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転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します  作者: ダイスケ
第3章:トールステイン大王伝記昂揚編

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第35話 長屋敷と諮問と答申 6歳 夏

「トール、そんなに緊張しなくて良い。子供として話を聞きたいだけだそうだから」

「うん…」


 今日は父ちゃんに連れられて、村長の長屋敷に来ている。

 交易に出る前に、第一回統一クナトルレイク実行委員会(仮称。つまり僕がそう読んでいるだけ)を行っておこう、とう話だそうで。

 村の偉い人たちに僕も子供代表として呼ばれて参加するんだ。


「僕、まだ6歳なんだけど…」

「トールの心配ごとは、村長も知っておくべきだろう?」


 まあ、そうなんだけどね。

 4つの村の子供を集めてプレ大会を行って、来る冬の大民会における大規模大会の運営ノウハウを蓄積しよう、という発想自体が新鮮だったそうで、報告した父ちゃんを通じて僕の参加につながったらしい。


「村長も、小さなフギンは大したものだ、と感心していたよ」

「うーん。だって、大きな戦の前には、小さな戦で慣らすでしょ?」

「そういう考えは無かったんだそうだ。祭りと戦は別物だ、と」

「祭りも戦も一緒だよ。準備が大事」


 僕が呼ばれた理由と立場も少しわかってきた。

 となると、会議中の立ち回りも出すぎないように考えないとね。


「村長さんの家って、ほんと大きいねえ」

「何百年も歴史のある貴族ヤールだからな」


 長屋敷ロングハウスという名前の通り、とにかく横に長い。

 普通の家が4、5軒並ぶぐらいの長さが繋がっている。

 屋根は船を逆さにして被せたような作りをしている。

 たぶん船の建造と同じ技術を使っているからだろう。


 夏だからか、扉も板窓も大きく開け放たれている。

 家畜などは世話をする人員と共に夏の家の方に移動しているのだろうけれど、村長を始め戦士や郎党は長屋敷の方に残っているみたいだ。

 長屋敷はフィヨルド全体を見渡せる高台にあって、村への侵入者を監視し守らないといけないからね。


「僕、長屋敷に入るのは初めて」

「おお、そうか。トールは初めてか。集会は外でするものな」


 100人以上が集まる集会は、先日行われた村のクナトルレイク競技場のこけら落としの際の集会と同じように、だいたい外で行われる。

 そもそも長屋敷がいかに大きくたって、村の人達全員は収容できないからね。


 僕は参加したこと無いけれど、裁判とかも外の集会で行うらしい。

 法的な争いは大勢の目と耳で判断させる、という考え方なのかな。


「どうぞお入りください」


 開け放たれたドアには村長の郎党の1人が門番として立っていて、中に入るように促された。


「うわあ…中はこうなってるんだ」


 窓が空いているせいか、思ったよりも室内は明るい。

 最初の印象は、とにかく天井が高いこと、そしてずらりと並んで吊り下げられているタラ、タラ、タラ!

 天井に何千匹という干しタラが吊り下げられている様は、この長屋敷が来客をもてなす偉い人の応接兼生活空間であるだけではなく、村の防衛やいざというときの食料庫としても機能する防衛拠点でもあることを教えてくれる。


 村長家族だけでなく戦士や郎党、奴隷も加えると二十人ぐらいは長屋敷に住んでいるはずだから、冬の備えだけでも大変な数が必要になるだろう。


 冬の冷たい風で干されてカチカチに乾燥したタラは、単なる保存食というだけでなく交易品としても優秀で、通貨の代わりにもなる。日本の中世で例えると米みたいな位置づけの食品と言えるかもしれない。


 名主の屋敷が米俵で一杯になっている、と日本風に変換して考えればそれほど奇妙な光景でもない。


「あ、猫だ」


 干しタラが吊り下げられた梁に渡された作業用の細い足場を軽快に走る小さな獣。

 ネズミ取りの猫だ。この村では初めて見た。寒い北方なのに要るんだなあ。

 交易品と一緒に持ち込まれたんだろうか?

