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え? ロリコンですが何か?

作者: Rolly Dice Key
掲載日:2014/09/04

「例えばここに腐ったパンと出来立てほやほやのパンがあるとする。お前だったらどちらを選ぶ?」

「そりゃあ、出来立ての方がおいしいし、安全だからほやほやに決まってるわ」


 俺の問いにエルフである彼女は、深い海のごとく青い瞳を困惑に揺らして答える。


「そうだろうそうだろう。それは当たり前で常識だ。誰も好き好んで腐ったパンなど食いたくはない」


 俺はその答えに満足しながら続きを話す。

 しかし彼女は金色に輝く腰まである髪をふらふらと揺らしながら歩き、だからなんなのよ、とでも言いたそうな顔をする。

 そこで俺は思いっきりドヤ顔をして論破の達成を告げる。


「つまぁり! 今この場で迷子になり泣いている幼女に声をかけお話しし、ハァハァするのも常識であるということだ! はい論破!」

「何言ってんのよ! あんたの理論何一つ理解できないわ! どういう思考回路してんのよ…………ってコラ!」

「お譲ちゃん! ハアハア、こんなところでどうしたのかな? お兄ちゃんと良いことしなへぶし!?」

「変態! これ以上行動に移すと殴るわよ!」


 俺は彼女の言葉を無視して疾風のごとく幼女の前にしゃがみ声をかける。

 が突然真横から衝撃を受けゴロゴロと転がった。

 こんなことするのは見なくても分かる。てかそれ以外いない…………いや、あんな現場みたら俺だったら相手が赤の他人だとしても殴り込むか。


「イテテ、もう殴ってんじゃん、ララ」

「ちーがーいーまーすぅ! 今のは蹴りですぅ!」


 全くそんなのは屁理屈だ。

 俺は道行く人々の、またか……とでも言いたげな視線を無視してプンスカ怒っているララのところへと向かう。

 ちなみに俺の視線はララの横で今のやり取りをポカンと見ている幼女へ釘付けだ。小さなお口に小さなお鼻。くりっと大きな瞳が可愛らしい立派な幼女だ。

 やがて俺がララの後ろ(幼女を庇うような立ち位置にいやがる)に来ると幼女はハッとしてオロオロし始める。


「お、おにーちゃん、だいじょーぶなのです?」

「…………あぁ、神よ。あなたは存在していた。今ここに天使を使わしたのだから」

「おーい何言ってんのよ、ってもうトんじゃってるわね。それで、お嬢ちゃんはどうしたの?」


 幼女……否天使の言葉に俺は片膝をつき、両手を組んで神へと祈りを捧げ始める。

 そんな俺を呆れたような目で見ながらララは天使に話しかけた。

 幼女は俺のほうをチラチラと見ながらもたどたどしい口調で話し出す。可愛い。マジ天使。


「あ、あのね、おかーさんがね、いなくなっちゃったの……」

「そう、迷子なのね。困ったわね。まだ昼間で結構な人がいるわよ。探そうにもこの人混みの中だし…………やっぱ警邏に預けるしか――」

「ちょっと待ったぁ! ふっふっふ、人探しなら俺の出番だ! 俺の【サーチ】にかかれば人一人探すなど朝飯前だわ!」

「ふゅ? いまはおひるなのですよ?」

「はっ! そうだね、昼だね。なら昼飯前だ!」

「そうなのです! ひるめしまえ、なのです!」

「……カハッ! やばい、萌えすぎて、死ぬ……ハッ! これが、悶え死ぬ、か……」

「え? おにーちゃん?! おにーちゃーん!」

「……はぁ、手遅れにもほどがある。その馬鹿はほっといて行きましょ」


 俺がせっかく人探しの『魔法』を使えると言ったのになんだこの扱いは。

 俺はすぐさま回復して立ち上がり思い出したように天使に話しかける。


「っとその前に天使ちゃんのお名前は何かな?」

「てんし? アインのこと? アインのおなまえはアインなの!」

「ぬおぉぉおお! 浄化! 浄化されるぅ! 社会という汚れた世界に汚染された心がぁ!」

「……このままこの世から消滅すればいいのに」

「おい! 今なんか酷い言葉が聞こえたんだけど?!」

「気のせいよ、気のせい。さ、早く【サーチ】で探してちょうだい」


 天使、もといアインちゃんの名前を聞きいろいろ騒いでたが、いつも通りララが軌道修正してくれた。なんか俺の扱いがだんだん酷くなっていっているのが気になるが……

 そう言う意味で恨みがましい視線をララに向けるがお構いなし。完全にシカトされる。略してカンシト。

