あの花はどこへ行った?
掲載日:2026/03/18
春になると、丘の斜面に小さな白い花が咲いた。
名前は知らない。けれど町の子どもたちは、それを「あの花」と呼んでいた。
理由は簡単だ。
毎年咲くのに、気づくと消えているからだ。
ある年の春、少年は祖父に聞いた。
「ねえ、あの花はどこへ行ったの?」
祖父はしばらく丘を見ていた。
そして静かに言った。
「遠くへ行ったんだよ」
「どこに?」
祖父は答えなかった。
代わりに、昔の話を始めた。
ずっと昔、この丘の向こうで大きな戦争があった。
町の若者たちは、みんな遠くへ行った。
帰ってきた人もいたけれど、帰らなかった人もいた。
戦争が終わった年、丘にたくさんの花が咲いた。
見たこともないくらい、たくさん。
「不思議だろう」祖父は言った。
「人がいなくなった場所ほど、花はよく咲くんだ」
少年は丘を見た。
風が吹いて、草が揺れている。
「じゃあ、あの花は…」
祖父はゆっくり首を振った。
「花はどこにも行かない。
行くのは、いつも人のほうだ」
それから何十年もたった。
町は静かで、戦争もない。
春になると、丘にはまた小さな白い花が咲く。
通りすがりの子どもが聞く。
「あの花はどこへ行ったの?」
誰かが答える。
「どこにも行ってないよ」
子どもは少しだけ、不思議そう顔で丘を見た。
そしてぬるい風が通り過ぎていった。
AIと共作してみました。




