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AV専門店『希望』  作者: 満腹太
第一章 運命を追え
2/18

第一話 AV専門店『希望』新規オープン

2088年、第三次世界大戦勃発──


始まりは日本の抱える大陸からの移民問題だった。


日本の犯罪率の8割以上が外国人ということから日本は入国に関して、今まで以上に厳しく管理した。


過去に一定基準以上の犯罪経歴が有る者は入国を拒否し、国内で犯罪を犯した者は私財没収し強制送還した。


それに反対したのが、『外国人の人権を守る会』と称する者達だった。


彼らの主張は外国人に対する日本政府の対応がおかしいとデモ行進を行った。


デモ行進の参加者の殆どが外国籍の人だった。


そして、そのデモ行進を遮るように1人の男が立っていた。


彼は、妻と娘を外国籍の男に強姦し殺害された被害者だった。


彼はデモの参加者に犯罪者に対して日本は厳しい姿勢を取ったに過ぎないと説明したが…


参加者の一部が暴走し彼を殴り殺してしまった。


この件で逮捕されたのは彼の妻と娘を殺した犯人と同国の者達だった。


日本政府はこの事に対して大使館を通じて抗議するが、相手政府は聞く耳を持たなかった上に自国内において日本政府から根拠のない抗議を受けたと批判した。


この事を知った相手の国民は世界各国にある日本大使館に嫌がらせを行った。


この行為がエスカレートし大使館に出入りしている現地住民にまで被害が及んだ。


そして、アメリカの日本の大使を狙った銃弾は偶然にもアメリカ外務大臣に命中し、彼の命を奪った。


外務大臣の命を奪ったのは、かの国の現役の軍人だった。


そして激怒したアメリカは宣戦布告と、共に大陸間弾道弾を発射。


その弾道の1発は首都にある国会に命中した。


国会で会戦か否かの討論中の議員や官僚はそこで命を落とした。


数時間後、かの国の政府が倒れたと知った隣国は宣戦布告と共に領土侵攻作戦を開始。


かの国の国民は日本政府の陰謀と決め付け各国の大使館を襲撃。


しかし、大使一行は地下シェルターに避難していた。


大使館で働く現地スタッフを嬲り殺しにした彼らは地元警察や軍隊と交戦。


瞬く間に捕えられた。


ただ、彼らが行った大使館襲撃と共に世界各国にある日本政府が出資した大型食糧プラントも襲撃された。


全ての施設は破壊され世界的な食糧不足に陥った。


世界は少ない食料を求めて各国が争い始めた。




それから時は過ぎ



2306年


戦争終結から200年以上過ぎ、世界は格段に進歩していた。


宇宙にコロニーを作りそこで生活するまで発展した。


食糧プラントも宇宙空間にあり、その宙域に無断で入ると撃墜されるまで厳しく管理された。


医療技術も進歩し髪の毛1本から肉体のクローニング技術の確立。


ナノマシンによる環境適正も強化。金属骨格による部分サイボーグ化。人間と見違えるようなアンドロイドも現れた。


時代は宇宙探索による大航海時代に移行していた。



あるコロニ―にいる夫婦に男の子が生まれた。


この子は遺伝子の病気から20歳まで生きられないと医者から宣告された。


すくすくと育つ男の子は本当に病気かと疑うくらいに元気に育った。


医者から言われた20歳を元気で迎えた彼に病気の兆候は表れなかった。


しかし、彼が25歳の時に突然その時がやってきた。


