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ドラゴン・レイヤー  作者: 夕咲 紅
一章 暗き冒涜の使者
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バナッシュ VS クロース

 再び襲いかかってきたクロースの一撃を避けると同時に魔法剣をしまい、背中に鞘を構えたもう一本の魔法剣を抜く。

 アリエステス。今回の戦いの為に手に入れた魔法剣。一応試しに素振り等はしたが、実戦ではまだ使っていない。奴との戦いの前に慣らしておく必要もあるだろう。それに、クロースの持つ魔法斧を相手にするのなら、雷の魔法剣よりもアリエステスの方が渡り合えるだろう。

 クロースもターゲットを俺に見定めたらしく、俺を真っ直ぐと見据えてきた。変わらずに生気が感じられない瞳だが、それでもしっかりと俺の姿を映している。

 アリエステスを抜く為に少し距離を置いたからか、直ぐに襲いかかってくる気配はない。そう感じた瞬間、クロースがおもむろに斧を振り上げた。そしてそれを勢い良く振り下ろした刹那、俺は聞いていたクロースの魔法斧の能力を思い出した。

 俺は瞬時に眼前へと迫って来た目に見える密度の真空刃を避け、そのままクロースへの距離を詰めるべく駆ける。アリエステスを外側から振ると、左腕の篭手でそれを防ぎ、そのまま斧を振るってきた。俺の一撃で篭手にヒビが入ったのを視認しながら、クロースの斧を避ける。そのまま左手のナイフを振るうと、その一撃を受けてはいけないと理解したのかクロースは後ろに跳んだ。一瞬の間を置いて俺もその後を追うべく跳躍し、アリエステスを振るう。それを斧で防がれ、お互いにバランスを崩し体勢を立て直すべくお互いに距離を取る。

 今の状態に慣れつつあるのか、クロースの動きが次第に良くなってきている。これは、益々時間をかけられなくなったぞ……

「正気に戻ってくれるのが一番楽なんだがな」

 そんな呟きを漏らすが、簡単に奇跡みたいな事が起こる訳がない。体勢を立て直したクロースが、再び斧を振り上げる。間合い外からのその動作が真空刃を放つモーションだと判断し、振り下ろすと同時に斜め前方へと跳躍する。

 案の定真空刃は俺の横を通過して行き、クロースの懐に飛び込む直前にアリエステスを鞘にしまう。今必要なのは浄化のナイフだ。俺は腰に括り付けたもう一本のナイフを右手で抜くと同時にクロースへと振るう。その一撃は避けられたが、踏み込んだ右足を軸足にして今度は左手のナイフを振るう。

 今度は斧で防がれるが、まだ止めない。再び右のナイフを振るう。斧で防ぐのは間に合わないし、避けられるタイミングでもない。クロースはヒビ割れた篭手でそれを防いだが、重さのないその一撃でクロースの左篭手は完全に割れて地面へと落ちる。だが、落下するのを最後まで見届ける必要はない。俺は最短最速の一撃を繰り出すべく左手のナイフを突き出した。それを斧で防ごうとしたのか、クロースは右腕を動かしたがその判断は大きなミスだ。

 結果的にクロースの防御行動は間に合わず、俺の一撃がクロースの左腕に突き刺さった。と言っても深く刺した訳ではなく、刃先1センチ程が刺さった程度だろう。だが俺はそのままナイフを外側に振り抜き、その傷を広げる。浄化の効果を受け傷口から瘴気が漏れ出す。

 痛みは感じなくても、身体の構造そのものは誤魔化せない。腕を裂かれた傷と浄化の効果を受け、クロースは斧を落とした。

 チャンスだ!

 一瞬そんな考えが頭に浮かんだが、俺は思い留まった。クロースはまだ生きている。この隙を突けば殺す事は出来るだろうが、おそらくそのまま本当の不死者になるだけだ。なら、今現在の異常な状態を何とかする方が先決なのではないだろうか。しかし実際に戦ってみて、クロースを助けるのはかなり難しいと思える。なら、一度完全な不死者にしてしまえば、後は単に戦いながら浄化すれば済む話になる。だが……

 懸賞金の懸けられた罪人ならともかく、一介の冒険者であるクロースを殺すと言う行為を簡単には受け入れられなかった。

 ダメージを受けたショックで武器を落としたクロースだったが、完全に武器を持てなくなった訳ではない様だ。クロースは既に右手で斧を拾い、俺に向けて斧を振っていた。慌てて後方に跳んでそれを避ける。

 着地すると同時にナイフを両方しまい、俺は雷の魔法剣を抜いた。

「生きてるって事は、気も失うよな」

 それは、一縷の希望と言える内容だ。生きて脳を使って動いているのなら、気を失う事もあるだろうし、気を失えば動きを止めるはずだ。その為には、雷の魔法剣が役に立つ。

「死ぬなよ、クロース」

 俺はそう呟くと同時に、魔法剣に魔力を込め――

喰らい付く雷(サンダーバイト)!」

 再び俺へと接近してきていたクロースに向かって、蛇を模した雷が襲いかかった。

 雷蛇はクロースへと巻き付きその動きを阻害する。そして頭上へと上がった頭部分が大きく口を開き、クロースの頭から飲み込む様に落ちた。

 雷撃と高熱を受け、鎧に守られていない部分は火傷を負った様だ。当然強い電流を受け身体はショックを受け、更に痺れさせる事にも成功した。そして何よりも、俺の考えは正しかったらしくクロースは気を失いその動きを止めた。痙攣しているから死んではいないだろう。

 これで、しばらくは無力化出来たはずだ。

 一応持っている縄でクロースを縛り、俺はボス戦を繰り広げているであろう方へと視線を向けた。

 少なくとも今はまだ、どちらが優勢と言う事はない様だ。俺は一呼吸だけ置いて、参戦するべくルルー達の元へと向かった。

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