第43話 : 送葬者の礼法
『巨大な機械が悲鳴を止めた時、慌てて歓声を上げるな。耳を澄ませ。その耳を弄するほどの静寂こそが、神が息を止めている瞬間なのだから』
——『荒野の拾荒者手記:生きている鉄について』、無名氏 著
青い光は、温もりをもたらさなかった。むしろ、それは病的で過剰なまでの鮮明さを伴って辺りを照らし出した。
かつて艦橋を満たし、電気ドリルのように脳漿をかき回していたあの高周波の金切声は完全に消失した。代わりに訪れたのは、耳鳴りがするほどに重苦しい死寂だった。
巨大な生命維持ポンプだけが、極めて緩慢で重い排気音を漏らしている。それはもはや機械の稼働音ではなく、冬眠に入った巨獣が数分に一度だけ繰り返す、心細い呼吸のように聞こえた。
無小姐は薇から少し離れた場所に立ち、両手で自分の肩をきつく抱きしめていた。
影から踏み出し、青い光を浴びてはいたが、この唐突な静寂がかえって彼女に深い恐怖を植え付けていた。気流に敏感な風民にとって、先ほどの風は「悲鳴」であり、理解可能な苦痛だった。だが今の空気は流れを止め、澱んだ死水と化している。彼女にしてみれば、真空の缶詰の中に放り込まれたも同然だった。
「……止まったわ」無小姐が震える声で呟いた。その声は落ちる羽のように儚かった。
薇は何も答えなかった。
銃身が熱で空気を歪ませている「送葬者」を構え、彼女はかつて自らの手でブチ抜いた肉質の扉へと警戒しながら歩み寄った。
扉の外の廊下には、数十匹の「白噬者」がひしめき合っていた。
人間の脊椎骨と廃油圧管を繋ぎ合わせたあの恐るべき生物たちは、今や魂を抜かれたかのように、その場で硬直していた。
撤退もせず、攻撃もしてこない。「痛覚命令」という駆動源を失い、ただの困惑した骨とパーツの山に戻ったのだ。
薇は銃口を伸ばし、最も近くにいた一匹を試しに小突いてみた。
怪物は質の悪い石膏像のごとく、突かれた反動で揺れ、乾いた「カシャリ」という骨の摩擦音を立てた。そして再び、死のような静止へと戻る。
「……気味が悪いね」
顔に黒い油と乾いた血をこびりつかせた薇が低く毒づいた。嗄れた声の中に、隠しきれない寒気が混じっている。
「噛み殺されるより、このザマの方がよっぽど吐き気がするよ」
それは停戦というより、集団脳死に近い光景だった。
脅威が去ったことを確認すると、薇は銃を背中へと放った。
彼女は振り返り、青い光の中に浮遊する巨大な水槽を見つめた。その眼差しは変わっていた。
獲物を見る狩人の目でも、宝を見つけた強盗の目でもない。
まだ息のある希少な標本を前にした外科医のような、強欲と畏敬、そして極限の集中が混ざり合った瞳だった。
「エンジン」
薇が短く口笛を吹いた。
ずっと落ち着かなげにしていた機械犬が、隅から這い出してきた。そいつ自身もこの場の葬儀のような空気を感じ取ったのか、いつものような黒煙を吐くことはなかった。静かに油圧の爪で床を掴みながら、水槽の下へと歩み寄る。
「……考古学者、手を貸しな」
薇はベルトから工具バッグを外した。感情を排した、冷徹な声だった。「優しく扱いな。あたしたちはスクラップをバラしてるんじゃない。移植手術をしてるんだ」
それは確かに「手術」だった。
巨大な生体脳はそこに「置かれて」いるのではなく、そこに「生えて」いたからだ。
血管を模した数千本の神経束が脳の底部に密集して繋がり、ガラスの壁を貫いて下の台座へと深く根を張っている。どの管の中にも、発光する体液が流れていた。
薇は特製のゴム手袋をはめ、工具バッグから骨鋸に似た振動ナイフと、黒光りする数巻の「防腐黒脂皮」を取り出した。さらに、傷だらけのレンズがついた技師用ゴーグルを額にセットする。
「支えてな」薇が簡潔に命じた。
翰文は喉を焼く劇痛に耐えながら前に進み、冷たいガラスの壁に両手を添えた。