 するとこの沈黙をどう受け取ったのかアインちゃんの大きなお目目に光るものが……


「ぇぐ、おにーちゃん、ひぐっ、おかーさん、さがして、ぅう、くれないの、です?」

「探すさ! もちろん、全身全霊この命に代えても探し出して見せるよ! だから笑って?! ほらにっこり~」

「ひぐっ、に、にっこり~?」


 ピースを作って両頬を上げて笑うアインちゃん。


「グハッ! な、なんだこの破壊力は……抗えん……」

「お、おにーちゃん? ……やっぱおかーさんさがしてくれないんだぁ、う、うぇぇえ――」

「よし探すぞ! すぐに探す! だからにっこり笑っててね~。アインちゃんが笑ってるとお兄ちゃんもやる気でちゃうぞ」

「ひぐっ、こ、こう?」


 目がぁ、目がぁ!

 アインちゃんのまるで光でも発しているような笑顔にまたも倒れそうになるがそうすると泣いてしまうのでなんとか耐える。くっ、神よこれも我にもたらした試練なのか……

 てかはい、すぐやります、だからそのゴミを見るような目でこっちを見ないでくださいララさん。

 俺はすぐさま目を瞑り探知魔法の【サーチ】を発動する。

 これは魔力を感知する魔法で、これでアインちゃんと似た魔力を持つ人物を探せば十中八九家族に会える。

 自慢だが、この【サーチ】でそこまで詳しく魔力を識別できるのはおそらく世界でも片手分の人数しかいないだろう。そのうちの一人が俺。ドヤァ!

 半径五百メートルほどの範囲を調べていくと一つ、アインちゃんと同じような反応を示す魔力が見つかった! うげぇ、本当に人が多くて気持ち悪ぃ。

 しかしそんな顔はおくびにも出さずアインちゃんに向かってにっこりと微笑む。


「アインちゃんのお母さんが見つかったよ。それじゃ会いに行こうか」

「え?! ほんと?! おにーちゃんすごい! すっごいの!」

「でゅふふ、そ、それじゃお兄ちゃんとお手手つないでいこうk」

「はいそこまで~、アインちゃん? お姉ちゃんと手つないでいこうか」

「うん! ありがとっ、おねーちゃん!」

「………………」


 もう少しでアインちゃんと手をつなげたというのに…………

 アインと手をつなぐララをそれこそ殺気が篭るほどの目で睨みつけていると……


「それじゃ、さっさと案内してよね」

「は? 勝手に行けばいいだr」

「あんだけ見逃してあげたのに文句いうんだ。へ~、そうなんだ。あ、そういえばこの前ギルドの小さな受付嬢をハァハァしながら見てた――」

「すんませんっした! すぐに案内しますんで勘弁してください!」


 見事に弱みを突きつけられた俺は、敗者特有のどんよりとした空気を纏いながら前を歩き始めた。そのギルドの受付嬢はギルドマスターの娘なのだ。追放どころか暗殺の依頼が来るとも限らん……

 ちなみに道行く人々はこの光景にも慣れたようで全員シカトしている。慣れって恐ろしいね。


「……普通にしてればかっこいいし、良いやつなのに……」


 案外高評価だったらしいララの言葉を背に俺はアインちゃんのお母さんと思わしき魔力のあるところへ向かって歩き出した。






「ありがとうございます! もうなんとお礼を言ったらよいか……」

「おにーちゃん、ララちゃん、ありがとっ!」


 長い金髪を後ろでくくった妙齢の女性がアインちゃんの手をギュッと握りながら頭を下げてくる。アインちゃんもお母さんと一緒に小さな身体をめい一杯大きく動かしてお辞儀をする。幼女の一生懸命な姿…………萌える。いやむしろ燃える。俺の心が。

 俺はにっこりと自然に笑みを浮かべると喋りだす。


「いえいえ、当然のことをしたまでですよ。幼女が泣きそうな顔で助けを求めているのにどうして無視できましょうか。これは世界の理なのです」

「? ちょっと良く分かりませんでしたが本当にありがとうございます。そしてこれが、ささやかですがお礼です」

「いやいや、受け取れないですよ! 奥さんも生活大変でしょう? そのお金はアインちゃんのために使ってあげてください」

「ケントさん……本当にありがとうございます。いつか必ずこのご恩はお返しいたします」

「おにーちゃんかっこいいの!」


 アインちゃんの言葉にだらしなくにやけながら俺たちは手を振ってアインちゃん親子と別れる。遠くまで歩いても聞こえてくるアインちゃんの元気な声が俺の顔を更にだらしなくする。


