プロローグ
初投稿です。
趣味がないので試しに投稿してみますが、途中で失踪するかもしれません。
暇なときに読んでくだされば、幸いです。
水に漂うような不確かな感覚の中、俺は慌てて目を開ける。周りには先ほどまでの車のブレーキの摩擦による甲高い耳障りな音は全く無く、フロントの向こうのガードレールどころか、光すら見えない全くの暗闇だった。自分の姿すら見えず、この奇妙な感覚と相まって、どことなく不安な気持ちにさせる。
どこだよここ……。
なぜこのような場所にいるのかわからず、ひとまず先ほどまで何をしていたかを思い出す。
確か俺は、広島のお爺さんが死んだから葬式に行っていて、それで……たぶん事故にあったんだ、高速道路で。となるとここは、死後の世界?
何も見えぬ暗闇の中、俺は自分の現状について考察していた。
周りに家族は居ないのか? 車にはお父さんとお母さんと姉ちゃんがいたんだけど……。まぁ最悪、家族はどうでもいっか。まずはそれよりも自分を何とかしないといけないな。
俺はいま喋れず、見えず、体も動かせない。音は何かが蠢いてるかのような音がずっとしているが、特に変わったことは感じられず、音が聞こえると言ってもぐぐもって聞こえるので、いまいちこの音が何なのかわからない。聞きようによっては、自分が壁にぶつかっているようにも聞こえ、鼓動のようにも聞こえた。
もしかしたら俺は目すらも開けれていないのかもしれない。ふとそう思った。もしかしたら植物状態になり意識だけの状態なのでは、と。しかし、その考えもすぐに打ち切る。
そんなことを考えたところで現状が変わるわけでもないうえ、しみったれた事を考えているとすぐに鬱になりそうだからだ。こんな何もない場所にいればなおさらだ。ここが何処だとしても特になにかできるわけでもなく、かと言ってなぜこうなったのかを考えてもしょうがない。ここは自分の行く末を妄想して暇をつぶそう、そう決める。
常日頃からこういった不安になりそうなときは、希望や良い所を考えるようにしている俺は、この奇妙な体験をしている間にも、ポジティブな思考を始めた。
う~ん、そうさなぁ。ここが死後の世界だとして…女神様とか来ないかなぁ。転生ものとか好きなんだよ。最初に転生ファンタジーを考えた人は絶対天才だと思うね。まぁたぶんこんな辺鄙な地獄の様な所に置かれているわけだから女神は出てこないだろうけど、転生はしてみたいねぇ。まっ、何かしら変化が起きるのを待つとしますか。
このまともな人を狂わす為だけに存在している様な場所に来てから体感で3か月がたった。たぶん俺が狂わずにいられたのは周りの鼓動するような音と、持ち前の精神力のおかげだろう。俺は小学生のころから現実逃避は得意だった。登校して気づいたら学校についている、というのが毎日起こっていたので、現実逃避というよりはぼーっとするのが得意なのだろう。
んー、ここにきてからずいぶん経つが体が少し動くようになった気になるぐらいしか変化がない。いい加減飽きてきたぞ。妄想もマンネリ化してきたし。
……お? なんかあそこに光が出てきている。それになんだか周りの蠢きも活発になってきたみたいだ。これはあの光を目指せという神のお告げかな? よし、どうせここにいても意味はないんだ。とりあえずあそこに行ってみよう。
光に向かって進むことを決めた俺は、ろくに動かない体を動かし懸命に進んでゆく。自分の体がどうなっているのか見てみたが、光が眩しすぎてろくに分からなかった。どうやら自分の姿を見るのはここを出てからじゃないと無理なようだ。
ここで妄想をしている間に、ここは死後の世界だ、と思い込んでいたため、自然と生前からの夢であった事を、俺は願っていた。
……どうか、転生しますように!
