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転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します  作者: ダイスケ
第5章:トールステイン大王伝記覇王編

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73/99

第73話 トールステイン大王伝記:覇王の章

 あまり知られていないことだが、フィランド地方はヴァイキング関連の文化展示に非常に力を入れている。

 ロサラ島にあるロサラ・ヴァイキングセンターでは、当時のヴァイキング村を再建した施設があり、巨大なロングハウスを散策したり、ヴァイキング衣装の試着、武器を手に取ってみたり、音楽を聞いてサーガに浸ったりと、五感でバイキング体験をすることができる。

 また、首都ヘルシンキの国立博物館には、ヴァイキング時代の様々な副葬品が展示されてもいる。


 円形のブローチや鎖などの精巧で美しい装飾品もの展示は多くの観光客の目を楽しませているが、最も人気のある展示品は、トールステイン大王自らが戦士達に下賜したという黄金に輝く神話の盾である。


 神話の盾については、各地に伝わる黄金の羊皮紙と呼ばれるトールステイン大王伝記「覇王の章」詳細に上級ルーン文字で書かれている。



 聞け、炎と氷が交わる地の果て、運命の糸が紡がれる音を

 トールステイン大王は、九つの世界を震わせる咆哮とともに、地上の覇王として立つことを決意せり


 大王は各地の王らへ、鴉の翼に乗せて使者を放った

 その書簡には、王自らが指先で削り出したルーン文字が、古の魔力を帯びて脈打っていた


 抗わんとする王も、日和見を決め込む臆病なる王も、その文字に宿るオーディンの魔術に魂を射抜かれ、膝を折るほかになし

 かくして、北の大地からは雪崩のごとく、若き戦士たちが大王の足元へと集った



 大王は、集いし荒くれ者たちを前に、北風をも切り裂く声で宣言した


「聞け、命を惜しまぬ勇者たちよ。我に従う者は、誇りを盾とし、正義を剣とせよ」


 戦士たちは、真実と和解の神フォルセティの名にかけ、決して裏切らぬ血の誓いを立てた


 大王がその神聖なるかいなを天に掲げれば、大地を割って白き巨大な船の館が姿を現した

 それは大海を渡る龍の如き威容を誇り、外が凍てつくラグナロクの如き冬であっても、内部は女神フレイヤの吐息のごとく春の陽気に満ちていた

 宴て供される滴る肉の脂は尽きることなく、戦士たちは黄金の蜜酒に酔い痴れた


 さらに大王は、霧の国の魔女らに命じ、命を繋ぐ薬湯を広めた

 かつて喉を焼くほど苦かった癒しの水は、王の魔力によって蜜よりも甘く変えられた

 戦士たちの古傷は塞がり、遠征を蝕む病魔は霧のごとく消え去った


「見よ、ヴァルハラが地上に降り立ったのだ!」と、戦士たちは感涙し、その命を王に捧げることを改めて誓ったのである


 王は傷と病が癒えた、猛者たちを鍛え上げて競わせ、選りすぐりの戦士に神の力を宿した盾を授けた

 最初に選ばれし者たちの盾には、思考を司る鴉フギンと、全てを飲み込む狼フェンリルの紋章が刻まれた

 これぞ、剛勇なるグリムル将軍が率いる、天下無双の「二神兵団」の興りなり


 続いて二十の神々を象った盾が授けられ、四百の祝福を受けし無敵の近衛兵が王の影として並び立つ

 その盾の列は、さながら神々が地上に降臨したかのような威圧感を放ち、大王の覇業を揺るぎないものとした


 周辺の王たちは、トールステイン大王の神威に恐れおののき、競って自らの息子を人質として差し出し、恭順を誓った

 大王はこれら従属せし王たちを招き、上下の別なき円座を組み、静かに、しかし峻厳に諭した


「我が旗の下に集う民、そして兵士を、一人として無為に死なせることはない。

 我に従う者には、凍えぬ家を、飢えぬ糧を、病なき日々を約束しよう」


 王たちはその言葉の重みに震え、雪原に額を擦りつけて服従した

 かくして、王の中の王、トールステイン大王による広大なる地上王国が、永遠の氷と炎の記憶の中に刻まれたのである


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 サーガに謳われるトールステイン大王の近衛神兵団が実在したか、は現在でも歴史家や好事家達の議論の的となっている。

 15世紀に活躍した英国の修道士トマス・ウォルシンガムは「北方の野蛮人の副葬品は全て英国修道院からの略奪品に過ぎない」との立場をとったが、ある時代を境に、多くの北方の有力者の副葬品から神話を模した黄金の盾の出土が急増するのは事実であり、神兵と呼ばれヴァイキング社会において高い地位に着いた者達がいたことまでは概ね事実であろう、ということで見解の一致を見ている。


「ですが出土した黄金の盾、実際には青銅を磨いた直径1メートルほどの盾なのですが、その重量は30kg近くにも及びます。こんな重量の盾を保持し戦うことは、どれだけ屈強な戦士でも不可能です。ですから、サーガに謳われた神兵団は、実戦部隊と言うよりも象徴的な存在であったという学説も根強いのです…」


 歴史の教師の話を、珍しくリアムもルーカスもきちんと聞いていた。

 もちろん、彼らの贔屓チームの歴史に関係しているからである。


「へー。なるほどねえ。今のクナトルレイクリーグのチームってが20チームなのも、この時代の兵団数が元なのか」

「だけどさあ、フギン・レッド・フェザーズはともかく、ルーカスご贔屓のスルト・グレー・アームズは2部じゃん…」

「うるさいな!今はリーグでも2位につけてるんだから、来季は昇格するんだよ!」


 今季のリーグは残り3節。果たして彼らの贔屓するプロクナトルレイクのチームは、思うような結果を残すことができるのか。

 授業が終わり次第、リアムもルーカスも贔屓チームの試合チケットを巡る争奪戦に参加するつもりだ。


 5章 終わり


 作者です。

 皆様の支えにより、ついに二十万字に到達しました。

 文庫にすると2冊分ですね。

 ちょっと5章はイベントを詰め込みすぎました。

 …トールくんが過労死しないといいのですが。


 まだまだ大王の征路は終わりません。

 完結まで書き抜く力を蓄えるため、物語を気に入りましたら「★」やレビュー、フォローといったった形で作品を支えていただけますと幸いです。

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― 新着の感想 ―
これ今迄もだが大王の神話が日中の石碑みたいな細かな真実記録、大会の招集やルールブックの羊皮紙などが見付かったら歴史家たちが大激震となって面白いな
ついに第5章も……。 お疲れ様です!これからも楽しく読ませてもらいます。
子供のおもちゃが聖遺物に 歴史の中ではあるあるだね
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