「…………さっきまでかっこよかったのに、今じゃバケモノじゃない……」

「おい! バケモノはないだろ。バケモノは」

「それは鏡でも見てから言うべきね。ほら」

「うぉい! なんだこのバケモノは…………って俺か」


 ララはそのキュっと引き締まった腰にかけられているポーチから手鏡を出すと俺に見せてきたのだが、おれはそれを覗き込んで思わず叫んでしまった。確かにそこにはバケモノがいたからだ。…………だらしなく顔をゆるゆるにした俺というバケモノが……

 それに若干へこみながら俺たちは元もとの目的地に向かって歩き続ける。


 歩いているときに不意に思ったことがあるので口にする。


「それにしてもさぁ、なんでララは俺なんかと一緒に旅してるんだ? しかも二人じゃん。今更だけど襲われるとか思わなかったの?」

「そ、それは…………あ、あんたが面白そうだったからよ」

「へ~、ならもう一つの襲われると思わなかった、の方は? 俺もこれでも男だぜ?」

「そ、それは、まだあのときはあなただって弱かったし…………」

「へ~、ま、いいや。それより着いたぜ~。いちいち答えるのが遅いんだよ~」

「そ、それはあんたがっ!」


 俺はララの罵詈雑言を聞かないようにしながら冒険者ギルドへと入って行った。うん、絶対凹むから。てか弱かったってなんだよ。そうだったけど今は違うやん!

 そんなことを考えながら俺はいつも通り依頼が貼ってある入って右手の壁へと向かう。そう、俺らの元々の目的地は冒険者ギルドだったのだ。それが途中で泣いている幼女を見つけこんなに遅れてしまった。いや、後悔なんてこれっぽっちもしてないけどね! むしろ癒され悶えさせられ桃源郷を見れたから激しくプラスだよ!


「おぉ! ケントじゃねぇか。久しぶりだなぁ!」


 壁の依頼表をみていると後ろから声をかけられたので振り返る。


「ライカン! ホント久しぶりだなぁ! どうだ? 怪我は治ったのか?」

「おう! ばっちしよ!」


 そこにいたのは俺の同志である筋骨粒々、スキンヘッド、巌のような顔と子供が見たら泣き出すだろう間違いなしのナイスガイだ。

 あいつはこの前護衛依頼でしくじり、腕を怪我していたのだ。

 だが俺はその怪我を褒め称えている。何故ならその怪我は七歳の女の子を守るために怪我したのだから。実際は怪我せずに守れたけども万が一を考えて体をはったのだ。

 それ以来俺たちは同志となり、様々な場所で談笑する間柄になった。


「あんたなに満足そうな顔してんのよ」

「お? 顔に出てたか。まあ同志に会えれば顔も緩むわな」

「そんなこと言ってないで依頼探しなさいよ!」


 二人で目で通じ合っていたら一人蚊帳の外にいたララが口を挟んで来た。

 渋々俺はライカンと握手をしてから依頼選びに戻った。

 どれがいいかな~、などと目を通していると一つの依頼が目に止まった。


「【盗賊団の殲滅。最近農村や商人の盗賊による被害が増して来た。盗賊は襲った者たちの中でも男は殺し、女『子供』を攫って……】んだとおい!」


 俺は小さく依頼表を読み上げていたが、そのひっかかった部分に差し掛かり思わず叫び出した。

 視界の端でララがビクッと硬直していたが今は無視だ。


「おい!」

「は、はいぃ!」


 俺は心が荒ぶったまま受付嬢に声をかける。


「この依頼にある女子供はどうなるんだ!?」

「あ、え~っと、女性の幾人かはおそらく盗賊の慰み者になり、そうじゃなくても子供と一緒に奴隷に……」

「うおおおおおおおおおお! ライカン! 聞いたか!」

「おうよ! ばっちし聞いてたぞ! その盗賊団とやらは知らなかったようだなぁ! この町にある組合、幼女愛好家団体(ロリコン)の存在をなぁ!」

「今すぐ連絡! 今から一時間、いや三十分に南門に集合だ!」

「おう!」


 怒涛のやり取りを唖然としていた受付嬢は、しかし仕事はちゃんとやっていた。この場合の仕事とはつまり説明の続きだ。


「……特に獣人の子供は高く売れるので……」

「なんだと!」


 その言葉に反応したのは椅子に座り酒を煽っていた男。どちらかというと神官のような出で立ちの男は受付嬢の言葉に反応して椅子を倒しながら立ち上がった。

 俺はその男を見て呟く。


「ケモナー教……」

「おお! あなたも仲間ですか。そうです私はケモナー教の司教であるキビトです。それよりも受付嬢さん、その話は本当ですか?」

「は、はい。獣人のいた村もいくつか襲われていたので本当かと……」

「幾つか!? ならもう時間は無いに等しい! 冒険者殿! 私もケモナー教を動かします。一緒にゴミを掃除しに行きましょう!」


 そう言って神官っぽい、というか神官だったキビトは懐から取り出した石を砕いて一瞬で消えた。


「あ、あれって転移石よね……? 一つで平民の数年の稼ぎほどするっていう……」


 なんか後ろで言っているがそんなもの知るか! もう俺の中にはケモナー教と共にゴミを掃除するしか頭の中に無い!

