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少年の話 一話目

割り込み投稿失敗したorz

読む分には問題ないので、お楽しみください


 母さんが家に入ってきた。母さんは、母さんが好きな石を地面の下に入れた後、僕を見てしゃべった。


「あぁ、今日のご飯あるかな…ちょっと待ってて」


 母さんは棚にあるパンを僕にくれた。昨日ぶりの食べ物だった。僕はパンを受け取ってから、傍に置いておいた水の入った皿と一緒にパンを食べた。水でパンは柔らかくなる。


「あっ、くそっ、バレたか。場所変えなきゃな。」


 母さんが誰にも触らせない棚を覗きながら呟く。その後は僕に質問をした。


「ねぇ、誰かこの棚漁った?」


「……うん」


 僕は母さんを殺すと呟いていた男の事を思い出しながら答えた。

 母さんは舌打ちしながら棚の中の物を別の場所に隠した。けれどそのことに僕は興味が無くて、どこに隠したのかまでは見なかった。

 _ _ _ _ _

 ─ ─ ─ ─ ─

 僕は母さんの死体を見ながら、母さんが好きだった石を握っている。男はもういない。この石が何なのか僕は知っていたから、それを使ってパンを買おうと思った。お腹がすいた。

 空を見て、灰色だったから僕は皿を出来るだけ並べた。雨水を僕は欲しい。母さんが邪魔だったけど動かす力が無いのは分かっていたから動かそうとは思わなかった。早くパンを買いに行こう。

 _ _ _ _ _

 ─ ─ ─ ─ ─

 パンを売っている家を見つけて、そこで僕はパンをくださいと椅子に座っているおじさんに言った。静かにいくら持ってる、と聞かれたからこのぐらい、と言って石を見せた。僕は母さんの買い物に付いていった事が無い。


「そんだけ持ってんのか…だったらパン一個十五キルトだ。それとそれだな」


 そう言って大きさが違う茶色の石を二つ指さす。


「こっちの小さいのが五キルトってこと?」


「あぁそうだ。買うのか?」


 僕はその答えを聞くと、今度は服の中にしまってた銀色の石を見せた。


「じゃあおじさん。この石はいくらなの? その大きさで買うパンの数を決めるよ」

 _ _ _ _ _

 ─ ─ ─ ─ ─

 僕はその後、おじさんに大笑いされたけど、ちゃんと質問にも答えてもらった。なんで笑ったのか今でも分からないけど、いい人みたい。

 僕はパンを三つ買って、道を歩いていた。働かないといけない。母さんが体を売っていた(だけど体は別に減っていなかった)ように、僕も働かないといけない。

 生きる方法を考えていたら、人にぶつかってしまった。慌ててその人を捕まえようとするが、手を振り払われて逃げられた。服の中を見たけど、そこには当然の様に石は無かった。

 _ _ _ _ _

 ─ ─ ─ ─ ─

「……家は無いのか」


 石を取られてから三日後、僕はパンを買った家の傍でじっと人を見て、言葉を聞いていた。雨で寝れたから寒いけど、動くわけでも無いからそんなに辛くない。動かなかったら体が震えて寒くなるだけ。

 良い人なおじさんの質問に答えようとして、がらがらな声を出す。


「…かえる…いみがない」


「…そうか。そうだな」


 そろそろ疲れたから、おじさんにするつもりの頼み事を言おう。そう思って、僕はおじさんに話しかける。


「おじさん。もうすぐ…きゃきゅがくるよ。身なりがわるくない人が。…その人はたぶんおじさんにこの町でおかしいことが起こって…ないかききにくるよ」


 僕は町の人たちの話を聞いたり、母さんの事を思い出したりして、そのことが分かった。

 おじさんは僕の言葉を信じていないようで、おじさんは僕の言葉をあまり聞いてなかったけど、僕の言った事が本当になると、少し驚いたように僕の方を見た。

 しばらくしてから今度は普通の客が来たから、その時におじさんよりも早く会計を言ったら、もっと驚いたふうに僕を見た。僕はその日の内の客全員にそれをやった後、客がいなくなってからおじさんに頼みごとをした。おじさんはそれを聞いてくれた。やっぱりいい人だ。

 _ _ _ _ _

 ─ ─ ─ ─ ─

 母さんと住んだ家を出てから五年後、十才になった僕は町の若い男の一人に呼び止められた。


「なぁ、お前ってあそこの店に住んでるんだろ?」


 あそこの店とはカテナおじさんの家の事だろう。


「あぁ、そうだ。どうした?」


「あそこって裕福なんだろ。親殺して金奪っちまおうぜ」


「は? 理由になってないぞ。なぜ俺がおじさんを殺す必要がある。俺はおじさんに育ててもらっているんだ」


「だからよ、同じ家に住んでるったってお前別に全部の金を使えるわけじゃねぇんだろ? あのじじぃとお前の服を見比べれば簡単に分かる。だからだよ。金が欲しいだろ?」


 男は少し苛立ち気にそう言う。最近この手の話をよく聞くけど、バカなんじゃないかと思う。路地裏で隠れながら話しているときもあるし、こいつみたいに僕を誘う時もある。この町の人はちょっとお金が好きすぎるんじゃないだろうか。それに服なんて寒さを防げれば問題無いだろう。


「別に俺はこのままでいい。じゃあな」


 呼び止めてくる男を無視して走りながら、おじさんはもうすぐ殺されるかもしれない、と僕は考えた。

 _ _ _ _ _

 ─ ─ ─ ─ ─

「ん、帳簿書いたよ」


「そうか、今日の仕事はもう終わりか?」


「うん……もう寝るよ。おやすみ」


「そうか、早いな。いつもはこの後体を鍛えていたじゃないか。一時期は俺にも勧めていたし、もう飽きたのか?」


 周りがたくらみ始めた時、体を鍛えることをおじさんに勧めたことがあった。断られたけど、よく考えればいまさら鍛えたところで意味はなかった。たぶん当時は動揺していたのだと思う。


「今日はもう疲れたから、やめる」


「そうか、あれはあんまり意味が無いだろうから、やめた方が良いの思うぞ。……おやすみ」


 今日、おじさんは殺されると思う。なんでそんなことに必死になるのか分からないけど、昨日町の若い人達が集まって決めていた。僕も殺すつもりみたいだけど、主目的はおじさんだろう。多人数が相手じゃ勝つ事は無理で、年をとったおじさんと一緒に逃げることは出来ない。そもそも逃げる場所がない。

 だから僕は、金を持って今から逃げ出す。おじさんを置いて。

 この時のために小奇麗な服を買っておいたから、スラム街を出る事が出来る。


「お休み、おじさん」


 さよなら。

 _ _ _ _ _

 ─ ─ ─ ─ ─

 家から走って逃げながら、僕は良く分からない胸の痛みに襲われた。走り過ぎで疲れているわけでも無く、咳で痛めたわけでも無い。ただ、不思議と悪くない感触だった。胸がぎゅっと苦しいのに、それが気持ちいい。良く分からなくて、涙が出そうになったけど、どうしようもなく笑えても来た。


 僕はこの日、恩人のおじさんを見捨てて、スラム街を去っていった。

スラム街殺伐としすぎだろ

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