 子猫が生まれたら一匹分けてくれないかなあ


「トール、猫を知っているのか?」

「うん、エリン姉が欲しいって言ってたよ」


 これは本当。猫という動物が可愛いらしい、と何処からか、たぶん社交場で噂を聞きつけたのだろうけど、エリン姉が欲しがっているのは事実。

 うちも冷燻魚とか保管している食料が増えてきたから、功利的な面からもネズミ対策に猫が欲しい。


「猫はよく増えると聞くからな。子猫が生まれた際に村長に頼めば、冷燻鮭一匹ぐらいで交換してもらえるだろう」

「ほんと!?やった!」


 猫の去勢とかもしてないだろうしね。増え過ぎたら人にあげるか、外に放たれて…いや、考えるのは止そうか。

 うちに来れば猫かわいがりしてたっぷり餌をやるぞ。


「…まだ誰も来てないね」

「偉い方々は後から来るのさ」


 ちょうど良く暇な時間が出来たので、長屋敷の中を見回して、父ちゃんにいろいろと教えてもらう。

 農家の我が家にはないものがあって、好奇心が疼くんだ。


「床はうちと同じで土に毛皮敷いた感じなんだね。板とか石かと思ってた」

「石は冷たいからな。板材の床は、大きな貴族はそうしていると聞くが」

「あれは?壁に大きい布がかかってるね」

「タペストリーだな。大きくはないが高価だ。交易品だろう」

「大きい織り機が壁に立てかけてあるけど?」

「奴隷用の織り機だな。帆を織るのに使う。しっ。貴い方々がきたぞ」


 僕達が壁際のベンチに座わって話しながら待っていると、村の有力者達、ついで村長がやって来た。

 有力者達の数は3人。以前、塩作りの際に村長に着いてきた取り巻きの人達だ。

 腕を吊ってたおじさん、片目が髪で隠れてるおじさん、のっぽのおじさんの三人衆。

 彼らは僕と父ちゃんから見て、上座側のベンチに順に座った。

 村長は王様席っぽく、上座の真ん中に置かれた椅子に座る。

 つまり僕と父ちゃんが末席になるわけだね。


「参加者は集まったようだな。それでは会議を始める」


 村長さんが厳かに会議の開始を宣言する。

 僕は会議というから円卓を想像していたのだけれど、貴族が諮問し平民が答申するような形式なのかもしれない。


 王様と家臣っぽい席の配置だと活発な議論は期待できない気がするんだよね。

 円卓という物理環境を整備したアーサー王は偉大だ。


「さて。4ヶ村の子供クナトルレイクを行うにあたり、何が必要で何を準備する必要があるのか。今日は自由に討議してもらいたい」


 村長が自由に討議を、と促したのに対し、偉い人から順に意見を述べていく。


「まずは何と言っても食料であるかと思います。これは必要な分を用意するよう伝えれば良いでしょう」

「道具も人数分を揃える必要があるでしょうな。子供の道具です。それほど時間はかからないでしょう」

「参加者の宿泊は村の家々に分宿させれば良いのではないでしょうか」


 そこで偉い人たちの意見が終わった。

 え?それだけ?

 子供達が来たら泊めて食わせて試合させればいいだけ、とか思ってない?

 いやいや。イベントとしての準備が全然足りないでしょ!


「ふむ…新しき参加者。グリームルよ。なにか意見は?」


 僕が物凄い不満顔で父ちゃんの袖を引っ張っていたのが見えたのか、村長から父ちゃんが意見を述べるように求められた。


「はい。試合には審判が必要かと思います」

「審判か…たしか司法神の仕事だな。わが村から人を出せば良いのでは?」

「それでは公平性が疑われます。我々の子供も試合に参加するわけですから」

「たしかにな…それではどうすれば良いと?」

「大変ですが他の村からも人を出してもらい審判の経験を積んでもらうしかないでしょう」

「なるほど…」


 いや、なるほど…じゃないが!?

 父ちゃんが褒められるのは嬉しいけど。


「確かに。さすが村一番のクナトルレイク巧者だ」

「審判の視点はなかったな」

「ううむ…そういう考えもあるか…」


 父ちゃんが村でクナトルレイクの権威として認められてる!?

 いやでもそうじゃない。そういうミクロなことじゃないんだよ。


 大規模イベントなんだから、最も大事なものが欠けてるでしょ?


 予算!

 スケジュール!

 参加者名簿!


 これらの情報がなかったら、そもそもイベント運営なんて出来ないでしょ?

 土台と前提条件がハッキリしないなんて運営以前の問題だよ!


 いや、でもここで僕が「イベント実施に必要なのは予算とスケジュールと参加者名簿です!」とか言い出したら不自然極まりないし、どうしたものか…。


「…何か?」


 僕の焦燥感に駆られた表情が気になったのか、村長のご下問を受けてしまった。

 …どう答えよう?

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― 新着の感想 ―
おお〜主人公の正念場が『競技大会の開催プロジェクト』って凄い独特ですね。 荒くれ者の村同士が仲良くなれるかどうかが主人公の発言にかかってくる!まずその前にどうやって発言するのか!?目が離せません!
お父ちゃんに麻酔モリを刺して背中に隠れて裏声で提案しよう!
もう取り繕うとしないでやるだけやったら?
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