 俺は机にその依頼表を叩きつけて言う。


「この依頼を受けるぞ! 手続き!」

「は、はい! 今やります!」


 俺の冒険者プレートを持ってなにやら書く受付嬢。

 待っているのがもどかしくなり俺は叫ぶ。


「遅い!」

「まだ二秒ですよ! はい、終わりました。ご武運を……」


 俺は自分のプレートをひったくるように取ると受付嬢の言葉を全部聞く前にギルドを出たのだった。








「あれ? 私は? 置いてけぼり? てかこの展開はなんなのよ! いきなり過ぎて誰も着いて行けてないじゃない! コラおい待て~!」


 なんかララの声が聞こえた気がしたが気のせいだ!










 三十分後。

 盗賊が暴れていると言われている場所に近い南門へと総勢五百の同志が集まった。

 空気がこれ程ピリピリしているのを俺は感じたことが無い。門兵もそさくさと中へ戻っている。おい職務放棄。

 俺は今にも爆発しそうな爆弾を抱えたような心境で同志の前に立つ。


「集まって来てくれた諸君。まずは礼を言おう」


 厳格な声を意識して俺は言葉を紡ぐ。


「さて、今回集まってもらったのは他でも無い。この世のゴミを掃除するためだ」


 俺の声にだんだんと熱が篭っていく。


「か弱い幼子を痛めつけるこの世のゴミ共! やつらを許して良いのか?! 言い訳が無い! そうだろ!」

「「「オォォォォオオオオ!!!」」」


 俺の魂の叫びに男たちは雄叫びを上げる。

 俺は大仰な身振り手振りをつけて、声に更に熱を込める。


「俺らは紳士だ! か弱い幼子を守る騎士であり見守る紳士だ! なら今はどうするべきだ!? 我らのすべきことは?! 答えろ!」

「「「ゴミの掃除!」」」


 幾人か、皆殺し、や、永遠の苦しみを、とか言ってたがそれは後で聞こう。


「そうだ! 今お前らは騎士となる! 幼子を守る騎士となる! 我らは幼子を守るためならその身を捧げる盾だ! 我らは幼子を痛めつけるゴミを葬り去るための剣だ! いざゆかん! 敵はガイル山にあり!」

「「「オオォォォオオオ!!!!」」」


 俺が言い切って拳を掲げると総勢五百の同志は各々の武器を掲げて一番の雄叫びを上げる。

 そして俺はトリガーとなる一言を発する。


「行くぞ!」

「「「オオォォォォォォォオオ!」」」


 こうして幼女愛好家団体(ロリコン)とケモナー教の信者たちは盗賊の住まうガイル山へと向かい、駆け出した。







 南門の近くを歩いているある親子がいた。


「ねぇねぇ、ママ~。あの人たちどーしたの?」

「メッ! 見てはいけません!」


 このようなことが彼方此方(あちこち)で起きていたという……











 流石は冒険者と言おうか、結構チートな俺と同じくらいの速さで街道を走っていた。しかも三時間ぶっ続けだ。これについて来れない奴は早々に脱落し後に続くと言っていた。

 現在俺についてこれている冒険者は五十名ほどだ。あれ? 俺一応冒険者の最高ランクだよ? 戦闘力に関しては人類最強だよ? つまりスタミナとか速さも化け物なんだけど……いくら手加減してるからってこれは……しかもそれが五十名か…………その前にそんな実力者が幼女愛好家団体(ロリコン)かケモナー教に入っているなんて…………やっぱ強いやつはどこかしら欠陥を抱えてんだなぁ。