間近で見るその脳は、いっそう老いさらばえ、生々しい質感に満ちていた。無数の皺が呼吸に合わせて微かに脈打ち、ガラス越しに伝わる振動は、この脳を巨大な一つの心臓へと変貌させていた。
薇は躊躇なく刃を入れた。
振動ナイフが最初の神経束を切り裂いた瞬間、ジィィという鋭い音と共に噴き出したのは火花ではなく、生臭く甘い臭いのする淡黄色のリンパ液だった。管が傷ついたミミズのように激しくのたうつ。
「……痛がってるわ」
背後に控えていた無小姐が不意に口を開いた。
彼女は近づこうとはせず、ただ溢れ出す液体を凝視していた。それがオイルではなく、悲しみの具現化であるかのように。
「……空気の震えが……泣いているわ」
薇の手は止まらなかったが、眉間に皺が寄った。
「薬を塗りな」薇は振り返らずに翰文へ叫んだ。「腰のポーチに緑色の軍用ゲルが残ってるだろ。そいつを切り口に塗り込め」
翰文は一瞬呆気に取られたが、すぐに意図を察した。火傷用の「戦術冷却ゲル」を取り出し、指で一塊掬い取ると、痙攣する神経束の断面に塗りつけた。
ゲルが漏れ出したリンパ液と触れた瞬間、ジュゥゥッという化学反応の音と共に白い煙が立ち上がった。狂ったようにのたうち回っていた神経束は、麻酔をかけられたかのように急速に弛緩し、静まり返った。人間の痛覚神経を遮断するための化学物質が、千年前の神代の機械にも同様に作用したのだ。
その隙に薇は「防腐黒脂皮」を千切り取り、手際よく断面を包み込んだ。
乾いた海苔のような質感の黒脂皮は、パイプの熱に触れると微かな収縮音を立ててタール状の粘液を染み出し、癒着した死皮となって傷口を完全に封じ込めた。
切断。投薬。封口。
空気中には振動ナイフの低いうなりと、ゲルの化学反応による嘶き、そして無小姐の押し殺した呼吸音だけが漂っていた。
接続された管が少なくなるにつれ、水槽の中の脳は不安げに揺れ始めた。
栄養液が運搬の振動に合わせて湿った音を立てる様は、羊水の中で抗う胎児を連想させた。
「……我慢しな、老いぼれ」
薇が誰に言うでもなく、低く独り言ちた。「この扉を出れば、あんたは自由だ」
三十分後。
最後の主神経束が切り離された。
重厚な金属の噛み合い音と共に、エンジンの背負った油圧ブラケットが水槽全体をしっかりと受け止めた。気圧バルブが悲鳴のような排気音を上げたが、すぐに自動で水平が保たれ、貴重な貨物は装甲の上にロックされた。
母体から切り離された脳は、移動式ブラケットの上で孤立したまま、幽かな、しかし安定した青い光を放っている。それはまるで巨大な手提げ提灯のようだった。
薇は腰を伸ばし、額にこびりついた油混じりの汗を拭った。
彼女は手に残った一切れの黒脂皮を見つめ、それから翰文の背負った、ノートが覗くほどの大穴が開いたバックパックに目を向けた。
「受け取りな」
薇が無造作に投げた黒脂皮が弧を描き、正確に無小姐の懐へ落ちた。
「小野猫ちゃん、そこでガタガタ震えてないで、考古学者のバッグを直しな。そいつは冷えれば鋼鉄より硬くなる」
無小姐は虚を突かれたように、まだ熱を帯びた黒脂皮を抱えた。彼女は薇を見、それから翰文の背中の穴を見た。
彼女は反論せず、黙って歩み寄った。
帆布の破れ目に黒脂皮を押し当てる。黒い有機質が本来の繊維と高熱で「交錯」し、微かな結合音を立てる。
数秒後、穴は消失した。代わりに出現したのは、皮膚のようにザラついていながらも、破壊不能な黒いパッチだった。
補修された箇所は、今や修理跡というより、バックパックに生じた「黒い傷痕」のように見えた。
荷物の始末がつくと、薇の視線は下方へ、翰文の剥き出しになった惨憺たる両足へと落ちた。
もはや皮膚はなく、緑色のゲルにまみれた赤黒い肉が露出し、取りきれなかった焦げたゴムの残骸がいくつか食い込んでいる。歩くどころか、立っているだけで全身が震える惨状だった。
「座りな」薇が地面を指した。
