死へのカウントダウン
25歳のサラリーマン・佐伯翔太は、ブラック企業で心身をすり減らす日々を送っていた。
そんなある日、全世界同時に「じゃんけんゲーム」が始まる
朝のホームは、いつもより静かだった。
通勤ラッシュのはずなのに、人々はスマホを握りしめ、電光掲示板を凝視している。
佐伯翔太はスーツのネクタイを緩め、汗を拭いながら電車を待っていた。
そのとき、車内アナウンスのような無機質な声が駅構内に響いた。
「これより第7回 世界じゃんけんを開始します。参加者は即時、端末画面を通じて選択してください。」
周囲の空気が一気に張りつめる。
翔太もスマホの画面を見下ろした。そこには、グー、チョキ、パーの三つのボタン。
押さなければ強制的にランダム選択されると警告が赤字で点滅している。
「ま、また始まった……」
隣のサラリーマンが青ざめた声を漏らす。
カウントダウン。
――3。
――2。
――1。
画面が切り替わる。
【第7回 世界じゃんけん結果発表】
【勝者 → 抜け】
一瞬の静寂ののち、ホームにどよめきが走った。
勝った人々はスマホを掲げて喜び合い、そのまま電車に乗らずに駅を出ていく。
もう二度と、この「敗者の列」には戻ってこないのだ。
残されたのは、負けた者と、あいこの者。
つまり――まだ「死」に近づいてしまった人々。
翔太は手のひらを見つめた。
自分は、パーを出して負けていた。
心臓が、ひとつ脈打つごとに重く沈む。
「次は……勝たなきゃ……」
押しつぶされそうな恐怖とともに、彼の一日が始まった。