 走りながらまだ余裕のある思考を俺はそんなことに使っていた。

 と、その時前から人が飛んで来た。うん、文字通り空中に飛んでいる。多分魔法の【飛行(フライ)】だな。

 そいつは俺の前で止まり、反転すると俺と並走し始める、報告を始めた。


「報告します! ガイル山にゴミ共はおりました!」

「見つかってないだろうな!」

「はい! しかし…………」


 こいつはガイル山を転移ポイントにしており先に転移で偵察に行き、俺に報告する命を受けたやつだ。

 その報告に俺は最大の懸念事項、バレて逃げられる心配のある敵からの発見を問うと、返事をしたものの言葉を濁した。


「なんだ?! はっきり言え!」

「はっ! 遠目ではっきりとは分からないのですが、犬耳の幼子が椅子にされっ、さ、されて、さ、さ、れ、されてててててグォォォオオオオ! あのクソ野郎共がぁぁあ!! 絶対死んだ方がマシな拷問にかけてやるわぁぁあああ!!」

「「「なんだと!」」」


 偵察兵の報告は内容の察せる段階に入ると狂ったラジオのように繰り返し、終いには発狂しだした。

 しかしそれに対しての返答は怒りの雄叫びだった。誰も宥めようとか思ってない。むしろそんな光景を見て我を忘れずに帰って来たことに賞賛を送りたいくらいだ。

 俺らは更に走るスピードを上げて目的地へと向かう。ペース配分? 知るかそんなもん!







 一方その頃雄たけびを上げる冒険者たちの最後尾にいるものは。


「はぁ……はぁ……ちょ、あいつ速過ぎ……ほんと化け物ね……でも、そんなあいつに着いていってるこいつらも何者よ……しかも叫ぶ元気まであるときた。なんでこんな実力者が幼女愛好家団体(ロリコン)とかケモナー教に入ってるのよ……ホント、馬鹿ばっかね……」


 グチグチとそう零すエルフがいたそうな。





 青々とした緑の生い茂るガイル山。標高とかはよくわかんねぇけど、そこそこ高い山だ。道とかはなく、大人数では移動出来なさそうな地形は少数の盗賊にとってはこれ以上ない自然の要塞となるだろう。

 そんなガイル山の麓に到着した俺たちは見事な連携を見せていた。


「第三番隊は右翼に! 四番隊は左翼! 二番隊は回り込め! 五番隊は遊撃だ! 誰一人逃がすな! 一番隊は俺とともにゴミの掃除だ!」

「「「おう!」」」


 俺の指示に従い適当な十人ずつの隊に分かれて行動する冒険者、否同志たち。幼女愛好家団体《ロリコンの集い》もケモナー教も自然と周りのやつと入り乱れての隊を作る。すげぇ、普通は同じ仲間とかと作るものなのにな。

 そしてそれぞれの部隊は深い木々の闇の中へと消えていく。流石はトップランカーたちのスペシャル部隊だ。物音一つ立てずに消えた。


「さあ、隊長! 我らも行きましょう!」

「おう! いいかお前ら、一つ注意点だが、誰一人殺すなよ? 殺したら……」

「「「苦しみが少なくなるから」」」

「……よくわかってるじゃねぇか」


 声を揃えて答えを返す同志たちに俺は満足げに頷く。

 そして俺は山へと向き直り、志を共にする仲間と共に殲滅へ行こうと深い木々の闇へと足を踏み出……


「ちょっとまてぇ!」

「うげ!」


 ……そうとしたら、スパコーン! と頭をはたかれた。

 その高い声に攻撃の仕方。頭を殴る角度に強さ。そしてこの音。

 俺はすぐさまそいつが誰か予想がついた。


「……ララ」

「あんたねぇ……少しは落ち着いたらどうなの?」


 ララは腰に手をあて、呆れたような顔をして俺を見下ろす。

 落ち着けってなんだよ。俺はいたって冷静沈着、質実剛健だぞ。ん? 違うかな?

 ちょっとイラっとしながらララの目を見ると……何が言いたかったのか分かった。全てはララの目が物語っていた。


「そうか……そうだったのか。すまんララ――」

「……ふぅ、分かってくれたなら――」

「――お前がショタコンだなんて気付かなくて……」

「――って違うわよ!」


 ララに乗り突っ込みされた。あれ? 違うのか?

 俺が首をかしげていると後ろから、ゴホン! とわざとらしい咳払いが聞こえた。早くしろと催促しているんだな。

 俺は腕を組み、仁王立ちして顎をクッと突き出す。

 そしてララを納得させるための一言を放った!


