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転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します  作者: ダイスケ
第7章:トールステイン大王伝記征討編

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第101話 僕が準備すること 7歳 春

 村をあげての大民会の準備で、全体に浮足立っている感じもするけれど、僕は自分の担当の仕事をする。

 僕の担当は、木製品製造業。例によって木工職人に進捗確認をして相談にのったり、遅れていたらしばき上げるのが仕事なのである。


「しかしよう、なんだか血が騒いでくらあな」


 村長達に贈るための戦闘用の盾を発注したときの第一声がこれ。

 木工職人よ、あんたも蛮族の血が騒ぐのか。


「戦士の盾は、ちっと木材を厚めにしておいたから重いぞ。振り回したり長い時間を掲げるには向いてねえ」

「うん。それでいいよ」


 僕は試作品の戦士の盾をチェックしながら、量産の許可を出した。

 想定される戦場は大民会の平原であるし、基本は夜間の待ちの戦となる。

 篝火を背にして円陣を組み、置き盾をするので重さは問題になりにくい。

 少数の奇襲に対する短時間戦闘になるだろうから、会戦のように長時間の戦への配慮も不要。重量のある盾は打撃武器にも使える。


 もとの製造計画では交易用の規格化された樽とクナトルレイク用の盾だけだったのに、戦闘用の盾も作ることになったので木工職人の工房は弟子も含めて大忙し。


「それで、忙しい所悪いんだけどさ…」


 それに加えて、焼印のルーン文字をフギンの形に固定するための木製治具も発注する。

 僕が書いたみたいに角度を変えながらフギンの形になるよう何度も焼印を押すのは面倒だし、焼印の形も安定しないからね。


「ずいぶん妙なことをするんだな。そんな印を押すなんて聞いたことがねえぞ」

「偽物対策だよ。この村で作った証明さ。逆に質が悪いものを作れば、村の悪い評判が広まっちゃうから気をつけてね」

「例の冷たい煙の鱈か。そいつは責任重大だな」

「あ、食べてるんだ。味はどう?」

「美味いな。保存食とは思えねえ」


 冷燻の鱈は、完成品の品質検査をするようにして、下位の2割はハネるようにしてもらっている。その2割が村内で流通しているんだね。


 僕が下位2割をはねるようにしたのには、2つの理由がある。

 1つは製品の品質を保つため。高価格ブランドの評判をとるためには「1つたりとも不良品は売らない」と神経質なぐらいこだわったほうがいいからね。


 もう1つの理由は、村でも冷燻鱈を必ず食べられるようにするためだ。

 冷燻の鱈が交易品として村の外で良い値段で銀貨になるのは確かだろうけれど、それが行き過ぎて、カカオ栽培をしている農家がチョコレートを食べたことがない、なんて状態になるのは嫌だからね。


 僕は村の人達が豊かになってもらいたくてやってるんだから。

 美味しい鱈を作って売っているのに、作っている地元の人が食べられないなんて変じゃないか。


 鍛冶職人に仕上げてもらった、大文字と小文字のルーン文字を使い、2種類のバインドルーンのフギン文字焼印を押す工程自体も木工職人にお願いしたら「また弟子を雇わにゃならん…」とか愚痴ってた。

 僕も村内の雇用促進に貢献できて嬉しいよ。


「じゃあ、盾は焼印まで終わったものから持ってきてね。絵はこちらでやるから」

「おう」


 村内で絵を描ける人は見つからなかったので、仕上げの絵付けは結局僕がやってる。

 絵を描くとかいう無駄飯ぐらいの文化的技能は、なかなか小さな村では育ちにくいみたいでね。


「トール、こんな感じでどう?」

「おー、上手!エリン姉、才能あるね!」


 でも、最近は家でエリン姉にも手伝ってもらってるんだ。

 下絵は僕が書いて、後工程の顔料での色塗りなんかをやってもらっているんだけど、意外と手先が器用で丁寧なんだ。

 この分なら、下絵を描くことも任せられるようになるかもしれない。


「最近はね、薬草の絵を写すのも任されてるんだから!」

「すごいね!」

「でしょう?」


 エリン姉はルーン文字が書けるようになったので、村長婦人が編纂している薬草羊皮紙の写本作業を手伝っているそうなのだけれど、挿絵の薬草も写すのを任されるようになってきたのだという。


