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転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します  作者: ダイスケ
第6章:トールステイン大王伝記黄金編

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第86話 僕のしたいことは変わってない 6歳 冬


 子供が上目使いすると悪戯を許してもらえる、とエリン姉から聞いたことがある。

 僕だって6歳ならギリいける、と試してみたのだけれど。


「そんな目をしても誤魔化されませんよ!」


 …ダメでした。精一杯、媚を売ってみたのに…可愛げが足りないのか。


 それにしても美人というのは怒ると怖いなあ。

 もう何度目になるかもわからないけれど、同じような感想を抱く。


「では、意図的に技術を隠していたわけではないのね?」

「もちろんです!そんなことしたこともありません!」


 背筋を伸ばして即答したのに、どうも回答はお気に召さなかったらしい。


「正確には?」

「わざとじゃありません!」

「よろしい」


 実際、意図的に隠したことはないはず。

 たぶん説明してもわかってもらえないし説明する労力をかけるのが面倒くさいなーと、報告や説明を後回しにしたことはあるかもしれない。


「あの燻製炉についても隠していたわけではなくてですね、まずは試しで作ってみて実績を作ろうかと…実際に動かしてみて手直ししないと、良いか悪いか判断もできなかったと思うので」

「そうね…実際にものがなかったら信じないと思うのも当然ね」


 やれやれ。分かってもらえた。お咎めなしね、と。

 ほっ、と胸を撫で下ろしたのだけれど。


「でも四角い冷燻所では問題が起きるとは思っていたのよね?」


 ぐっ…鋭い。そこに気がつくとは。


「はい…まあ…普通の燻製所でも起きていることなので」


 単なる事実として、秋に臨時で燻製小屋として運用された船小屋の燻製の品質は、かなりバラつきがあったと聞いている。自家消費なら、それでもいいんだけどね


「交易の商品としては良くない、と言うのね」

「そうです。交易品は薬と同じように出来るだけ高く売りたいので」


 僕の意見に、村長婦人は首をかしげた。


「鱈を冷燻処理すれば、風乾の3倍の値で売れるのよ?十分ではなくて?」

「僕は、工夫すれば5倍で売れると思います」


 村長婦人は、僕の回答に「5倍…」と小さな声でつぶやき、キュッと目を閉じて上を向いてしまったのだった。


「本当にこの子は…どうしようかしら…」


 おかしい。ものすごい問題児扱いされている気がする。


 少し経って冷静さを取り戻したのか、僕達は問題の解決という建設的な議論を始めることができた。


「トールは、とりあえずどうしたらいいと思うの?」

「単純に、鱈を干す棚の場所を定期的に入れ替えたらいいと思います」


 鯨肉を白樺の枝の棚で乾燥させたときは、上下や裏表をひっくり返したよね。

 冷燻でも同じことをすればいいんだ。

 もちろん、誰が考えても当たり前のことをしてこなかったのには、理由がある。


「人が入ると煙が無駄になるわね…」


 棚の順序を入れ替えるためには人が入らなければならず、入口を開放して空気を入れ替える必要がある。すると、せっかく冷燻するために調整して充満させた煙が無駄になってしまうのだ。