「ちゃんと夕方までには帰るから!」

「おい! 私はお母さんか! ってコラ~!」

「おい、急げ! 捕まったら家で勉強させられるぞ!」

「「「オオォォォォォォォォオオオオ!!!」」」

「お前らはガキか!」


 背後のお母さん(笑)の声を無視しながら俺は盗賊のアジトまで突っ走って行った。










 一方その頃盗賊たちは。


「親分! なんかすっげぇ叫び声とか聞こえるんですが……」

「ん? 騎士団か、もしくは冒険者でも来たか? にしても叫ぶとかアホか。今から攻めますよって宣言してるようなもんじゃねぇか。おい、全員戦闘体勢。待ち伏せして全員殺せ!」

「………………」

「ん? どうした。俺が命令出したんだからさっさと返事して行けよ」

「いや…………親分、話し長いんで途中から聞いてなかったっす」

「はぁ?! 今のたった二行くらいだろ! そんくらい聞いとけや! もう一度言うぞ!」

「うっす!」

「全員、戦闘、体勢。待ち伏せて、殺せ!」

「うっす! 了解っす! 俺、ちゃんと覚えたっす!」

「なら早く行って来い!」

「うっす! おい! 親分からの命令だ! 全員戦闘体勢! 後は………………頑張れ!」

「もう良い! 俺が行く!」


 こんなことがあったそうな。






----------


「ぐはっ!」

「おい! やられたぞ! 誰か治療を……ぐはっ!」

「おいおい、こいつらは化け物か……ぐふっ!」


 次々に倒れていく仲間を眺めることしか出来ない俺。

 俺は歯噛みしながら仲間へと指示を飛ばす。


「正面から挑むな! 周囲のものを全て使え! 地形を味方にするんだ!」

「がはっ!」

「ギース!」


 しかし俺の指示も虚しく仲間は次々と討ち取られていく。

 一人、また一人と減っていき…………とうとう俺一人となった。


「へっへっへ、お前はもう終わりだぜ? 俺らに敵うと思ったのが運の月だったなぁ」

「クッ! 舐めるなよ! 小僧がぁ!」


 小僧の舐めた口に激高した俺は手に持った剣で斬りかかる。


「オラァ!」

「ふっ、甘すぎるな。チョコに練乳かけて母乳をかけるほど甘い」

「……母乳ってまずいのよ?」

「……死ねぇ!」


 なにやら女に言い負かされた雰囲気の小僧が俺に斬りかかってくる。

 速いっ!

 俺が感じたのはそれだけだった。

 次の瞬間俺の意識はブラックアウトした。


--------------



 さてさて、わたくしケント君ですが、今ちょうどゴミの頭っぽいのを討ち取ったところですねぇ~。正確には襲ってきた部隊の頭、だけど。

 あ、今までのあれは『敵の気持ちになって考えてみよう』を実践していただけ。ちなみにその中に出てきた小僧は俺。大分嫌なやつだな…………気をつけよう。

 っと、俺が『敵の気持ちになってみよう』ごっこをしていたら俺の部隊の副隊長っぽいやつがきた。


「隊長! 盗賊計二十三名拘束完了しました!」

「うむ、ご苦労。すぐに次へ行くぞ!」

「「「サーイエッサー!」」」

「ホント、こいつらなんなのよ……」


 やたらと返事などがしっかりとした部隊――もはや軍隊――を連れて俺は更に奥へと進む。

 いやぁ、ここまでかなりの妨害にあったね。案外盗賊も多いもんでこれで百名は超えたんじゃないか? こんな人数どうやって食わせてきたんだろうか。もしかしたら頭はなかなかの食わせ物かも知れんな。

 そうそう、罠とかも多くてビビッたな。まあ普通に本拠地に罠を張るのは当然だが。

 定番の落とし穴はもちろんのこと、草むらに隠れた足を引っ掛けさせるやつや、それに連動して矢が飛んでくるもの。他にもいろんなものがあった。

 厄介だったのは獣耳幼女が餌としておかれていたときだな。我を忘れて思わず飛び出したよ、俺が。

 当然というか、その手前には落とし穴があって、俺は真っ逆さまに落ちて死ぬ…………と思いきや案外簡単に出られた。深さとかたった三m程度だったし。そんなもの今の俺のチート能力の前じゃ階段と大差ないわ(ドヤァ!)。

 てか仲間のスペックの高さに俺脱帽。何? 数百mも離れてるのに感知できる感知能力って。何? 毒受けても平気な顔して。何? ロリの素晴らしさについて俺とまともに語り合えるやつって。


「はぁ…………」


 なんかずっと近くからため息が聞こえるけどきのせいだよね!

 そんなこんなで俺たちはすぐに盗賊の本拠地っぽいところについた。


「よし、ここが盗賊の本拠地だ。気を引き締めていけよ!」

「「「おう!」」」


 ちなみにここは盗賊の本拠地と思われる洞窟の目の前である。


「もし人質なんて捕られたら危ないからな! ここからは慎重に行くぞ!」

「「「おう!」」」


 もう一度確認するがここは盗賊の本拠地と思われる洞窟の目の前である。洞窟の大きさは高さ五m、幅十m、奥行き二十mくらいだ。中で捕まっている幼女たちもばっちり見える。


「さぁ! ゴミ掃除の開始だ!」

「「「オオォォォォオオオオ!!!!」」」

「あんたら馬鹿なの?! 盗賊目の前じゃん! 丸聞こえじゃん!」


 エルフであり俺のパートナーであるララの言葉にハッとする俺たち一同。あれ? これってもしかしなくても俺らって……………………アホなんじゃね?