「それでね、村長婦人《シグリズ様》が書いてる薬草羊皮紙の解説ルーン文字がすっごい綺麗なの!文字と絵が一緒になった感じでね!」

「へー」


 そういえば、母ちゃんが試作のときに単位がわからなくて困ってたから、鍋の大きさとか入れる水の量、草の重さ単位をアラビア銀貨の重さ単位に統一したら便利かも…と口を滑らせたら「書き直しますね!」とかキレてたなあ。

 キレながらもちゃんと直してるんだから偉いよなあ。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


「うーむ…」

「父ちゃん、どうかしたの」


 コーチ業を終えて家に帰ってきた父ちゃんが、少しむずかしい顔してた。


「他の村からクナトルレイクを教えてくれないか、と招聘が来ていてな…」

「あー。あの船、そういう話だったんだ」


 最近は村にも、ときどき小さな船で外の村から人が来るようになった。

 東の大きな湾の街から来てることもあれば、近隣の村からのこともある。

 海が荒れていなかったら、フィヨルド間の行き来は船が一番早いからね。


「今からって…遅くない?」

「そうだな。とても無理だ」


 夏に向けてクナトルレイクの訓練を始めたのは良いけれど、あまりうまく行っていなから焦っているのかな。

 遠方の村からの依頼なんかもあって、こんな時期に父が長期にわたって村を開けられるはずもなく。


 そもそもからして、我が家でも農作業にも支障が出そうな有り様なので、去年来てくれた奴隷の人に手伝ってもらってるぐらいなので。


「村に来てもらうというのもねえ…」

「今は無理だな」


 今の季節は食料もゲストを大勢養えるほど余ってるわけじゃないし。

 というわけで、事情を告げて断ってる。

 可愛そうだから、使者の人には少しだけ冷燻の鱈を持たせたりしてるらしい。


「だけどね。良い知らせだとも思うんだ」

「そうなのか?」

「だって、クナトルレイク大会をやることを諦めてない、ってことでしょ?」


 大民会の準備運営がグダグダなので、クナトルレイク大会の開催自体を諦めることもあり得ると思ってたんだけど、そうなると準備が全て無駄になってしまう。


 僕は怪我人が出ないなら良いと思うけれど、村の男衆はガッカリするだろう。

 そんな事態にはならなさそうで何よりだね。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


「このあたりでいいかな」

「そうだな。ようし早いところ掘っちまうぞー!」

「おう!」


 村の男衆にはクナトルレイク訓練の後で横穴を掘ってもらっている。

 体力錬成の一環として頑張ってくれるから工事の進みが早くて助かる。


 横穴はフィヨルドの影になってる場所に、大麦と酒の低温倉庫を設けるためだね。

 掘った穴は木材で補強して、交易で仕入れる大麦の低温保管庫にして、将来的には酒蔵にもなる予定。

 交易品で大麦を仕入れるのは結構先になるから、まずは村で作る薬草蜂蜜酒が最初に保管されることになるのかな。


 酒蔵の前には、番人小屋も建てられる予定。

 番人は小屋を建てて女衆が交代で務めることになるそうで。

 酒蔵に厳重に鍵はするけれど、人がいなかったら壊して侵入しそうだし。


 男衆が「我こそが」と小屋の番人に志願していたそうだけれど、どう考えても頻繁すぎる品質検査の試飲で酒樽が空になる未来しか見えないので、却下されたみたい。

 それで酒の醸造は女衆の仕事だと突っぱねた、とも聞いてる。

 

 お酒の力、ってすごいなあ。

 お酒を巡って村の権力に地殻変動が起きている気がする…。

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