結局あそこは妊婦さんのおなかの中だったらしい。自分を取り囲むベットの小さな木の柵をぼんやりと見ながら、現状を思い返す。今はお腹から出てから二週間ほどたったところだ。
俺は子宮の中から出た、つまり転生したということだろう。非常に喜ばしい事だ。
ふふふふふ、くふふふふ、はーっはっはっはっはー。転生だよ転生。夢にまで見た転生だよ。すまんね、前世の友人たちよ、俺は先に異世界に行かせてもらったよ。ひゃっほー。
ひゃっほーの心の声に合わせ、腕を振り上げようとしたが、当然のように動かない。この感覚は貧血の時に似ているかもしれない。動かそうとしても疲れた感じがしてちょっとしか動かせない、もどかしい感覚だ。疲れ切っている状態とも言い換えれる。
無事生まれた俺は、黒髪でぽっちゃりな優しそうな顔の父と、金髪碧眼の美人な母と、子供を自立まで育て終えたであろう年頃のおばさんメイドに世話をされている。メイドと言っても現代日本の男の欲望の塊のような人ではなく、例えるなら近所のおばちゃんの様な感じだ。別に服もメイド服ではない。
メイドさんがいるってことは貴族なのかな? いいねぇ、いいねぇ、転生っぽいじゃないか。ひっひっひっひ。
そして、生前ラノベを読みまくった俺は、絶対に魔法があるはずだ、という勝手な決めつけの元、魔力みたいなものを感じれるかといろいろ試したみた。結果、体の全体によくわからん魔力らしきものを感じることができた。光の様な感覚で、随分と頼りない。しかし、俺的には魔力を使えるという事だけで転生の目的を達成できたといえるぐらい魔法が好きなので、魔力を感じた時ははしゃぎまくった。魔法こそ浪漫だ。魔法がない世界なんていらん。
魔力でいろいろと試してみたところ次のようなことが分かった。
魔力を血液のように体に巡らせる事 できた
それによる身体強化 できた
魔力を目に集め魔力を見れるようにする できた
魔力を動かすことでの念力 できた
魔力の物質化 できなかった
魔力は感覚で言うと触らないと動かない光のような感じで、体の中をスムーズに動かすことや、体から出すことも可能だった。
魔力を動かしたりすると、ちょっとずつ無くなっていくようで、三十分程しか操ることが出来なかったが、こんな科学のかの字もないような現象を自分の意思で起こせたことがうれしく、調子に乗っていろいろと実験してしまった。その結果が上というわけだ。
魔力が見れる、というのは体内に流れる魔力を眼に集中して流すと、周りのいたるところが光っているように見えたのだ。自分の体をその状態で見てみると、自分が感じていた魔力が強く光っていたので、この光は魔力なのだと気づいた。
ほかにも魔力だけではなく空気や生物も淡く光っていて、その光の様なものは各生物ごとに感じ方や光の強さ? が違っていた。
魔力の感じ方が違うというのは言葉で言い表すのは難しく、光るというよりもそこにあるという感覚だと思ってもらえると、少しわかりやすいと思う。気配の様なものだ。
空気に深まれている魔力が影の薄い人で、自分が動かす魔力がクラスのムードメイカーだと考えるといいかもしれない。この二つの違いは分からない。
この魔力を見る方法を「魔眼」と名付けた。
ここまで調べるのに一週間かかったわけだが、まだ、よくあるファイヤーボールすらできない。つまり、他の魔法を一から開発するとなると、大変な時間がかかる。原理も何も分かってないからだ。
したがって魔法の参考になりそうな本を読もうと思う。家族が魔法を使ってくれればまだ何とかなるのだが、赤ん坊の周りで使うのは危険だからか、誰も使わないのだ。
(後に知るが、家族は魔法を使わないのではなく、使えないのだ)
もちろん、いくら身体強化でハイハイができるとはいえ、この歳で動き回ったら怪しまれるし、ひどく危ない。そもそも何処に本があるのか分からない。なので視覚を飛ばす魔法、もしくは透視の魔法を作ろうと思う。
この魔法があれば遠くからでも本が読める上に、家族にばれない。ページをめくるのは念力でやればいい。言語どころか文字もわからないが、絵本を読んでいけば何とかなるだろう。何事も気合で何とかなるものだ。
魔眼はもともと魔察眼という名前の予定だったので、今後時々名前を間違ってしまうかもしれません。
気を付けますが、もし間違っていたらそっとあたたかく教えてください。
「魔察眼だってぇ、くっそだせぇwww」みたいな感じで。
お願いします。