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ドラゴン・レイヤー  作者: 夕咲 紅
一章 暗き冒涜の使者
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パーティ結成

「まさか、その子がドラゴンだったなんてね……それに貴方がその纏いし者(レイヤー)。それならそうと言ってくれれば良かったのに」

 ガルニールへと戻った俺達は、今後の事を話す為に入り口から一番近い酒場へと入っていた。

 そんな中、メリアが皮肉めいた言葉を放ってきた。道中は疲労感が増して殆ど何も喋らなかったが、簡単に説明しておいた結果がこれだ。まあそう考えてもおかしくはない。が――

「そう簡単に口にすると思うか?」

 俺がそう切り返すと、メリアは「それもそうね」と直ぐに納得した。気を利かせて小声で言った辺り、きちんと理由まで考えて口にしたんだろう。

 ドラゴンの気配を感じ取ってか、街に戻るまでモンスターと遭遇する事はなかった。地下迷宮を出た時点で纏いし者(レイヤー)状態から元に戻ったが、偽りの砂漠内部でモンスターと遭遇しなかったのは助かった。正直、あれ以上戦闘を続けてたら今日中に街まで戻る体力がなかっただろう。

「それで、これからどうするつもり?」

「……とりあえず、明日の朝にでもギルドに報告に行くさ」

 この街に限らず、ある程度の大規模な街には必ず冒険者ギルドが存在する。俺達冒険者はギルドで様々な道具や情報を売り買いし、又クエストと呼ばれる依頼を受ける場所でもある。

 ダンジョンに不測の事態や問題が起こった場合は、ギルドに報告をするのが通例となっている。決して義務ではなく、この場合は情報の正否が確認され次第褒賞金が貰える。これも情報の売買の一種と言える。

「まあ、これ以上無駄な死人と不死者を生み出す訳にもいかないしね。それは当然として……」

 メリアが何を聞きたいのかは分かっている。俺達は命を狙われた。おそらく死んだと判断されているだろうが、いつかは生きている事がバレるはず。そうなると色々と面倒な事になる。ならばどうするのか……

「ギルドが事件と判断して介入するつもりなら、そのメンバーに志願はするさ。そうじゃなくても、敵を知っている俺達にはギルドから要請が来るだろうしな。ギルドに介入の意思がないなら、勝手に動くだけだ」

 受身ではいつ危険に晒されるか分からない。早めにこちらから攻めに出る方が得策だろう。

「なるほどね。あたしも貴方と同意見よ。だから――」

 そう言って、メリアはじっと俺の目を見つめてくる。

「しばらく、あたしと手を組まない?」

 それは何となく想像出来た言葉だった。ドラゴンとその纏いし者と組めると言うのは、冒険者にとってかなりのプラスになる。冒険中の安全面は勿論、危険が減る事によって財宝を追い求め易くなる。メリアの人となりは分からないが、そう考えるのが普通だ。それに現状からすれば、メリアも俺と同じく命を狙われるであろう立場にある。となれば、俺と組んでおくと言うのは例え俺が纏いし者でなくてもプラスになる。つまりそれは、俺からしても同じと言う事だ。

「俺からも誘おうと思ってたくらいだ。とりあえずは、今回の事件が片付くまでは宜しく頼む」

 そう言って俺は手を差し出す。「よろしくね」と手を差し出すメリアと握手を交わした。

「それじゃあ今更かもしれないけど、改めてお互いに挨拶でもしましょう?」

 手を離すと、湿っぽくなっていた空気を一掃する様に明るい調子でメリアはそう言った。

 確かに、緊急時だった事もあってちゃんとした自己紹介すらしていない。今後パーティを組むのなら、お互いの事は知っておくべきだろう。

「そうだな」

 そう考え、俺は納得の意を込めて頷いた。

「それじゃあ、あたしから。あたしはメリア=アルハラド。双炎の魔法使い。ギルドではそんな風に呼ばれているわ」

「双炎の魔法使いだって!?」

 メリアの自己紹介に俺は驚きを隠せなかった。冒険者ギルドでは一定の功績を残した者に、その功績や能力に沿った二つ名が与えられる。二つ名が付けば名指しの依頼も増え、仕事に困る事がなくなる。それに加えギルド内部での信頼は増し、関連施設の利用等にサービスが付いたりと恩恵もある。真っ当な冒険者ならば一度は二つ名を貰う事を夢見るものだ。二つ名があると言う事は一流の冒険者である証になるのだから当然だろう。

「そうよ。あたしの場合はまだ名前は余り知られていないけど、二つ名はそれなりに有名だって言う自負はあるわ」

「謙遜の必要が全くないくらい有名だろうに良く言う……」

「そう?」

 俺の言葉に笑みを浮かべるメリア。やっぱりこいつ、良い性格してやがる。

 双炎の魔法使いと言えば、二年前に史上最年少で二つ名を得たと一時期騒ぎになった冒険者だ。その名の通り炎の魔法を得意とし、新たに魔法を編み出した事で二つ名を得たと言われている。勿論それだけではないだろうが、間違いなく新魔法の創作が決定打となったはずだ。それ程魔法を編み出すのは難しいとされている。