 余計な燃料が必要に慣れば、加工時間も伸びて薪代もかさみ利益が減る。

 僕が家庭用の冷燻石塔でも、何とかして動力で外から回せないかな、と考えた理由の一つだ。

 けれど、今回の大型冷燻施設では、そこまで燃費を考えなくても良い理由があると思うのだ。


「塩製造施設を動かせば、どのみち煙の燃費はそこまで問題にならないはずです。それよりも、冷燻鱈の品質を一定に保つほうが得になると思います」


 塩を炊き、宿泊所の床を暖め、家畜小屋を暖め、最終的には冷燻施設へと至る。

 僕があくまで複合熱サイクル施設にこだわった理由はここにある。


 もちろん悪い点もあって、冷燻施設が動き出すと安い燃料の泥炭は使えなくなる。

 泥の香りが燻製に移ることを嫌う消費者が多いからだ。

 泥炭の良い香り、とスコットランドあたりが莫大な広告費をかけて消費者の意識を変えてくれれば、また別の活用方法もあるのだろうけれど、今は無理だ。


 僕に出来るのは、今高く売れるものを《《もっと高く売る》》方法を考えるぐらい。


「5倍の値付けと言ったわね?どんなことを考えているの?」


 僕は、当たり前の高品質を実現するための外側包装ブランドパッケージについて、思うところを述べた。


「冷燻鱈を積める交易用の樽は規格を揃えます。中身の数や重さも同じにします。

 詰める鱈の品質検査も厳格にします。検査の項目を作って、下位2割はハネます。

 樽には村の印である焼印を押します。ルーン文字で詰めた日も書きます。

 蜜蝋と封印で密封し、混ぜ物が入っていないことを保証します。

 防腐剤、防湿剤として袋に入れた石灰も入れます」


「…たかが魚の樽に、そこまでのことをした話は聞いたことがないわ」

「かもしれません」

「トールは、魚を薬と同じように売ろう、と言うのね」

「その通りです」


 村長婦人は、僕の目を覗き込むようにして尋ねた。


「トールステイン、あなたはいったい何がしたいの?」


 そんなこと聞かれても、僕の答えは決まっている。


「母ちゃんの薬と同じです。父ちゃんが頑張って海で獲った魚を、できるだけ高く村の外で売りたいのです」


 と、胸を張って答えたのだった。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 村長婦人のお説教から解放されて家に戻ると、エリン姉が待っていた。


「トール、いくわよ!」

「うん!」


 今日はエリン姉と鳥を狩る約束をしていたのだ。


「ふふーん!私に任せなさい!」

「おーすごい」


 エリン姉が、すっかり葉の落ちた林の一画に手早く罠をしかけた。

 餌をついばみに来た鳥の足が枝にかかると、木枠に小さな漁網が張られた天板が若木の枝の弾力でバタンと倒れてくる仕組みだ。

 この種の細かい細工、エリン姉は意外と得意なんだよね。

 今のところ、その才能は罠造りにしか向けられていないけど。


「お肉が食べなくなったら、ときどき捕ってるからね」

「そうなの!?」

「しっ。隠れて!」


 お腹がすいたら鳥をとる女児9歳。野生児すぎる。


「いっぱい獲ったら大人に怒られるけど、一羽ぐらいなら誰も気にしないわよ」


 鳥の営巣地なんて、村の誰かの利権っぽいものなあ。

 大きな罠で鳥を一網打尽にしたら血の雨が降りそうだ。

 今のように私有地に来た鳥を罠で獲るぐらいなら見逃されると思うけど。


「いい…静かにしてなさい」


 餌を撒いてしばらく待っていたら、冬で餌不足なのか直ぐに目ざとい鳥が数羽、舞い降りてきた。


「カラスはとっちゃダメだからね」

「フギン様はダメよね」


 バタン!

 バサバサバサッ!


 鳥が罠にすれていなかったのか、思い切り引っかかった。

 大きなカモメだ。


 エリン姉は慣れた手つきで網の上からカモメをつかむと、クイッと首を折った。

 うーむ…なむなむ…。


「とりあえず川で血抜きしましょうか」


 近くの川で血抜きしつつ肉を冷やし、焚き火を準備する。


「ちょっと羽をむしらせてくれる?」


 僕の狙いは、鳥の羽。できればダウンとか布団とかを作りたいんだ。

 そのために何羽分の羽が必要なのか。

 まずは1羽あたりからとれる羽の量を測らないといけない。


「そこで天秤測り!そして重り!」


 僕が取り出したのは、アラビア銀貨を元にした石の重り!、の試作品。

 こいつを使う機会を待っていたのだ

 

 とりあえず天秤の両方に同じ大きさの袋を釣り合うように下げて、片方に羽毛を入れて重りを足していきながら重さを測ってみた。


「え?いちばん良さそうな羽毛だと、たった銀貨10枚分だけ?」


 いやいや。もう少し妥協して細かい羽も使って測ってみようか…それでも35枚ぐらいか…。

 銀貨1枚3gぐらいだから…布団のキルトで2kg必要だとして…。

 え?1羽からとれる羽毛、めちゃくちゃ少なくない?


 布団のキルトに最終的に2kgはいるから…1人分で20羽!

 4人の家族分で80羽!

 上納しないと怒られそうだから2組上納するとして、120羽!


 うーん…これは相当に慎重に考えないと、あっというまに鳥が巣ごと全滅するな…。


 うるさいカモメを大人が一網打尽にしないわけだ。

 営巣地は利権で保護しないとダメだね。

 こんなの貴族の布団だよ…。


 羽毛ダウン計画はなしだね。

 安価な綿なんてないだろうから、羊毛で似たようなの作れないか考えようかな。


 その後、カモメの肉は、エリン姉と2人でこっそり焼いて食べた。

 大人に隠れて食べた鳥肉は、とても美味かった。


「秘密だね!」


 と約束したら、またちょっとエリン姉との絆が深まった気がした


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― 新着の感想 ―
実際問題、カモメって美味しいの?
それ、大人にはバレてるだろう! 火を使うのにこっそり焼くとかどうやって隠すんだ?
カラス駄目なんか カモメの羽毛は魚臭そう
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