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ドラゴン・レイヤー  作者: 夕咲 紅
二章 封印されし獣
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エルフからの依頼

 深い森の中、生い茂る木々や草木がまるで避ける様に出来た直径3メートル程の穴がある。穴と言っても3メートル程の深さで、冒険者ならば飛び降りても怪我する事なく地面に辿り着ける。

 穴へと入れば、そこには上部から差し込んで来る日の光以外に光源はなく、その場所が通路になっている事は判別出来るがその奥までは見通す事が出来ない。

 穴から降りたその場所は言うなれば通路の入り口で、そこから北へと向かう道が一本あるだけだ。その先にしばらく進むと、待っているのは開けた空間。そして、厳かな雰囲気のある石造りの神殿だ。

「まさか、封印が解かれたと言うのか……?」

 神殿は外観から受ける印象とは違い簡単な造りで、迷う事なくほぼ一本道で最深部まで辿り着く事が出来る。

 その最深部で、一人の男がそんな呟きを漏らした。

 男の両耳の先端は尖っており、人間の平均よりも十分に整った顔立ちをしている。人と似て非なる種族、エルフ。

 外見は男がエルフだと示し、事実その男がエルフであり更に言えば集落の長と言う立場でもある。

 エルフは人間よりも寿命が長く、それに応じた歳の重ね方をする。男はエルフとしてはまだ若いが、人間で言えば老人と言える年齢で既に70を超えている。それでも見た目は人間で言えば30から40歳くらいだろう。

 そんな彼が、一人で神殿に訪れたのには訳がある。

「ここで暴れた形跡はないが……どこへ消えたと言うのだ……」

 男は現実を受け入れ、頭を悩ませる。

 男のいる場所は神殿と言うのは名ばかりで、実際には魔獣を封印する為の施設である。遥か昔に現れ、エルフの集落を含めその近隣の森で暴れたとされる巨大な獣を、当時のエルフ達が必死の思いで封印を施し、その場所を監視する為に神殿を建てたと伝えられている。

「集落に現れた訳でもなく、ただ忽然と姿を消したか……俄かには信じられないが、どちらにせよこのまま放置する訳にもいくまい」

 男はそう言って踵を返し、自身の集落へと戻るべく神殿を後にした……



「と言う訳で、これから宜しく頼む」

 肩より少し先まで伸ばした金色の髪に、やや細く釣り上がった碧い瞳。先端の尖った両耳が特徴的なエルフの少女――エリザ=アークウッドに対し、俺――バナッシュ=ラウズコートは右手を差し出しながらそう言った。

 場所はガルニールにある冒険者ギルドの休憩所。エリザと約束した通り時間は正午を過ぎた頃合だ。

「こちらこそよろしくね」

 エリザは俺の手を取り、俺達は握手を交わす。

「よろしく」

 つい先日までパーティを組んでいたメリアの時とは違い、エリザに対しては割りと好意的な態度を見せ挨拶をしたのは真紅色の髪が特徴的な美しい容姿の少女――ルルーセリア=エルド=ガーネット。俺と契約を交わしている正真正銘のドラゴンだ。

「ええ、よろしく」

 にこやかに笑みを浮かべ、言葉だけ向けたルルーに対し同じく言葉だけで挨拶を返すエリザ。

 エルフと言えば排他的な思考をしていると言われているが、やはり個人差があるのだろうか。少なくとも、エリザは周囲に合わせる事の出来るタイプの様だ。

「さて。それじゃあ早速今後の話をしようと思う。エリザは何か要望はあるか?」

「特にないわ。私は貴方の手伝いをする為に仲間になったんですもの」

「そうか。それなら一つ、受けたい依頼があるんだ」

 エリザと合流する前に、俺とルルーはギルドへと足を運び今現在出されている依頼の一覧に目を通した。その中に、一つ気にかかる依頼があった。エリザの反対がなければ、その依頼を受ける事をルルーも了承している。

「貴方がその依頼を受けると言うのなら、私に異存はないわ」

「まあまあ、一応聞いてくれ。依頼主の名前はルートラス=アルウッド。ラジャスタの森にあるエルフの集落の族長だ。知ってるか?」

「ええ。面識はあるわ。私はこの地域の生まれじゃないから、親しい訳ではないけどね」

 なるほど。エリザはこの辺の生まれじゃなかったのか。

「確か、この街とラジャスタの集落とはそれなりに親交があったはずよね? なら、依頼があってもおかしくはないと思うけど……」

「別に、エルフがギルドに依頼を出した事を不思議に思ってる訳じゃない。俺が気になってるのは、わざわざ族長自らが依頼を出しているって点だ。依頼の内容は森に潜伏している魔物の退治。詳細は載っていない。何か秘密があると思わないか?」

「族長自らがって言う点については、別段おかしくはないと思うけど……わざわざギルドに退治依頼を出す様な魔物が出たのに、その魔物についての情報がないのは確かに気にかかるわね」

「そうだろう。危険性が高い可能性もあるが、放置してエルフへの心象が悪くなるのも問題だしな。エルフからの依頼を受けようって奴はあまりいないだろうし、エルフであるエリザが仲間にいれば親交も取り易いだろうと思ってな。どうだ?」

「さっきも言った通り、貴方が受けると決めたのなら私に異存はないわ」

「そうか……」

 出来れば、もう少しエリザの本心を探っておきたいんだが……

 これ以上は無理そうだな。

「それなら、この依頼を受ける事にする。ルルーも良いんだよな?」

「うん」

 ルルーが頷くのを確認し、俺は依頼を正式に受ける為にギルドの受付へと向かった……

 お待たせ致しました。ドラゴン・レイヤー二章開始です。しばらくは週一回くらいのペースで更新しようと思っています。一章の時と違い不定期気味ですが宜しくお願いします。

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