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転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します  作者: ダイスケ
第7章:

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第97話 進むべきか退くべきか 7歳 春

「トール、どうも大民会のクナトルレイク大会の準備は、うまく行ってないらしいが。どうしたらいいと思う?」


 村長婦人と話した数日後、家で父ちゃんにも同じことを聞かれたよ。

 父ちゃんは村の噂を積極的に収集する性質たちじゃないから、これは村長婦人が意図的に父ちゃんの耳に入るように情報を操作したのだろうね。


 おのれ村長婦人め。だんだんと手口が洗練されてきている。

 僕は父ちゃんはじめ家族の言うことなら、ちゃんと聞くことを見透かされている。


 ふうん…。もうね、向こう(村長婦人)がそういう手に出てくるなら、こちらも遠慮なしにやってやろうじゃないか。

 僕は自重を捨てて、父ちゃんと話してみることにした。


「まずね…夏の大民会でまともな大会開催は無理だと思うんだ」

「無理かあ?貴い身分の方々や知恵者スカルドが集まっているんだぞ?うちの村でも出来たことがなぜ出来ないんだ?」

「だから無理なんだと思うよ」


 僕は村長婦人にしたのと同じ説明を繰り返した。

 そもそも北方の男達でリーダーシップを発揮したい戦士は多くても「どのように従ったら全体最適になるだろう?」と各々が考えて動くことができるフォロワーシップ、というやつがが育ってないこととかね。


 なにしろ北方の男達は、誰も大きな組織や社会に所属したことがないからね。

 船頭多くして船山に登る、というやつだ。


「それにね。どうしたら良いかの説明は、村に来た視察団の人も帰って村長や村の戦士達にもしたはずだと思うんだよね」


「そうだ。トールもあれだけ良く説明していたし、視察団の方々も理解していたようだった。だからこそ上手く行くと思っていたんだが…」


「僕も、あの時は理解してもらったと思うよ。だけどね、理屈じゃないところで上手く行ってないと思うんだ」


 僕は指折りながら、うまくいきそうにない理由をあげる。


 「例えば、誰がリーダーになるか。誰がお金を出すか。食料を出すか。競技場の整備をするか。審判をするか。皆、負担は少なくて利益だけは欲しいんだ。

 他にも、あいつが気に入らない、俺が威張りたい、こいつはサボっている…。自分の思い通りにしたい、とかの感情的な軋轢。

 人の集団を運営するには理屈が必要だけど、人の集団が動くのは理屈じゃないからね」

「そうか…。そうかもなあ」


 父ちゃんは同意して頷いた。


「だから、理屈で説明するのが得意な僕の出番はないよ。そもそもの問題が理屈じゃないからね」

「そうか…トールでも無理か」


 そう。僕の出番はない。


「だけどね、僕じゃなくて父ちゃんなら、出来ることがあるよ?」

「俺にか?どうやって?」


 ふふふ。父ちゃんのためなら、僕は自重しないのだ。

 村長婦人め、姑息な手段で僕を焚き付けたことを後悔するがいい。


「それはね!父ちゃんが最高に強くて格好いいクナトルレイクのチームを仕上げて、民会に殴り込むの!

 それで会場に殴り込んだら、クナトルレイクの試合を片端から申し込んで、全部のチームを試合で粉砕しちゃえばいいんだよ!」


 僕の過激な提案を父ちゃんは形だけなだめてみせた。


「おいおい…穏やかじゃないな」


 穏やかじゃなくていいのだ。絡まった糸は断ち切ってしまったほうが早い。


「いいんだよ。もうね、試合を挑んでくる相手がいなくなるまで、小さな村のチームから大きな村のチームまで、端から端まで、クナトルレイクで叩きのめすの!


 そうしたら、父ちゃんは北方一のクナトルレイクの達者になるわけでしょ?

 男衆は一番強い人の話なら聞くでしょう?