翰文に抗う気力はなく、言われるがまま冷たい金属の床に腰を下ろした。
薇が屈み込み、手には最後の半巻となった黒脂皮を握っていた。彼女は痛むかどうかさえ聞かず、壊れやすい精密部品を梱包するかのような手つきで、黒い肉膜を翰文の足裏に直接巻き付けていった。
「少し熱いよ。耐えな」
黒脂皮がゲルと接触し、微かにジリリという反応音を立てた。翰文は呻き、足指を激しく丸めた。だが直後、その熱は急速に冷却され、柔軟だった薄膜は収縮し、硬化し始めた。
数秒後、翰文の両足は分厚く堅牢な黒い物質に完全に包み込まれた。それは足の輪郭に完璧にフィットし、まるで新しく生えてきた、黒光りする「蹄」のように見えた。
薇は硬化した黒い殻を指の関節で叩いてみせた。コンコンと硬質な音が響く。
「即席の義肢さ」薇は立ち上がり、手の埃を払った。「そいつがありゃ、強酸の上でダンスだって踊れる。不格好だって文句を言うなよ。荒野じゃこれでも超高級品なんだからね」
「中の薬は三日は持つ。三日経って、こじ開けて薬を変えなきゃ、あんたの足はマジで肥料に変わるよ。……さあ、立ちな」
翰文は足を動かしてみた。痛みがない。
硬い殻が完璧な支持と隔離を提供していた。歩き方はロボットのようにぎこちなくなるだろうが、彼はついに自力で歩けるようになったのだ。
薇は黙って戦術ベストから平たい金属水筒を取り出した。
彼女は蓋を回し、自分は飲まずにそのまま翰文へ突き出した。
翰文が受け取ったのは、濾過された、微かな鉄錆の臭いがする純水だった。カミソリを飲み込むようだった今の彼の喉にとって、それは天上の美酒だった。
彼は顔を仰向け、貪欲に数口飲み込んだ。水流が乾ききった食道を洗い流し、刺痛の後に清涼感をもたらした。
「……ありがとう」翰文が嗄れた声で言った。
薇は答えなかった。彼女は額にあった亀裂の入ったゴーグルを下げて瞳を隠すと、エンジンの金属の脊椎を叩いた。
「行くよ。この腐れ肉が、自分が脳死したことに気づく前にね」
一行は巨大な蒼い脳を押し進めながら、ゆっくりと艦橋を後にし、来た道を引き返し始めた。
爆破された気密扉を再び潜り、あの「白噬者」がひしめく死の廊下を通過しなければならない。
硬直した怪物たちの傍らを通り過ぎる際、無小姐は息を止め、補修された翰文のバックパックのストラップを力一杯握りしめていた。
怪物たちは襲ってこなかった。
それらはただ隊列の移動に合わせて、空洞の骨盤をゆっくりと旋回させ、カチャリと関節を鳴らしながら、この奇妙なパレードを注視しているかのようだった。
青い光輪が、腸道と化した肉質の廊下を照らし出す。
床の筋肉繊維はもはや痙攣せず、弛緩し、灰色に褪せ、組織壊死による酸っぱい臭いを放ち始めていた。
この列車は死にゆこうとしている。
そして今度こそ、本当に死んだのだ。
曲がり角で、翰文は足を止め、空っぽになった円形の大広間を一度だけ振り返った。
そこは漆黒に沈んでいた。
すべてのスクリーンは消えていた。
かつて液体の中に浮かんでいた、あの角ばった繁体中国語のメッセージ――「おかえりなさい、長老」――も、すでに消失していた。
別れの言葉はなかった。
心震える最後の通話もなかった。
千年前の先人が遺したボトルメールは開けられ、中の気体は虚空へと霧散し、二度と捕まえることはできない。
翰文は暗闇の中で数秒間、立ち尽くした。
それから彼は胸に手を当てた。心臓はまだ、重々しく脈打っている。
彼は視線を落とし、遠くで揺れる青い光を見た。
「……大事にするよ」
彼は傍らで待っていた無小姐の元へ歩み寄り、前方の青い灯火を追って、外の世界へと続く、未知と暗黒に満ちた食道の中へと、振り返ることなく足を踏み入れた。
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