自宅で倒れた彼は直ぐに病院に運ばれ余命1年を宣告された。


入院後、徐々に痩せて行く彼は死にたくないと願った。


そんなある日、病室に来客があった。


その女性は40代後半のどこにでもいる女性に見えた。


その女性はある企業の人事担当で余命1年の体から全身サイボーグ化しないかと言われた。


その体で人類未踏の地に冒険に行かないかと誘われた。


サイボーグ化は莫大な費用がかかる。


両親は息子も大事だが費用について懸念があると伝えた。


しかし女性は支払は一切なく、ただテレビ取材の同行を許してくれればそれでいいと伝えた。


難病の少年を1企業が救い外宇宙の探索する。


このドキュメントで視聴率を稼ぎそれをサイボーグ化の費用に充てるので費用はかからず、退院後の就職後も約束すると。


この話に両親、息子とも承諾した。


翌週には彼のサイボーグ化手術を行った。


体から脳と脊髄の一部を取り出し主幹ユニットに入れ事前に用意した特殊義体に組み込んだ。


義体の制御、いわゆるリハビリに2か月費やし一般生活できるようにまで回復した。


その後2週間で機械工学と宇宙船のマニュアルを補助脳にインストールした。


宇宙船は企業が準備したサイボーグ専用の物で思考操作が可能の物に改造するのに2年の年月が必要だった。


所属する企業の研究所では完全サイボーグの実験体として宇宙船完成までの2年間で改造を施した。


それこそ将来の軍事事業に参入するために彼の体を改造した。


軽チタン製の骨格から高価なアダマンチウム複合素材を使い軽量かつ柔軟な骨格に変更した。


胸部ジェネレーターを高性能な超電導ジェネレーターに変え戦闘用に変更した。


人口皮膚をナノマシンにを組み込んだ最新式に交換し自己治癒力を高めた。


これまでの改造で人を超える力を得たが、研究者たちの悪ノリで体の各所にギミックを付けてしまった。


両手の平にから圧縮したエネルギーを刃にして放出するエネルギーソード


両手首は脱着式で外した面からエネルギー砲が撃てるようにした。


両目からエネルギービームが撃てるように改造中に企業側にバレ、研究及び改造は一旦中止した為、右目からしかビームが撃てない


企業からお金という十分な謝罪を受け取った彼はその全額を両親に渡し宇宙に飛び立っていった。





宇宙空間を円柱状の物体が進んでいた。


高さ2メートル。直径は1メートルと電話ボックスより少し小さめな宇宙船だった。


宇宙船の中には男が1人椅子に座っていた。


彼の服からは幾つかのコードが伸び壁に刺さっていた。


そして、動き回る事が出来ないほど狭い船内には食糧も無かった。


ピ――――


無機質な機械音が船内に響くと彼は目を開け壁に掛けられていたゴーグル付きのヘルメットを装着した。


「はい、外宇宙探索船『希望』です。」


彼の視線の先にはどこかのオフィスと中年の男性が映し出されていた。


『定期連絡です。』


「異常ありません。」


『わかりました。』


2人とも余分な事は言わずに通信を切った。


彼はヘルメットを外すと壁に掛け再び目を瞑った。


彼は眠っていたわけではなく、ネットに接続し仮想空間で遊んでいた。


VRMMOも一般的に普及し彼も時間があれば仲間たちと冒険していた。


再び仮想空間で中世ファンタジーの世界で冒険をしている彼は突然回線が切れ二度と仲間の前に現れなかった。



ビー!ビー!


