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ドラゴン・レイヤー  作者: 夕咲 紅
一章 暗き冒涜の使者
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新しい仲間

「おや、メリアじゃないか」

 ギルドから歩いて10分程の宿にやって来ると、丁度中から出て来た青年がメリアの名を呼んだ。

 こいつがメリアの言っていた役に立つ奴か?

「あたしの日頃の行ないが良い証拠ね」

 なんて言って俺にウィンクをするメリア。

「久し振りね、レイズ。元気だった?」

「まあね。そう言うメリアも元気そうで何よりだよ。それで……そっちの二人は友達?」

 なんて言う青年の目は優しげだ。第一印象は優男。口調も柔らかだし、本物かもしれないな。正直余り好きなタイプではない。が、まあそれを作っている訳じゃないのなら仕方ない。

「まあそんな所ね」

「バナッシュだ。こっちはルルー」

 俺達の事を紹介しようとするメリアを制し、俺は自分から名乗りルルーの事も紹介した。

「僕はレイズ=タンブルード。よろしく」

 簡単にしか名乗らなかった俺に対し、律儀にフルネームで挨拶を返してきた。やはり本物か……

「失礼した。俺はバナッシュ=ラウズコート。こいつはルルーセリア=エルド=ガーネットだ。よろしく」

 改めて自己紹介をし、俺とレイズは握手を交わす。

「それで、僕に何か用かい?」

 レイズの性格が作られたモノだとしたら、自意識過剰の奴だとバカにする所だが……こいつの場合は単純に状況からの推察なんだろう。

「えぇ。明日からしばらく暇はあるかしら? 暇なら、あたし達のパーティに入って欲しいんだけど」

「丁度暇になった所ではあるけれど……一体何をしようって言うんだい?」

 なるほど。少なくとも冒険者として低能ではない様だ。メリアとは随分親密な様だが、何も聞かずに仲間になると言う程お人好しでもないらしい。

「偽りの砂漠を攻略しようと思ってるの。貴方の力が借りれたら楽になるかと思ってね」

「偽りの砂漠ね……確か、昨日不死者が出たって言う情報がギルドに報告されたと思うんだけど、それと関係があるのかい?」

 情報にも敏い。メリアが推すだけあって有能そうじゃないか。

「やっぱり簡単には頷いてくれないか……仕方ないわね」

 そう言って咳払いをすると、メリアは今までの態度と打って変わって真摯な表情でレイズを見つめる。

「ギルドから情報が掲示されるとは思うけど、今偽りの砂漠では異様な程に瘴気が発生して、不死者が大量に生まれているわ。これは自然現象ではなく、何者かが意図して起こしている現象よ。あたし達は黒幕と思われる人物とも戦っているから間違いないわ」

「瘴気を操っているのかい? 俄かには信じられないな……」

 それが普通の反応だ。俺だって未だに信じられない。実際に瘴気を操っている姿を見た訳ではないが、奴の存在やその言動が今回の事件性を物語っている。

「確証はないけど、まず間違いないわ」

「……どうやら、昨日の情報提供者は君達と言う事みたいだね」

 レイズのその言葉に、俺もメリアも無言で頷いた。

「偽りの砂漠の攻略をしつつ、大量の不死者を駆除。そして黒幕を捕まえるなりして事件を解決する。はっきり言ってかなりのハードワークね。でも、今回の作戦はギルド先導で行なわれるからかなりの報酬が期待出来ると思うわ。どうかしら?」

「一つ聞いておきたいんだけど、黒幕らしき人物と戦ったと言ったよね?」

「えぇ」

「その場で捕まえる事も倒す事も出来なかったと言う事は、かなりの強敵なんだろう? 勝算はあるのかい?」

「貴方がいれば、十分にあると思うわ」

 メリアははっきりとそう答えた。俺はレイズの実力を知らないから断言は出来ないが、余程のモノと考えても良いのだろうか……

「……分かった。他でもないメリアからの誘いでもあるしね。期待に沿える様頑張るよ」

「ありがとう、レイズ。貴方ならそう言ってくれると思ってたわ」

「俺からも礼を言う。ありがとう」

「まだ活躍した訳もないし、お礼はいらないよ。僕は報酬に釣られただけだしね」

 そう言いながら苦笑を浮かべるレイズ。ここまで人が良い奴はなかなかいない。レイズに対する認識を改めておこう。

「ここでずっと立ち話をしてるのも何だし、カフェ辺りでもう少し詳しい話を聞かせてくれないかい?」

「そうね。バナッシュも良い?」

「ああ」

 俺達は近くのカフェで話の続きをする事にし、周辺に詳しいレイズの案内で移動を始めた。



 レイズを含めた俺達四人は、軽い軽食を取りつつお互いの戦闘能力について話をした。とは言っても、お互いが既に知っているメリアには聞き役に徹して貰ったが。ルルーについても至高龍種である事は伏せたがドラゴンである事実は話した。俺が纏いし者(レイヤー)である事も含めて。

 レイズの能力を聞けば、確かに役に立つ存在だった。

 まずレイズの基本武器は弓矢だ。短剣を使った近接戦闘、簡単な魔法も使えるらしく単純な戦闘能力は低くなさそうだった。しかし何よりも、彼の持つ魔法弓が異彩を放っていた。

 魔法弓ルナティック――その名を聞いた事はないが、弓に魔力を込める事でその方向性を制御し、矢に様々な効果を付加させる事が出来ると言う。その限度は分からないが、魔力を込めるのであって魔法を込める訳じゃないのがミソだ。本来魔法の武器は、武器自体に込められた魔法を魔力を通す事によって発動させる物だ。一つの能力しかない訳ではないが、決められた能力しか発揮出来ないのが普通の魔法具である。だが、ルナティックは違う。魔力さえ込めれば、使用者本人が本来使えないはずの魔法でもある程度は矢を通してだが発現出来ると言う。

 レイズ自身の魔力量の問題上、それ程強い効果は発揮出来ないらしいが、浄化の魔法も発現出来るらしいのでそれだけでも十分な戦力になる。それにあの男……魔法を無効化する魔法具を持っていたが、魔法を付加された矢ならば通る可能性もある。後は、奴に古代語魔法(エンシェント・スペル)を使わせない様にすれば何とかなるだろう。と言うのが俺達の見解だ。

 一通りの話を終えた俺達は、また明日ギルドに直接集合する事にしてその場は別れた。

 偽りの砂漠の状況が悪化したと言う事は、おそらく奴はまだあの場所にいるのだろう。俺の予想は悪い方向で裏切られた事になるが、探す手間が省けたと言う意味では有り難いとも言える。

 明日は、激しい戦いになるだろう。今日の所はゆっくり休もう。

 自分の宿に戻った俺とルルーは、晩飯を済ませ身を清めると、特に雑談をする事もなく眠りに着く事にした……

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