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ドラゴン・レイヤー  作者: 夕咲 紅
一章 暗き冒涜の使者
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地鳴りの洞窟1

 偽りの砂漠から帰還した翌朝、約束通り9時に冒険者ギルドへ足を運ぶと既にメリアの姿があった。

 軽く挨拶を交わしそのままギルドへと入り、昨日の事の顛末を受付で話した。

「分かりました。こちらで調査隊を組みますので、三日後にまたお越し頂けますか?」

 すると淡々とした口調で受付嬢にそう告げられた。

「ああ」

 まあそんなものだろうなと考え、俺はそう答えて後ろで待つルルーとメリアの元に戻った。

「聞いた通りだ。調査隊が無事に帰ってくれば、おそらくその後討伐隊が組まれる事になるだろうな。俺達が動くのもそれからになる訳だが……」

「どうしたの?」

 歯切れ悪く言葉を止めた俺に、ルルーが不思議そうに聞いてきた。メリアは俺の懸念を理解しているらしく、特に口を挟まない。

「奴が俺達が生きて逃げ延びた事に気付いてるとしたら、既にあの場所にはいない可能性が高いと思ってな。情報の漏洩を防ごうとして俺達を殺そうとしたんだ。どうしてもあの場所でなければならない理由でもない限りは場所を移すのが普通だ」

 そうなると、最悪の場合近隣のダンジョン探索に制限がかかる可能性もある。今回の件を、ギルドがどう解釈するかにもよるが……

「そういうものなの?」

「断定は出来ないけどな。ギルドと足並みを揃えるのが一番安全だとは思うが、俺達だけで奴を探して攻めに出るって手もある。二人はどう思う?」

 ルルーに聞いても仕方ないかもしれないが、悔しいが今回の敵はルルーの力を借りる必要がありそうだ。一応ルルーにも聞いておくべきだろう。メリアは、多分俺と同じ考えだと思うが……

「わたしはバナッシュに任せるよ」

「あたしはギルドの調査を待つべきだと思うわ。こちらから攻めるにしたって、居場所を探すのには人手があった方が良いだろうしね」

 やっぱり、大体想像していた通りの反応が返ってきた。

「そうだな。奴の件に関しては、ギルドの調査結果を待とう。それで、これからどうするかなんだが……実を言うと、金に余裕がないんだ。偽りの砂漠に行ったのも単純に資金稼ぎが目的だったくらいでな」

「ギルドからの報酬は待てないの?」

「確実に貰えるとは限らないしな。ただ生活するだけなら問題ないが、これから戦いに備えるとなると心許ないのさ。そんな訳で、出来れば資金稼ぎにどこかのダンジョンに行きたいと思ってる」

「……仕方ないわね。あたしも一緒に行くわ。もしかしたら、奴と遭遇しちゃうかもしれないしね」

「助かるよ」

「それで、どこか目処はあるの?」

「ああ。俺がルルーと出会ったダンジョンに行こうと思ってる」

「それってどこなの?」

「地鳴りの洞窟さ――」



 地鳴りの洞窟――ガルニールからやや北東に位置するそのダンジョンは、街から近いダンジョンの中では唯一踏破されていないダンジョンだ。岩山にぽっかりと開いた入り口から入り、地下へと進むタイプのダンジョンで、発見されてから何十年も経っているにも関わらず、未だに地下50階で探索は止まっている。それよりも更に深い階層があるのは確かなのだ。何せ下に降りる階段が目に見えているのだから。だがしかし、その階段付近には魔法の結界が張られており近付く事が出来ない。その結界を解除する方法が分からず、力付くで解除出来る者も現れていない。俺がルルーを見つけたのがその地下50階だった。

「やっぱり取りこぼしはないか……」

 地鳴りの洞窟地下40階。地下30階までは最短ルートで降り、そこからは未発見の隠し部屋等がないか念の為探しながら進んだ。今でも先に進む方法を探して多くの冒険者が訪れる為、モンスターの数もあまり多くない。安全面を重視したが、資金稼ぎ場所としては失敗だったかもしれない。

「あたしもここには何度か来てるけど、取りこぼしはないと思うわよ。まあ、この階層辺りからはモンスターも結構いるだろうからお金稼ぎは出来そうだけどね」

 肩を竦めながらそんな風に呟くメリア。言ってる事はもっともだ。だが、俺だって考えなしにここを選んだ訳じゃない。

「そうだな……とりあえずはモンスターを倒しながら下に進もう」

「バナッシュ!」

 俺の言葉尻に繋げる様に、ルルーが慌てた様子で俺の名を呼んだ。どうしたとは聞かない。俺もメリアも、直ぐにその存在に気が付いた。背後からモンスターが現れたのだ。現れたのはフリーズリザード。皮膚から冷気を放つ大型犬くらいの大きさのトカゲ型モンスターだ。

「何でこんな所にフリーズリザードがいるんだ?」

 フリーズリザードと距離を取りながら剣を抜き、俺はそんな言葉を漏らした。

「さあ、ねっ!」

 メリアがそう答えながら炎の魔法を放つ。しかしフリーズリザードの口から吐かれた冷気と衝突し、どちらも消滅した。

 フリーズリザードは気温の低い地域に生息するモンスターで、地鳴りの洞窟は勿論この周辺で発見された事はない。考えられる可能性は二つ。何者かが他の地域から連れて来たか、更なる地下から登って来たかだ。もし後者だとするのなら、今なら先に進むことが出来るかもしれない。そう考えるとやる気も出てくる。

「まあ、とりあえずはこいつを倒さないとな!」

 剣に魔力を流し込み雷を纏わせる。メリアが魔法を放とうとしていない事を確認し、俺はフリーズリザードとの距離を一気に詰めた。フリーズリザードは口から放つ冷気にさえ気を付ければそれ程驚異的なモンスターではない。接近する俺に対し冷気を吐いてきたが、動きを良く見ていれば首を動かす予備動作を視認して避ける事が出来る。機敏とは言えないその動きは読み易く、横をすり抜けて背後に回っても直ぐに転回する様子すらない。冷気を放つ皮膚はそれなりに硬いが、帯電状態の魔法剣ならば切り裂く事は難しくない。

 上から真っ直ぐと振り下ろした俺の斬撃は、フリーズリザードの身体を真っ二つに切り裂いた。

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