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最終話

練習終わり

「しろま。何か問題でも。」


俺が妻の旧姓を見て、不審な顔をしていたんだろう。となりの受付をしている、もろにゲームきゃらである金髪碧眼の”あすか”がこちらを覗きこむように、尋ねてきた。もちろん、現実の元の世界では男性で、俺より年上の48歳、おまけに”はげ”である。


「いえ、わたしが知っているピアノの先生の名前と一緒だったので・・・」


おれは慌ててごまかした。俺たちが元の世界とこちらの世界を行き来していることは、死んでこちらに転生してきた者たちへは、絶対に秘密にしなければならない事項である。理由は考えればわかるだろう。


「そう。だったら、いい。」


あすかは、そう言うと、再び前を向いて座り直した。耳だけこちらに注意を払っている。


「あなた、しろまちゃんていうんだ。」


妻が少し驚いた様に尋ねてきた。


「そうですけが・・・。」


なんだろう、妻のテンションが上がっている。


「しろまちゃんて、どこかで見た顔だと思ったんだけど、主人が昔やってたゲームのキャラに似ているのね。おまけにキャラ名まで一緒なのよ。」


え、お前って、ほとんどゲームには見向きもしなかったのに、そんなところだけは覚えてるのか。


「主人の名前は、城間 彰っていうんだけど、じょうまって、しろまとも呼べるのね。で、しろまだったら、やっぱり女の子キャラだよねって、言い訳しながらキャラ作ってたんで、よく覚えているのよ。

そういえば、しろまちゃんて、主人にもなんとなく似ているわね。」


なんてこった。つまらないことだけはよく覚えているもんだ。でもチャンスである。妻が旧姓を書いた理由を聴きだしてやろう。


「あれ、でもあなたの名前は、西村さんてなっていますが、ご主人と苗字が違うんですか。」


「それはね・・・。しろまちゃんて、見た目15,6歳でギルド職員ってことは、小さい頃にこちらに来たんだよね。そうでなければ、その年で高レベルになれるわけないもんね。」


「はい。幼稚園にいってた記憶はあるんですけど、こちらに来た時の記憶が曖昧で、気がついたらこのギルドで生活していたんです。」


「そう。だったら、わからないかもだけど、結婚って良くも悪くも人生の墓場って感じなのよ。別に結婚したことを後悔しているわけではないけど、一度やったら十分というか、せっかく生まれ変わったのだから、今度は結婚を選ばなかった西村由紀江として生きたいなって思ってね。だから、恋はしても今度は絶対結婚はしないわ。」


ああ、なんという事だろう。こんなところで妻の本音を聞く事になろうとは。だが、その気持がわからないことは無い。俺だって妻が死んだ時は本当に悲しかった。だが時がすぎるにつれ、一人を気楽に感じる時がないとは言えない。


「よくわからないけど、そうなんですね。頑張ってください。私も応援しますから。」


よし、これからは、妻の新しい恋をことごとく邪魔してやろう。


end


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