 大会をどうするか、とか理屈の話をするのは、後のことだよ。

 最初に、クナトルレイクで思い切り殴り飛ばして強さを見せつけるんだ。

 父ちゃんが作り上げたチームにしか出来ないし、父ちゃんならできると思うんだ。


 とにかくクナトルレイクで勝って勝って勝ちまくる!そうしたら、皆がちゃんとクナトルレイクに向き合うようになるよ!政治とか人間関係とかじゃなくてね。」


「それは…最高に楽しそうだな」

「でしょう?」


 僕と父ちゃんは大きさの違う拳を軽く打ち合わせた。

 そして母ちゃんとエリン姉は、男ってバカねえ、という呆れた目をして楽しそうな僕達を見ていた。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


「トールステイン、あなたは正気ですか?」

「はい。僕はごく普通の正気の子供です」


 僕が昨夜、父ちゃんと話し合った案をぶつけたら、村長婦人は頭痛が痛い、って顔でこめかみを形の良い指で抑えた。


 そんなに驚くことかな?

 ちゃんと考えたら、この方法しかないじゃない?


「そもそもですね。北方の武勇自慢の男達が、普通の手段で言うことを聞いたり、まとまったりするはずがないんですよ」

「まあ…それはそうですが」


 村長婦人はしぶしぶ認めた。


「だから、こんな風に」


 ぼくは右の拳を左の手のひらに、ぺちん、と打ち合わせてみせた。

 むっ。もう少しいい音がすると思ったんだけど。


「一発、強い力で張り倒すんです。話をするのは、それからですよ」


 衝突音がイマイチだったせいか、せっかくの決め台詞がいまいち締まらなかった。

 ぺちん、ってなんだ。バチンッ!!と音がする予定だったのに。


 なんか村長婦人の口元が微笑ましいものを見るように緩んでた。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


「ふぁーあー」


 長屋敷を出て、伸びをしたら入口警備をしていた郎党の人にちょっと睨まれた。

 だって難しい話で肩が凝ったんだもの。

 言いたいことが言えてスッキリもしたし。


 何にせよ、僕は聞かれたことには答えたので、その方針を採用するかどうかは村長の権限のうちだね。


「クナトルレイクで、大きな村から小さな村まで、全ての村に喧嘩を吹っかけて勝つ!」


 というのが方針と言えるのかどうかは微妙なところだけど。

 村長に勇気があれば採用するだろうし、芋を引くなら不採用になる。


 提案が不採用になったら、勇気を見せたのは父ちゃんで、臆病なのは村長ということになる。

 村長婦人と話している間も、侍女の人や郎党の人が周囲で話を聞いている気配はあったからね。

 秘密にしていても、どうしたって話は漏れていくものだから。


 僕はクナトルレイクの試合なら父ちゃんが世界で一番強いと思うし、絶対に勝てると思う。

 ただクナトルレイクで派手に負けると、逆恨みしてた村や戦士が襲撃してくる恐れもないわけじゃない。


 だからこそ、僕は正面からクナトルレイクによる挑戦を周囲の目がある中で、正々堂々と勝負を受け続け、勝ち続け、叩きのめし続けることで、闇討ちや卑怯な真似をさせないような舞台を作ることが正しいと思うんだよね。


 いずれにせよ、僕の提案を採用するにせよ、不採用にするにせよ、どちらになっても父ちゃんに不利益はなし。


「さあて。村長と村長婦人はどうするのかなあ」


 僕は出てきたばかりの長屋敷を振り返り、屋内で交わされる議論の結果を楽しみにしつつ家路へとつくのだった。

 午後は父ちゃんの畑仕事の手伝いが待ってるからね。

 7歳は忙しいのだ。

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― 新着の感想 ―
その父ちゃん達の試合の審判はだれがやるんだろう?
これ歴史的にターニングポイント!?
普通は武威を示すためには戦争が必要で、だけど戦争をすると兵を損なって国力が落ちるので簡単には武威を示せない。 でも試合で武威を示す分には、翌日には兵力が回復しちゃうから、ほぼノーコストで格付け仕放題に…
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