「確か二年前、十八歳の少女が二つ名を得たって言われていたはずだから……メリアは今二十歳って事か」

「そうだけど、余り女性の年齢を詮索するものじゃないわよ?」

 特に怒った様子ではないが、そんな風に諌められ俺は大人しく頷いておく。

「それもそうだな……すまない」

「炎の魔法が得意なのは言うまでもないと思うけど、さっきも見せた通り炎属性なら浄化の魔法も使えるわ。それと、簡単なものなら結界魔法と風の魔法も少し使えるわね」

 風の魔法まで使えるのか……

 魔法には属性があり、魔法使いと呼ばれる者でもその全てを使える訳ではない。個人によって得意とする属性があり、当然不得意な属性も存在する。そこには個人差があり、不得意な属性でも魔法として発現出来る者もいればそうでない者もいる。しかし無理して不得意な魔法を使ったとしてもその効果は期待出来ない為、魔法を学ぶ者は自身の得意な魔法を重点的に学んで行くのが常識だ。

 わざわざ使えると言ったからには、メリアは風の魔法もそれなりの効果で発現する事が出来るのだろう。

「一応短剣くらいは持ってるけど、剣術を学んだ訳じゃないからあくまでも魔法が使えない時の為の保険ね。体術は冒険者になる前に多少学んだから、接近戦になってもある程度は戦えるわ。他に何か聞いておきたい事はある?」

 見知らぬ冒険者がパーティを組む時は、こうして自分に何が出来るかを伝える。作戦を立てる様な状況になれば一人一人の能力は知っておかなければならないし、個人の戦闘であってもどう手を出せば良いか等様々な判断材料になる。その全てを語る者は少ないが、手の内を全く見せようとしない者は信用されない。

「特にないな。実際の戦闘能力はさっきも見せて貰ったし」

「なら、次はそっちの番ね」

「そうだな。俺はバナッシュ=ラウズコート。残念ながら二つ名は持っていないが、一部ではそれなりに名は知られてると思う」

 対抗心を燃やした訳じゃなく、事実一部には有名だ。特別ギルドに貢献してきた訳ではない為二つ名こそ貰っていないが、腕っ節には自信があるし、数多くのダンジョンに足を運んできた。困った人間を放置出来ない俺は人助けも数多くしてきた為、俺の持つ魔法剣の力から雷鳴のバナッシュなんて呼ばれる事もあるくらいだ。ギルドから贈られる二つ名とは別に、自称する者や俺みたいに他人から付けられる二つ名も存在する。恥ずかしいから俺は自分では名乗った事はないが……

「――もしかして、人助けのバナッシュ?」

「ああ……そんな風に呼ばれた事もあったな」

「なるほどねぇ。何となく分かるわ」

 何が、とは問わない。割とキツイ印象を与える顔立ちをしているが、滲み出るお人好しのオーラがあると言われた事もある。

「雷を操る魔法剣と、結界魔法のかかった魔法の盾を持ってる。剣技にはそれなりの自信がある。ついでに、最近纏いし者になったばかりだ」

 最後は声を小さくしておく。余り知られたくはないからな。

「貴方が人助けのバナッシュならその実力に不満なんてないわ。たとえ纏いし者じゃなくてもね」

 そう言ってウィンクしてくるメリア。

「そいつはどうも」

「あら、つれないわね」

 やや憂いを込めた声音でそんな事を言うメリアだったが、冗談だと分かっているので相手にしない。

「それで、こいつはルルーセリア=エルド=ガーネット。人の成りをしているがドラゴンの子供だ。俺はルルーって呼んでる」

 俺とメリアの間の席で一人懸命に飯を食べているルルーを指差し、俺は小声でそんな紹介をした。

「改めてよろしくね、ルルーちゃん」

 そう言いながらメリアが手を差し出すが、ルルーは全く見向きもしない。

 そう言えば……出会ってからここまで、一度も直接言葉を交わしている所を見ていない。

「ルルー、挨拶くらいはしておいた方が良いぞ」

 俺がそう言うと、思いっきり渋々と言う感情丸出しでルルーはメリアへと視線を向けた。

「わたしはお前がキライだ。でもバナッシュの為にガマンしてやる」

 俺達の会話を聞いて、行動を共にする事がプラスだと言うのは理解しているのだろう。ふてぶてしい態度でルルーはそんな風に言い放った。それから握手を交わすでもなく、ルルーは再び食事に戻ってしまった。

「……まあともあれ、よろしくって事で」

「えぇ」

 微妙な空気になりながらも、その後俺達はルルーを除き頼んでおいて手をつけていなかった夕食を食べた。

 時間経過と共に多少味は落ちていたが、それでもそれなりに美味いと思えた。どうやらこの酒場を選んだのは正解だった様だ。

 食事を終えた後はお互い疲労している事も踏まえ、その場は解散となった。今後は泊まる宿も統一した方が良いかもしれないが、流石に今日明日で襲撃される事はないだろう。そう考え、明日の朝ギルドが開く9時にギルドで合流する事にして、俺達はそれぞれの宿への帰路へ着いた……

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