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ドラゴン・レイヤー  作者: 夕咲 紅
一章 暗き冒涜の使者
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ギルド長との会談

 休憩所でしばらく時間を潰すと、ギルドの職員に呼ばれて俺達はギルド奥部にある会議室へと案内された。会議室と言ってもイスやテーブルは置かれていない。今はどかしてあるだけなのか、常にこの状態なのかは知らないが……

「さて。まずは自己紹介をしておこう。私はガルニールの冒険者ギルド長で、ウォード=ラッセズと言う」

 ギルド長を名乗った壮年の男――ウォードが手を出して来た為、俺はそれに応え握手を交わす。

「君達を呼んだのは他でもない。偽りの砂漠についてだ」

 まあ当然だろうな。

「結論から言えば君達の報告は正しかった。だが、現状は最悪に近い……」

 そう言葉を続けるギルド長の表情は暗い。

「詳しく聞かせてくれ」

「うむ。既に瘴気は地下迷宮内部に充満しており、不死者の数もかなりのものだったらしい。その為、調査隊は地下1階で撤退を余議なくされたそうだ。しかし撤退も上手くいかず、生きて帰って来れたのが一人だけだった程だ。そこで我々ギルドは、今回の件を解決する為のチームを編成する事にした。君達にも参加して貰いたいのだが構わないか?」

 予想通りの流れだな。だが問題もあるはずだ。

「そのつもりでいたから問題ない。けど、どう言う風にチームを作る気なんだ? 敵の数やダンジョンが踏破されていない事を考えれば人数を確保した方が良いんだろうが、半端な奴を連れて行けば敵を増やす事にもなり兼ねない。やはり少数精鋭で行くべきなんだろが……」

 瘴気を操り、不死者を意図的に作り出す。これは特異な事で、今回の件が難解な事件である最大の要因だ。敵が範囲殲滅型の古代語魔法(エンシェント・スペル)を使えると言うのも難度に拍車を掛けている。

「今日一日で、ガルニールに滞在している最高ランクの冒険者に直接交渉していくつもりだ。五人一組のチームを三チーム作ろうと思っているが……そこは集まった人数次第で調整するつもりでいる。何か意見があれば、人数が確定した時に聞こう」

 なるほどな。こっちとしても人数が確定していない以上特に口を出す事はない。

「分かった。それで、俺達はどうすれば良い?」

「明日の朝9時、ギルドに来て欲しい。ああ、もし他に誰か仲間がいるのなら連れて来てくれ。勿論、今回の作戦に参加出来るだけの腕は必要だが……その辺りは君達の判断に任せよう」

「分かった。それじゃあ、今日の所は失礼させて貰う」

「待ちたまえ」

 踵を返そうとした俺だったが、ギルド長に呼び止められ動きを止めた。

「今回の報告報酬を用意した。受付で受け取ってくれ」

「分かった」

 ギルド長の言葉に頷き、今度こそ踵を返し俺達はギルドの会議室を出た。



 受付で報告報酬として20000ニードを貰った。報告報酬はその事件性で報酬額が変わるが、今回の額はかなりの高額と言える。

 ルルーは元々俺と同行していた為、俺達とメリアで半分ずつに分ける事にした。そのまま俺達の取り分である10000ニードもメリアに渡し、メリアへの借金を減らす事にした。

 良く考えたら一番金の掛かりそうな新しい武器をタダで手に入れられた為、残りの10000ニードを返してもやりくり出来そうだ。

「生きて帰って来てからで良いわ」

 金を返すと言った俺に対し、メリアはそんな返事を返してきた。メリアもなかなかに人が良い。

 俺はメリアの厚意に甘える事にし、改めて先程受けそびれた依頼を受けようと再び受付に向かおうとする。

「どこに行くのよ?」

 そんな言葉でメリアに止められ、俺は当然の事を聞くなと言わんばかりに「受付だが?」と答えた。

「お金に余裕が出来たんでしょ? だったら今日は休んでおきなさいよ」

「そうは言ってもな……まだ寝る訳にも行かないし、簡単な依頼をこなすくらいなら問題ないだろう。金はあるに越した事はないしな」

「分からなくもないけど……そうだ!」

 俺の言葉に苦笑を浮かべたメリアだったが、何かを思いついたらしく笑顔を浮かべてながら声を上げた。

「暇なら、ちょっとあたしに付き合わない?」

「別に構わないが……何かするのか?」

「するって言うか……一人役に立ちそうな奴がいるのよね。あたし達のパーティに加えられたらと思うんだけど、仲間に入れるとしたら貴方の許可も必要だろうし一緒に来てくれた方が手間が省けると思ったのよね」

「なるほど。メリアが役に立つって言うなら信用出来ると思うが、どうせ顔を合わせるなら早い方が良いかもしれないな」

「それじゃあ着いて来て。ルルーちゃんも良い?」

 俺の言葉に一度頷き、メリアは俺の背後にいるルルーに向かってそう尋ねた。ルルーはやはりメリアの事が好きではないらしく、しかし無視すると言う事はなく無言のまま頷いた。

「そいつがいる所は近いのか?」

「えぇ。ギルドの直ぐ近くの宿に泊まってるはずよ」

「そうか。部屋にいるといいな」

「あ」

 俺の何気ない言葉に、メリアが驚いた様な表情で声を上げた。

 今の反応はもしかして……

「いない場合の事、考えてなかったのか?」

「そ、そんな訳ないじゃない。さ、行きましょう」

「……そうだな」

 何となくいたたまれない雰囲気になりながらも、メリアの案内の元近くの宿に向かう事になった。

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