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ドラゴン・レイヤー  作者: 夕咲 紅
一章 暗き冒涜の使者
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一夜明けて

 宿に帰るまでは少し離れた位置で着いて来ていたルルーだったが、眠る時には俺のベッドに潜り込み背中側から寝巻きをギュッと掴んで来た。俺は特に何も言わずそのまま眠った。

 そんな夜を過ごし、目覚めた時にはルルーの様子は一見普通に戻っていた。

「おはよう」

「おはよう!」

 俺が挨拶をすれば、こんな風に元気良く返事もした。

 昨日の今日で少し気まずい思いをしているんじゃないかとも思ったが、案外大丈夫そうだ。

「そうだ。もう一つ確認しておきたい事があったんだが良いか?」

「なに?」

 少しも渋る様子もなく、ルルーは素直に聞き返してきた。

「実際問題、地鳴りの洞窟の結界はどれくらい安全なんだ?」

「結界が完全に破られることはないと思うよ。でも、昨日みたいにあいつの分身を送り出すくらいの歪みなら、数年もあれば作れるんじゃないかな」

「もう少し具体的には分からないか?」

「うーん……今回はわたしが通過した時の歪みを利用したと思うから、あんまり正確には分からない……」

 顎に手を当てて首を傾げながら小さく唸ったかと思うと、ルルーは困った様な表情でそんな結論を口にした。

 と言う事は、推察するしか手がないか……

「なら……穴ってのは地下何階にあって、ルルーはどれくらいの時間をかけて地下50階まで昇って来たんだ?」

「数えながら昇って来たわけじゃないから正確には分からないけど、たぶん地下100階くらいだと思う。何日かはかかったと思うけど……どれくらいかはちょっと分からないかな」

「そうか……分かった。ありがとうな」

 俺が礼を言うと、ルルーは笑顔で頷き、どういたしまして。と言葉を返してきた。

 あの黒き龍自身の言い方を考えれば、やはりそれ程早く結界に傷を付けられる訳ではなさそうだった。となれば、少なくとも年単位で考えても問題はないだろう。しかし確証がある訳でもない。どこまで話せるか分からないが、やはりギルドに協力を仰ぐしかないか……

 まずは昨日の約束通り、メリアを迎えに行くか。

「準備は良いか?」

「うん」

 そもそも出掛ける準備を終えてから話をしていた事もあり、ルルーはしっかりと頷いた。

 俺達は宿を出て、メリアの泊まる宿へと向かった。



 約束の時間は昨日よりも多少遅めの10時にしておいた。纏いし者の力を大分引き出したせいか、昨日はかなり疲弊していたからだ。それ程疲れを引きずらなかったが、実を言えば少しだけ気だるさが残っている。

 だからと言って一日何もしないと言う訳にはいかない。メリアは休めと言ってきたが、俺の意思を通した結果とりあえず詳細は明日話すとして資金稼ぎは行なう方向で決まった。なのに気だるいなんて言えば、メリアは確実に休めと言って来るだろう。俺が心配と言うよりは、戦力的な意味で。

 ともあれ、メリアと合流した俺達はまず遅めの朝食を済ませ、それからギルドへと向かった。

 また貴方ですか。等と昨日と同じ受付嬢に視線で語られたが、それでも報告はしておいた方が良いと地鳴りの洞窟について伝えた。こちらも調査隊が組まれる事になったが、結界が修復された今となっては重要視される事もないだろう。まあ、それについては調査が済んだ後に交渉する事にしよう。

「さて、俺としてはやっぱりダンジョンに資金稼ぎに行きたいんだが……」

 ギルドへの報告が済んだ後、ギルドの向かいにあるカフェで一息吐きながら俺はそう切り出した。

「あたしは反対。何だかバナッシュって、トラブル体質みたいなんだもの」

 そんなメリアの反応は尤もだが、納得のいくものではない。

「そんなつもりはないんだけどな……ただ、ここ最近だけで言えば否定は出来ない」

 だからと言って、資金不足の問題は放っておけば悪化する一方だ。何かしらの策は必要だろう。

「街の中で出来る依頼を受けるとか、安全なものじゃダメなのかしら?」

「生活資金の足しにはなるだろうが、その手の依頼じゃあ魔法具の類を揃えたりは出来ないだろう」

 街の住人からギルドに送られる依頼ではその報酬も高が知れている。魔法具はそれなりに高価な物だ。出来ればある程度は一気に稼ぎたい。

「……分かった。今回の準備資金はあたしが立て替えるわ。貴方の力は必要だし、生き残れなければ意味がないもの」

「良いのか?」

 命に関わる可能性があるとは言え、大して知りもしない相手に高額の金を貸すと言うのも珍しい話だ。

「実を言えば、あたしも困った人は見捨てられない方なのよね」

 なんておどけた感じに答えるメリア。凛とした見た目とは違い、良くこう言った姿を見る。意外とお茶目な奴だと見解を改める。

「ありがとう。今回の件が片付いたらきちんと返す」

「当然でしょう。あたしは立て替えるだけなんですからね」

「ああ。分かってるよ」

 そう言って苦笑し合い、少し休んだ後に俺達は装備を整えるべくまずは武器屋へと向かった。

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