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転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します  作者: ダイスケ


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第23話 熱狂のクナトルレイク

 小さな子が懸命に走った。ボールを受ける動きだ。

「いいぞー!走れ走れ!パスだパス!」

 敵陣に向かい走っている子に向かって味方がパスをする。

「いいぞ!よく見えてる!キャッチだキャッチ!!」

 しかしゴール前に送り込まれたボールを、別の子が懸命に腕と棒を伸ばしてカット!

「いいわよ!いいカット!カウンター!走ってー!」

 逆に棒をうまく使ったロングパスでカウンターをかける。

「取らせるな―!」

「頑張れー!!」

 ボールの落下点に集まった子供達が懸命に棒を使って自チームのボールにしようと競り合う。

 ブブーッ!

 ボールが、サイドラインを超えて審判の角笛が鳴らされる。

「ああー!ここからここから!」

「押し負けるな―!」

 サイドにボールが出されると、ボールを真ん中においてラグビーのように団子になって押し合いになる。

「押せー!押せー!!」

「押してー!押して―!!!」

「押せー!負けるな―!押せー!!」

 観客の声援が最高潮を迎える。



「…なんだこれ」


 この村ではクナトルレイクが大人気なのは知っているつもりだったけれど、たかが子供の試合で、ここまで村中の大人たちまで大熱狂していると引いてしまう。


「父ちゃん、このゲームのどこが面白いの?だって小さい子のゲームでしょ?」


 漁を終えた父ちゃんまで、他所の子が出場している試合を一生懸命に応援している。僕は出場していないのに。

 僕はなぜここまで大人達が熱狂するのか理由が知りたくて、最も身近な支持者サポーターである父ちゃんにインタビューしてみることにした。


「トールには、まだクナトルレイクの魅力がわからないか?そりゃあ小さい子のゲームだけどなあ、見るべき点が多いんだ」

「見るべき点?」


 熱狂的クナトルレイク支持者の父ちゃんは、ときおり歓声をあげつつ試合から目を離さないままに答えてくれた。


「そうだ。まずゴールとプレーする場所がハッキリしているのがいいな。誰が考えたのかは知らないが、攻めているのか守っているのかが、見ていてい分かりやすい」

「なるほど」

「敵陣深くまで攻めていても、ロングパス一発で逆転の可能性があるのもいい。それでゲームに緊張感と魅力が生まれているんだ」

「…なるほど?」


 ちょっと父ちゃんの熱狂的支持者ならではの分析力が怖い。


「ボールアウトした際に、押し合いから始まるのもいいな。シールドウォールは戦争の基本だ。戦友と盾を並べるのは戦士の名誉だ」

「じゃあ、盾があった方がいい?」

「そうだな。全員には要らないかもしれないが、戦争では半数以上が盾持ちとなってシールドウォールを作るからな」

「なるほど」

「なにより、司法神《審判》を置くというのは画期的だな!天才の思いつきだ!ゲームの進行がダレない。試合時間が決まっているから全力でプレーできるし、言い争いが減ってゲームの進行がスピーディーだ。大人の試合にも導入したいな!」

「…へえ」


 現代サッカーやラグビーのルールって、数百年間の試行錯誤で安全で面白くするための知恵と工夫が詰まっているものなあ。

 現代競技のルールを現地のゲームに導入したら、そりゃあ面白くなるよね。

 ここまで大人達が熱狂するのは、流石に想定外だったけど。

 あと父ちゃん、そのルールを考えたのは僕なんだ…。

 とは言い出せなかった。

 なんかますますクナトルレイクに熱狂して家で母ちゃんとエリン姉に白い目で見られる光景が見えたから…。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 そして僕はクナトルレイクをもう少しだけ改良することにした。

