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ドラゴン・レイヤー  作者: 夕咲 紅
一章 暗き冒涜の使者
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調査隊の帰還

 メリアが出て来るのを待ってから、俺達は続いて道具屋へと向かった。防具は特に必要ないと判断した為パス。

 一言で道具屋と言っても取り扱いの品は店によって様々だ。俺達が向かったのは、魔法具を専門に取り扱う道具屋で、店名をファンタズムと言う。俺が重力場を生み出す魔法具を買ったのもこの店だ。

「これはこれは、アルハラド様にラウズコート様。珍しい組み合わせですね」

 どうやらメリアもこの店の常連らしく、まだ若いが低姿勢で接客を心得た店主がそんな風に出迎えた。

 因みに今回もルルーは外で待っている。

「いつものを1セットと、魔調薬を十個くれる?」

 俺が言葉を発するよりも早く、メリアが店主に向かってそう言った。

 魔調薬とは、簡単に言えば魔力を回復する薬だ。しかし一歩間違えば劇薬となり、身体に不調を来たす。その度合いは人によって異なる為、薬をどれだけのペースで、どれくらいの量を摂取しても平気なのかを把握しておく必要がある代物だ。とは言え、本来は時間の経過でしか回復しない魔力を瞬時に回復させるこの薬は、魔法使いは勿論、俺の様に魔力を必要とする魔法剣を扱う者には重宝されている。

「いつものって何だよ?」

「いつもの? 秘密よ」

 なんて俺に笑顔を向けるメリア。何となく苛立たしい。

「少々お待ち下さい」

 そう言って奥の部屋に消える店主を見送り、俺は店内を見て回る。自分で魔法を使えない俺にしてみれば、魔法具は一つ一つ効果を確かめながら見て回らなければどんな物なのか理解出来ない。じっくりと説明を見て、分からなければ店主にでも聞く。それが基本スタイルだ。まあ、今回はメリアもいるから聞く相手には困らないだろう。

 一通り見てはいるが、今現在主に必要な道具は浄化能力のある物だ。相手が不死者を意図的に作り出すと言う離れ技を持っている以上、浄化の手立ては少しでも多い方が良い。しかし浄化の効果を持つ魔法具と言うのは意外と少なく、この店には二種類の道具しか置いていない様だ。

「浄化の魔法具を探してるの?」

 自分の買い物を済ませたのだろう。メリアが店内を物色する俺の所に来てそう聞いてきた。

「ああ。メリアにだけ任せる訳にはいかないし、自分でも対処出来るに越した事はないからな」

「そうね。あたしとしては、そっちの方がお勧め出来るかしら」

 そう言って並んだ二つの浄化魔法具の内の一つを指差すメリア。

 メリアが指差したのは小さなナイフ型の魔法具で、その刃で傷を付けたモノに浄化魔法を施す代物だ。もう一つは重力場を生む魔法具と同じく球状の魔法具で、使い方もほぼ同様で相手に投げつける事で浄化の魔法が発動する。

 価格に結構な差があるが、消耗品か否かと言う事を考えればおかしくはない。

「なら、こっちのナイフを二本買っておくかな」

「それだけで良いの?」

「ああ。消耗品の類はまだストックがあるからな。買っておくに越した事はないが、今は金を借りる身だし無駄に買う必要はないだろう」

「備えはあるに越した事はないと思うけど……まあ、持ち運べる量にも限界があるしね。貴方がそれで良いって判断したなら信じるしかないわね」

 そう言って魔法具のナイフを二本手に取り、メリアは再びカウンターへと向かった。

「これもお願い」

「二本で20000ニードですが、宜しいでしょうか?」

 一本10000ニード。それがあの魔法具の価格だった。ニードとはこの国の通貨を示す名称で、国が発行している紙幣によって成り立っている。紙幣価値としては、一般成人男性の一食辺り1000ニードあればそれなりに満足のいく食事を取る事が出来ると言った所か。浄化の魔法がかかった魔法具で10000ニードと言えば破格の値段とも言えるが、おそらく恒久的に使える代物ではないのだろう。

「えぇ」

 店主の言葉に頷き、メリアは代金を払うと魔法具を受け取りこちらに戻って来た。

「はい」

「ありがとう」

 俺は礼を言い魔法具を受け取り、セットになっていた革製の鞘ごとベルトの隙間に差した。

「それじゃあ行きましょう」

「ああ」

 魔法具の買い物を終え、俺達はファンタズムを後にした。



 外で待っていたルルーと合流した後、俺達はもう一度ギルドに足を運ぶ事にした。どちらにせよ資金稼ぎは必要な為、街の中で済ませられそうな簡単な依頼を探す事にしたのだ。

「またいらしたんですか?」

 受付嬢にどことなく嫌な表情で出迎えられたが、基本的に目の前の受付嬢は表情の変化が乏しい。おそらく気のせいだろう。気のせいだと思いたい。

「ああ……街で完遂出来る依頼を知りたいんだが」

「ご自分でリストを見たらいかがですか?」

 ギルドに通された依頼は専用のボードで確認する事が出来るが、ガルニール規模の街ともなればその量は膨大だ。その中から目当ての依頼を探すのは一苦労と言える。その点、受付嬢はその仕事柄依頼内容をある程度は把握している。特に目の前の受付嬢は街での依頼を担当している為、今求めている依頼を尋ねる相手としては最も適しているだろう。

「そう言わずに教えてくれ」

「何かご希望の依頼種はありますか?」

 一度は突き放す様な言葉を向けられたが、プロとしてきちんと通すべき筋は理解している。

「半日以内に済ませられそうな依頼が良いな」

 もうじき午後になる事を考えれば、一つの依頼に実質半日もかけていては時間が勿体無い。が、目安とするならそれくらいが妥当だろう。

「そうですね……では、これなんてどうでしょう?」

 そう言いながら受付嬢が、一枚の依頼書を取り出した。その用紙を見れば、そこには廃材の処理と書かれていた。運搬系の依頼の様だが、もしかするとメリア一人いれば簡単に片付きそうな依頼だ。運搬先で再利用する類の物なら話は別だが、それなら最初から処理と言う言葉は使わないはずだ。

 まあ、どちらにせよそう苦労する依頼ではなさそうだな。そう判断して、俺がその依頼を受けると言おうとした刹那、ギルドの扉が勢い良く音を立て開かれた。

 扉から入ってきたのは、酷く慌てた様子の男だった。白を基調としたローブを纏った若い男で、そのローブはギルドの調査隊員の正装だ。男は誰とも会話をする事なくギルドの奥へと入って行った。

「今のはもしかして……」

 普通に考えれば、昨日の今日で偽りの砂漠に向かった調査隊が戻って来たとは考え難い。しかし、そう頻繁に調査隊が組まれる様な案件は出て来るものじゃない。それに俺の勘が、俺とは無関係じゃないと告げている。

「偽りの砂漠に向かった調査隊のメンバーですね」

 調査隊の面子を知っているのだろう。受付嬢のそんな言葉で俺の勘が正しかった事が証明された。

「やっぱり依頼は受けないでおく。それより、あの調査隊員の報告が終わって情報が出たら直ぐに教えてくれ。休憩所にいるから」

「……分かりました。貴方は通報者ですからね。上に確認する必要はありますが、多分報告する事になるでしょう」

「宜しく頼む」

 そう言って踵を返し、俺達はギルド内部に設置された休憩所へと足を運んだ。

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