船内に大音量の警告音が鳴った。


彼はいつものデブリだと思い確認もせずに警報を切り仮想空間に戻った。


デブリは船の自動回避プログラムで見ないでも回避できるのは今までの航海で知っていた。


その数分後、突然回線が切断された。


「うわ!なんだ?!」


彼は壁のゴーグル付きのヘルメットを頭に装着すると宇宙船とリンクした。


(…船体に損傷個所はない。原因は?…ってブラックホール!!」


船体に各所にあるカメラから周囲を見ると自分の宇宙船はすでにコントロールを失いブラックホールに引き込まれていた。


「んな!逃げられないのか?!…う、うわあああああああああぁぁぁぁぁあ!!!」


彼の船はブラックホールに引きずり込まれ、二度と定期連絡に反応することも家族と話す機会も失われた。





「…ぃ…か?おい、大丈夫か?」


彼が目を覚ますと数人の男に囲まれていた。


「うーん、ここは?」


いつの間にか寝ていた彼は体を起こし周囲を見回した。


青い空、青い海、彼を囲むのは背中に特殊な染料で絵を描いた強面の男たちだった。


「ここは船の上?」


彼は自分が釣り船にいることは理解できたが、なぜいるのか理解できなかった。


「おう、大丈夫か?」


1人で釣りをしていた中年男性が首だけを回し彼を見た。


「えっと…」


彼は自分の置かれている状況が理解できなかった。


「おう、お前らお客人が困っているぞ。少し離れんか。」


50過ぎの男性が彼の周囲の男達に声をかけると彼らは無言で距離を取った。


「んで、お客人の名前は?」


「あ、はい。長谷川典宏<はせがわのりひろ>といいます。」


「そうか、俺は松戸耕平<まつどこうへい>。松戸組の組長だ。」


「松戸組?」


「聞きたい事もあるかもしれんが、とりあえずは服を着たらどうだ?立派なモノは分ったからいい加減しまいな。」


そこで彼は自分が全裸だと気が付いた。



服を借りた長谷川は松戸の隣で何故か釣りをしていた。


「あの、松戸さん。どうして自分がここにいるんでしょうか?」


「あん?そりゃ、海に浮かんでたから助けたまでだ。他に何か考えられるか?」


「いえ、助けていただいてありがとうございます。」


長谷川は松戸に頭を下げた。


「なに、気にする…来た―――!!大物だぞーーーー!!」


松戸の持っている竿は大きく撓り右へ左へと動いていた。


2時間後、長谷川の見ている目の前で松戸が2メートルを超えるマグロを釣り上げた。


そして、松戸の満足な上場を見た彼の子分達は港に船を向かわせた。


(おかしい、松戸さん達を見ている限り電脳化もされてない。それに空の上に町がない。ここはコロニーじゃないのか?それなら地球か?地球なら仮想空間に接続できるはず…って繋がらない?!)


長谷川は港に向かうまでの数時間で今までの状況を整理した。



ブラックホールin俺


  ↓ 


松戸組一行に海で漂っていた俺を救助される


  ↓ 


彼らは電脳化されていない。船の操縦も古いタイプ


  ↓

 

周囲は地球のような環境


  ↓

 

仮想空間に接続不可


  ↓


可能性は2つ


 1 地球によく似た別の星


 2 ブラックホールの影響で時間を跳んで過去に来た



(うん、1が妥当だな。2だったら帰る手段ないな。)