 まずは熱狂的クナトルレイク支持者の父ちゃんの意見を入れて、柔らかい革で縁取りした小さな木の盾を支給することにしたんだ。


「チームがどっちか分かりやすい方がいいよねー」


 盾は使いまわしてもらうことにして、2色に分けた。

 赤地に黒い烏を描いたフギンのチームと、青地に狼を描いたフェンリルのチーム。

 絵は得意じゃないけど、村長の家の壁とかに描いてあった絵を思い出しながら頑張って黒で紋章っぽいのを描いた。

 チームエンブレムってやつだね。

 色のついた顔料は高いんだけど、夜に家で造っていたら父ちゃんがどこからか調達してきてくれた。


「ちょっと貸してみなさい。手伝ってあげよう。なるほど、持ち手を通せる穴は合ったほうがいいな」


 僕が小さい手で作業しているのを見かねたのか、父ちゃんは丸い盾を切ったり持ち手を作るのも手伝ってくれた。

 正確に言えば、途中から作業は取り上げられてほとんど造ってもらった。


 その間に、僕は大きな黒いボードを作る。

 得点記録のためのスコアボードだね。

 タールと鉄渋を塗って、白い粉チョークで得点を描くんだ。

 やっぱり試合をするなら得点がわかった方がいいよ。

 ただ、大きくて平らな板は高い。板も手作りだからね。

 だけど欲しい理由を話したら、これも父ちゃんがどこからが調達してきてくれた。 

 父ちゃん、大丈夫?母ちゃんにあとで怒られたりしない?


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 そうして道具とルールの改善が加えられたクナトルレイクのゲームは、ますます盛り上がるようになったわけで。


「今日からは盾をチームに支給します。赤いフギンの盾と青いフェンリの盾ね。ボールアウトで押し合うときは、盾持ちの人達同士で並んで押し合います」


「うおーっ、すっげー!」

「かっこいいー!」

「おれ、フギンがいい!」

「フェンリルもかっこいぞ!」


 まず盾を支給された子供達が、もの凄く喜んでくれたのが嬉しい。

 盾というのは、大人の戦士の証。

 例えゲーム用の小さくてチャチな盾であっても、盾は盾。

 大人として認められた、と誇らしく掲げていた。


「ぼくもたてほしかった…」

「たてたりない…」


 盾を持って押し合いに参加するのは体が大きい子になる。

 盾の枚数も全員に行き渡るだけはないからね。

 順番で使うのがいいと思うけど、戦術的には盾を持っていない子にも大事な仕事がある。


「盾を持っていない子は、ボールを素早く取ったりパスしたり走る役割です。押し合いで空いた敵陣へ走り込んでパスを受け取れば点が取れます」


 フロントラインとバックラインの概念を説明すると、盾を支給されずに下を向いていたこともぱっと明るい顔をして上を向いた。

 実際、戦争でよく使われる鉄床かなとこ戦術では、盾とほこの役割分担が大事だからね。

 盾を持っていない子は、機動力を活かして鉾の役割を果たして欲しい。


「それと、得点は黒い板に表示します。1点とるごとに縦線を引いて、五点目で斜めの線を引きます」


 欧米のタリーマーク式だね。個人的には正の字で記録したいところだけど、このあたりでは漢字の素養はないから仕方ない。


「ふーん?」

「まあべつに…いいんじゃない?」


 小さい子たちは、得点の記録、という効用があまり分からないみたいだ。

 まあ試合が始まったら嫌でもわかるさ。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


「押せー走れ―!時間がないぞーっ!」

「よしよし、マイボールだ。押せーっ!押し勝て―っ!!」

「パスだパス!よーしロングパスが通った―っ!逆転!!すごいぞ!勝った!」

 試合終了を告げる角笛と共にあがる大歓声。


 時間制限と審判を配置したことによるスピーディーな展開。

 フロントラインとバックラインの機能的な配置。

 得点を記録することにより発生する、時間ギリギリでの勝利という快感。


 改良されたクナトルレイクは、村人たちをますます熱狂させた。

 小さい子たちのゲームに興奮した大人が乱入するのを何度も止めないとならなかったほどだ。

 まさかフィールド警備員を配置するハメになるとは…。

 ここは南米のサッカー場か?


「うーん…ちょっとやりすぎたかも?」


 その後、村の大人達から寄せられたうず高く積もった大量のクナトルレイク関連の道具の注文を前に、僕はちょっとだけ反省した。


2章終わり


次回は、トール大王のサーガ回です

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― 新着の感想 ―
ラクロスとラグビーを掛け合わせたようなルールの競技なのかな?
フギンリーグとフェンリルリーグの優勝チームがトールステイン杯を争う未来が見える
気がついたら村の戦士が軒並み強くなってそう
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