先の領のアジトだろう」


「う~ん、ポロ、この先の兵が居そうな大きめの街か村に行って兵を呼んできて

ついでに領府まで早馬を走らせて現状を伯爵に伝えさせて

僕たちは、さっきの村で待ってるから

あ、ヴァイパーに乗って行ってね

物凄く速いはずだから

ヴァイパー頼むね」


「はっ!」「ヒヒン」

すぐさまヴァイパーに跨って駆けていくと、あっという間に砂埃を残し見えなくなった


「フワック、馬車と騎馬を綱で繋いで

リズとミアは3人を縛り上げて馬車に繋いで、抵抗するなら任せるよ」


「「「「「「「はい!」」」」」」」


「ロウ様、死骸は如何されますか?」


「金目のものを持ってるなら剥ぎ取って村に持っていこうか

死骸は放置で」


「「「「「はい」」」」」



そして、暫くの作業をしたら来た道を小さな村へと戻っていった




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