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ドラゴン・レイヤー  作者: 夕咲 紅
一章 暗き冒涜の使者
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幕後

 事件解決から一週間が経った。事後処理も一段落し、俺達はギルドから今回の報酬を貰った。その後改めて俺達に礼が言いたいと言うフレンツ達の誘いを受け、ギルドの近くにある酒場へと足を運んだ。まだ昼を回った所だが、奢りで飲めるなら時間なんて関係ない。

「いや、本当に助かったよ」

 フレンツの軽い演説の後に杯を交わし、昼食を兼ねた飲み会が開かれて直ぐにフレンツがそんな言葉を発した。

「結局ほとんど役に立たなかった挙句、生きた不死者(アンデッド)にされる所を助けられたんだからね。本当、いくら感謝しても足りないくらいだよ」

 と続けたのはエリックだ。フレンツ達は一様に頷く。因みに、この場にはクロースもいる。本調子と言う訳ではないが外傷は大きくなく、無理矢理に浸透させられた瘴気も時間をかける事で魔法による浄化が効いた。

「結局、あいつは何者だったんだろうな?」

 フレンツの呟いたその疑問こそが、今回の事件で明らかにならなかった点だ。名前も分からないあの魔法使いの男が、一人で外道に落ちただけならばまだ良い。しかし、あれだけ大掛かりな魔方陣や上質な魔法具を持っていた事を考えれば、一から十まで単独で行なったとは思えない。

「でもまあ、偽りの砂漠にある魔方陣は潰したし、踏破された事でダンジョンの管理もギルドがきちんと行なってくれるんだ。当面、少なくともあの場所で今回みたいな事件は起きないだろう」

 俺がそう言うと、全員が同意の反応を見せた。

 あの男に仲間や協力者がいたとしても、今回程大掛かりな事はしばらく出来ないだろう。問題は、俺達に対する復讐があるかどうかだ。

「なーに難しい顔してるんだよっ。とりあえず今は飯と酒を楽しもうぜ!」

 俺の肩に腕を回しながら、既に出来上がっているクロースがそんな風に言った。

「それもそうだな」

 俺は苦笑しながら頷き、周囲の歓談に混ざる事にした……



 フレンツ達による謝礼会が終わったのは、完全に日が暮れた頃合いだった。

 完全に酔い潰れたクロースと、途中クロースの挑発に乗って同じく酔い潰れたフレンツを、おそらくはセーブしていたであるエリックとカートンが抱えて宿へと連れて帰った。

「エルフってのは皆酒に強いのか?」

 俺の記憶が確かなら、このエルフの少女――確かエリザだったか――も、クロースやフレンツと同じくらいか、下手したらもっと大量に酒を飲んでいたはずだ。にも関わらず、軽く顔が赤みがかっている程度で呂律もしっかりしている。

「そうね。私の知り合いは皆強かったから、種族的に人間よりもアルコールに強いかもしれないわね」

「今までエルフってのは酒に興味なんて持たないと思ってたんだが、とんだ偏見だったみたいだな」

 そう言って俺が苦笑を浮かべると、エリザも小さく笑みを浮かべた。

 因みに、メリアも相当酒を飲んだらしくしっかりと潰れ、レイズが介抱しながら宿に連れて行った。ルルーは俺の背中で眠っている。

「それはそうと、改めてお礼を言うわ。ありがとう」

「さっきまでさんざん礼は言われたからもういいよ。いや、そもそもそこまで感謝される様な事じゃない。戦力を確保しておきたいって言う打算だってあったんだからな」

「でも、結局貴方達だけで敵を倒した訳だし、私達は助けられただけだもの。エリックも言ってたけど、いくら感謝しても足りないくらいだわ」

「まあ、俺としては気にするなとしか言い様がないな」

 エリザの言葉に俺は再び苦笑を浮かべる。本当に、こんな風に感謝して貰いたい訳じゃない。いつもの人助けにしてもそうだ。結局は、自分が納得する為にやっているに過ぎない。

「それで、お願いがあるんだけど……」

 どちらかと言えば強気な雰囲気のあるエリザだったが、どこか畏まった様に言葉尻を濁しそう言ってきた。

「何だ?」

「私を、仲間に入れて欲しいの」

 その言葉は、かなり予想外のものだった。そもそもエルフは多種族と積極的に関わろうとしない。冒険者なんてやってる以上は、エリザは封鎖的な思考はしていないのだろうが、自分から人間のパーティに参加したいと言ってくるとは思っていなかった。

「何でまた?」

()()に助けられたから。その恩返しがしたいの」

 恩返しねぇ……

「正直、別にそんなものは期待してない。それに、普段俺はソロで動いてるんだ。メリアとは今回一蓮托生の身だったに過ぎないし、レイズはメリアの知り合いって事で力を借りただけなんだよな。一抹の不安はあるものの、一応メリア達とのパーティも解散してるんだぜ? まあ、メリアとレイズはしばらく一緒に行動するみたいだけどな」

 つまり、恩返しがしたいなら俺と一緒じゃなくても良い訳だ。

「さっき私はこう言ったわ。()()に助けられたから、恩返しがしたい。と」

 それはつまり、敵を倒したのが俺だって知ってるって事か? あの時、全員気を失っていると思ってたんだがな……

「貴方がその子と契約を交わしているのも理解しているわ」

「なら、半端な力の持ち主じゃあ足手纏いにしかならないって分かってるよな?」

 食い下がってくるエリザに対し、俺はわざと冷たい言葉を向ける。

「ええ。その上での申し出よ。それに、エルフの力なら役に立つと思うわ」

 エルフの力、ね……

 確かに、エルフには神秘的な力があると言われている。その真偽は分からないが、エルフであるエリザ本人が言っているのだから、何かしらの能力は秘めているのだろう。

「……分かった。ただし、ルルーが了承したらな」

「それで構わないわ。ありがとう」

「それじゃあ、明日の正午にギルドで落ち合おう。その時までにはルルーの意志を確認しておく」

「ええ」

 そんな言葉を交わし終えた頃には、お互い泊まっている宿への分かれ道へと差し掛かった。

 夜の挨拶を交わし、俺達は別々の帰路へと着く。

 こうして、今度こそ本当に今回の事件は幕を下ろした。

 今回の報酬で資金にも余裕が出来たし、メリアへの借金も返した。しばらくは、気ままにお宝探しでもしてみるかな……

 ベッドの入る頃にはそんな風に考えながら、俺は安らかな眠りへとついた……

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