 そんな予想ほど良く当たるというわけで……


「ガハハハ! てめぇらアホだな! まさかここまで来るとは思ってなかったがこんな状況なら好都合だ! しかも人質とかいう案までくれた! ……ぶっちゃけここに来たらどうしようとか思ってたなんて言えない……」

「「「おい!」」」


 いろいろと残念な盗賊の頭に全員で突っ込み(これには流石の俺の突っ込んだ)しばし変な空気が流れる。

 微妙な沈黙を破ったのは盗賊の頭だった。


「全員動くな! 動いたらこいつを殺すぞ!」

「キャン!」

「「「なっ……!」」」


 そう言って筋骨隆々、無精髭、臭そうな服の最悪極まりない盗賊の頭の腕に抱えられたのは犬耳に犬尻尾を持つ犬人族の子供。しかも幼女だ。

 俺らはこの蛮行に固まらずを得なかった。

 首に刃物を当てられた犬耳幼女は尻尾をペタンと股に挟み、涙目で必死に泣き叫ぶのを堪えている。

 まずい、どうすれば……

 誰もが動けない膠着状態が続いた。そしてまたも沈黙を破ったのは盗賊の頭だった。


「おい! お前らちょっとあいつら殺して来い」


 なんと動けない俺らをあいつは己の部下で仕留めさせようというのだ。

 俺らは動こうにも盗賊の頭がチラチラと刃物を動かすので動けなかった。


「へい、親分。ですが…………」

「あぁ?! なんだ俺に文句でもあんのか?!」

「いや……だって動くなって言ったの親分じゃないですか。動いたらそいつ殺すんでしょ? 売れなくなったら困るじゃないですか」

「あ、そうか……って馬鹿かお前らは! 俺が動くなって言ったのはあいつらに対してだ! お前らは動いていいんだよ!」

「へ、へい! 親分! すぐに行ってきます!」


 クソ、なんかアホって言ってたやつがアホな会話していたけど今この状況を変えられないことに変わりはない……どうすれば……!

 そんなことをしているうちにも敵と俺との距離は近づいてくる。

 後五m……四m……三m……

 後ろでギリッと歯を噛み締める音までしたが俺は無視する。下手に動いたら犬耳幼女が危ない。

 俺が最後まで必死に頭を働かせていると…………ある一つのことを思い出した。

 それとは――――


「短距離転移!」


 そう叫ぶと同時に俺の姿はその場から掻き消える。

 と、同時に俺の姿は盗賊の頭の真後ろに現れた!

 野性のケントの先制攻撃!


「ぐはっ!」


 俺の手刀を首に受け盗賊の頭はもだえながら倒れ伏す。もちろん犬耳幼女は俺の腕の中さ(キラッ)。

 気絶した盗賊の頭を見ながら俺は先ほど思い出したことを反芻する。


 それとは――――俺チートだったわ。


 つまり何が言いたいかって言うと、大抵俺がやりたいと思えばやれちゃうってこと。

 だから俺はなんとな~く盗賊の頭の後ろに転移したいな~って考えたら転移出来ちゃって、手刀で気絶させたいな~って考えて手刀したら気絶して、犬耳幼女を抱きしめてhshsしたいな~って考えたら高速で奪うことに成功してhshs出来た。

 まあ、なんていうか…………チートだね(テヘペロ)。

 唖然とする一同。とりあえず俺は残っている盗賊を全員気絶させておく。方法? チートだよ! この一言で全て解決。


「あ、あんたねぇ…………」

「ウィッス! 任務完了! なんか最後はあっけなかったね!」

「「「お前が言うな!」」」


 酷い。今まで俺を隊長と言ってよいしょしてくれてたみんなまで突っ込んできた。泣くよ? 俺泣いて暴れて世界の半分くらい滅茶苦茶にするよ? …………それしたら多分世界の敵みたいなのに認定されて世界中の生物に狙われ挙句の果てには幼女に、死ね、なんて暴言を吐かれるかもしれない。いや、それはそれでいいかもしれないゲフンゲフン。


