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第一話『 物語の始まり始まり 』
いきなり夢をぶち壊して悪いけど、ハッピーエンドなんて大体は物語の主人公達にしか訪れないと思うよ?
気付いたら知らない世界に迷い込んで、しかもそれがなんとお城で、優秀な騎士様や魔法使いに囲まれながらも、異世界を救って、紆余曲折あって容姿端麗な王子様に恋に堕ちて、異世界の庶民の女とその王子様は末長く幸せに………そう、私が声を大にして言いたいのはその最後の一文ね。
末長く幸せに暮らしましたで終わるなら満場一致の大喝采だけど、世の中ってのは何処であろうとそんな自分に都合良く出来てないし、容姿端麗な王子様がたった一人だけを愛してくれるなんてそんな上手い話が転がっているわけがない。
………え? どうしてそんなに声を荒げて幸せ伝々を力説するかって? そりゃ、もちろん私がその物語通りの経験を一通り経験して、幸せになろうともがいてみたものの、そんな思いを踏みにじる様に。
ーー今、まさに目の前で恋人のはずの王子様が知らない女とベッドで戯れているから。しかもよりにもよって私のベットの上で、ね。