長谷川が考え込んでいる時に松戸が声をかけた


「長谷川。これからどうするんだ?家はどこだ?帰りの電車賃ぐらいは貸してやるぞ?」


松戸は上機嫌に魚拓を取りながら長谷川に訪ねた。


「えっと、行く当ては無いんですが…」


「訳ありか…、それならウチで暫く働かないか?住む家も格安で貸すぞ?」


「本当ですか?ぜひお願いします。」


こうして長谷川は松戸組の世話になる事になった。



それから4年。


松戸組から1件のビデオ屋を開業した。


「やっと、開店できた。思えばここまで長い道のりだった…。毎食カップラーメンの日々がこれで終わる!」


男は涙を浮かべながら店の入口にある表札を『準備中』から『開店中』に変えた。


都内のマンションの1室にあるAVアダルトビデオ専門店。


3LDKの普通の家族が住める部屋の内装を変え敷地の半分を店舗に、もう半分を休憩室兼事務所とネット通販用に在庫を置く倉庫と発想準備の為の部屋にした。


そして、取り扱うものはAVアニマルビデオ専門店としてネット販売を主にした。


カランカランとベルが鳴りドアが開いた。


「いらっしゃいませー」


長谷川が棒読みに近い声であいさつをした。


入ってきたのは中年の男だった。


男は商品のDVDを物色しながら1枚のパッケージをレジに持ってきた。


そのDVDは真っ白な紙で覆われていた。


「依頼をお願いします。」


長谷川は男の顔を見ると唇の端を釣り上げて言った。


「ようこそ、なんでも屋『希望』に。暗殺からチケット取りまで何でもしますよ。それでは此方へ。」


長谷川が案内したのは事務室だった。


「ここは防音で監視カメラも一切ありません。それでご希望は?」


男は1枚の写真を取り出した。


「この男を殺してほしい!妻も娘もこの男に殺された!警察は証拠がないと言って取り合ってくれない!頼む、こいつを殺してほしい!!」


「わかりました。コースは2つあります。1撃で何も知らずに殺すか、苦しんで殺すかになります。」


「苦しませて殺してくれ!妻と娘の恨みを晴らしてほしい!!」


「わかりました。報酬はこれくらいになります。」


長谷川が電卓を叩くと金額が表示された。


「…わかりました。必ず払います。」


「ありがとうございます。次の水曜日、明後日ですね。その日に行いますので。報酬は月曜日まででお願いします。」


「まさか、あなたが『ウェンズディ・キラー』?」


「巷ではそう言ってますがね。このお店水曜が定休日なんですよ。だから、なんでも屋の仕事は水曜日にしか行っていないんですよ。」



そして、木曜日の早朝に1人の男の死体が発見された。


男は生きたまま胸を貫かれ心臓を握りつぶされ周囲に血を撒き散らしながら苦しみながら死んでいった。



「今回も酷いな。」


水曜殺人と名付けられワイドショーなどで取り上げられた一連の殺人事件の担当警部は被害者の上に被せてあるシートをめくって被害者を見た。


「そうですね、今回は心臓を潰されています。これでこの2年で33件になります。…犯人はどんな奴なんでしょうか?」


若い警察官は目の前にいる担当警部に声をかけた。


「それを突き止め逮捕するのが我々の仕事だ。こんなに人を殺して一体何が目的なんだ?」


その時、軽侮のポケットから携帯の呼び出し音が鳴った。


「ん、嫁からか。」


警部は現場から少し離れて電話に出た。


「…ああ、…そうだな。…いや、今日はもう帰る。…ああ、俺もだ。」


警部は電話を切りポケットにしまうと再び現場に戻ろうとした。


「佐藤警部、さっさと帰りなさい。新婚だから早く帰らないとダメだろう。家庭も守れないものが治安を守れるはずがない!」


「本部長!」


現場に戻ろうとした佐藤警部を止めたのは特別捜査本部の本部長だった。


「ですが!」


「いいから帰りなさい。疲れていてはイザという時に力がでないんですよ。」


本部長は佐藤警部の肩を叩きながら帰宅を促した。


「そうですか、分りました。これより直帰します。」


佐藤警部は本部長に恵令をすると本部長も返礼で返した。


佐藤は4歳になる女の子を持つ女性と結婚した。


佐藤は帰宅する為の車の中で娘に何か買って帰ろうかと考えた。


信号待ちの最中、ふと見上げたマンションに1枚の看板を見つけた。


『可愛い子猫のビデオあります』


佐藤は子猫もいいなと思いながら、その店に立ち寄った。


6階建てのマンション2階にあるアニマルビデオ専門店『希望』


駐車場に車を止めた佐藤は『希望』の扉を開けた。


「いらっしゃいませー」


レジで椅子に座ってパンダの写真集を見ている男は佐藤を見向きもせず言葉を言った。


「あの、子猫のDVDってありますか?」


レジの男は写真集を閉じて立ち上がった。


「ありますよ。あの右側の棚ですね。」


「ありがとう。」


「いえいえ。」


佐藤は数十種類ある中から三毛の子猫のDVDをレジの持って行った。


「ありがとうございます。会員証はありますか?」


「いえ、ないです。」


「今入会なさると子熊のDVDをプレゼントしますけどどうしますか?」


「あ、入ろうかな?」


「ありがとうございます。こちらの申込書に記入をお願いします。」


レジの男が取りだしたのは1枚の紙だった。


「あ、名前だけでいいですよ。これ会員証と子熊のDVDです。ありがとうございましたー」


佐藤は子猫と子熊のDVDを持ち家に帰った。


妻と娘からDVDの内容は好評で久しぶりに心安らげる時間を過ごした。


前半の世界大戦の件は私の予知です。ちなみに2014年に関東に水害を予知しています。当たったら褒めて褒めて。

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