「……っ!」


 っと、変なことを考えていたからだろうか。俺は突然抱きつかれてよろよろと一、二歩下がった。

 視界には艶やかな金髪が半分を占めている。

 身長の高い彼女は俺の首に顔を埋めるようにすがり付いてきた。


「もう……本当に心配したんだからっ……!」

「あ~、え~っと…………なんで?」

「「「知るか」」」


 俺の呟きに同志たちが声を揃えて応える。お前らいつの間にそんな仲良くなったんだ? 俺も混ぜてくれよ……

 彼らの呆れたような視線を受けながら(嫉妬や羨望の視線はない。だって同志たちだから)俺は黙ってそれを受け入れる。

 と、


「むぎゅ~、くるしーの……」

「犬耳幼女が苦しがってる! 今すぐ離れろ!」

「キャッ!」


 俺とララの間に挟まっていた犬耳幼女が苦しそうな声を発し、俺は慌ててララを突き飛ばすように離した。危ない危ない、ララの衝撃ですっかり忘れていた。

 同志たちからは、何苦しめてんだボケェ、とでもいいたげな雰囲気と共に濃密な殺気が放たれる。やばい……殺される……

 と思っていると犬耳幼女はその垂れた耳を両手で掻いて恥ずかしげに俯くとこう呟いた。


「べ、別にくるしくないの。あたたかかったの……」

「今すぐ抱きしめてあげるヨボゲラ!」


 可愛さ天元突破な犬耳幼女の懇願に応えてあげようと抱きつこうとしたら突然の横からの衝撃。

 前回よりもかなり痛いその攻撃を繰り出したのは…………殺気を身に纏ったララだった。

 よほどお怒りなのかオーラが出て髪の毛があらぶっている。般若が……般若が見えるぞ!

 ララは静かに、しかし明確な怒りをもって声を発する。答えを間違えたら死ぬパターンだ、これ。


「ねぇ、なんで私を突き飛ばしたの?」

「ぇ、ぁ、そのぅ、この子が苦しそうに……」

「なに? 責任をその子に押し付ける気?」

「ぃ、ぃぇ、そんなつもりは……」


 やべぇ、やべぇよ……ララ怖いよ……母ちゃんデベソっていったときの母ちゃんよりこえぇよ……

 ビクビクとまるで子供みたいに怯えていると犬耳幼女が俺の足にヒシッと抱きついてきた。


「おこっちゃ、メッ! おにーさん、たすけてくれた!」

「………………」


 やばい、俺、嬉しすぎて、昇天しそう。

 涙目で、しかしキッとララを睨む犬耳幼女はとても頼もしく、愛らしく感じた。

 ララはそれに毒気を抜かれたのか、フッと怒りを納める。た、助かったのか?


「今回はその子に免じて許してあげるわ。でも、罰を与えますから」

「え?! 罰ってなによ!」

「そ、それは…………また今度よ!」


 何故か顔を赤くして背けるララ。何を考えたんだお前は……


 そんな感じで俺たちの依頼は終わったとさ。めでたしめでたし。















 ケントたちが帰った後のこと。


「なあ、俺らおいてかれたけど、いいのか?」

「いいんじゃないっすか、親分。それにわざわざ自首しに行かなくてもいいじゃないっすか」


 置いていかれた盗賊たちは目を覚ますなりこの状況に唖然とした。

 拘束も解かれて身体もどこも不自由なところはない。ぶっちゃけ逃げようと思えば逃げれる。

 しかしそんな彼らの背後から声がかかる。


「ダメに決まってるじゃない。んふっ、あなたたちはここで罰を受けてもらうのよ」

「な、なんだお前は!?」


 語尾にハートマークでもつきそうな甘ったるい声で話しかける人物。

 盗賊たちは突然の言葉に動揺を隠せない。


「私? 私はね、心は乙女な男の娘。よろしくね!」

「う、嘘だ! 俺よりも屈強なガタイしてるじゃねぇか!」

「あ?」

「ヒッ!」


 盗賊の頭が行ったとおり彼女……否彼は見事な肉体を持っていた。ボ〇サップも真っ青だ。

 彼は威圧から一転、すぐに笑顔を取り戻すと言った。


「まあいいわ。あなたたちにはここで…………掘られてもらうわ」

「「「はっ?」」」


 またも突然の告白。盗賊たちの思考は完全にショートした。


「私ね、乙女だけど攻める方が好きなのよ。ということで、ね?」

「あ、あ、あ…………アァーーーーー!」


 しばらくガイル山には野太い嬌声が響き渡ったという…………










 投稿する今になって気づいたのですが、ケモナーって耳と尻尾だけの獣人じゃなくて犬猫がそのままでかくなって二足歩行する獣人を愛する人だった希ガス

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