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【完結】双子の兄が主人公で、困る  作者:   *  ゆるゆ


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ちーと?




 ルティは自分のぴんくの髪を引っぱった。


 この髪と目の色は、非常に目立つ。


 BLゲームの世界なので、ぴんくの髪はふつうにいるのかと思ったら、カティとルティ以外のぴんくの髪を見たことがない。


 さすがぴんくの髪の主人公だ。



 この目と髪の色を変えないと逃走なんて、絶対無理だ。


 フードで隠してるのが風でめくれて『あ、お前はカティ! ちがったルティ!』だなんて、ありがちすぎる!



 しかし、この世界にコスプレイヤーさん御用達の地味色ウィッグやカラーコンタクトは存在しない。

 ので、魔法を使う。


 髪と目の色を変える魔法は、幻影魔法の一種らしい。水と風の魔法を使える人だけが行えるという珍しい魔法なのだけれど、ココ王国では大切にされている。


 ふつうは1属性の魔法しか使えないから、2属性だとエリート、さらに水と風じゃないとだめという、とってもレアで貴重な存在だからだ。


 そして幻影魔法の主な用途は貴族がお忍びできゃっきゃうふふしたり、冒険したりするためだ。

 めちゃくちゃ希望があるらしい。

 平民もお忍びできゃっきゃうふふしたり、冒険したりしたいらしい。


 平民のなかで魔力のある者、さらに2属性を使える者はとても少ないが、幻影魔法を使える者はひっそりお店を開いても、がっぽり稼げるという夢の職業だ。



 しかし、街の魔法屋で髪と目の色を変えると、そこから足がつく可能性がある。


 ココ王立学園の幻影魔法を使える者に頼んだら、間違いなくコタ殿下に筒抜ける。




 仕方ないので、ルティは自力で幻影魔法を習得することにした。


 氷魔法を使えるルティは、すぐ凍ってしまって不得手なのだが水魔法も何とか使える。あとは風だ。


 風魔法を習得するなんて無茶すぎるが、幻影魔法に求められるだけの、わずかな風の力をもらうなら、何とかなるかもしれない。



 今こそうなれ、主人公の双子の弟チート──!



 ……あるのかな。


 いや、ふつうないけど。


 あってくれ、頼む──!



 しばらく頑張ってみて、無理なら街の魔法屋に駆けこもう。


 その間に、両親はトロテ王国へと出国してくれるはずだ。





 ルティのぴんちに、両親の行動は迅速だった。


「トロテ王国への荷運びの仕事をもらってきた!」


「国境封鎖も通れるぞ、これでトロテへ行ってくる!」


 荷運びの仕事にかこつけて、自分たちの家財道具までちゃっかり持ってゆくらしい。さすがルティとカティの両親だ。



「いってらっしゃい、気をつけて!」


「ルティもな!」


「がんばれ、ルティ!」


 生まれてはじめて両親と離れるさみしさに、ちょっと泣いてしまったルティは、目をぬぐって見送った。



 カティがいなくなり、両親もいなくなったちいさな家は、おおきく見えた。


 ──トトも、いない。



 ひっそりした家で、ルティはひとり風魔法の習得に心血を注いだ。


 強権に圧されて仕方なく王子殿下の伴侶(予定)を承諾した振りで学園に通い(もちろん『はい』とも『いいえ』とも言ってない! こわいから!)あとはぜんぶ魔法の修練だ。



『トロテに入った。カティがすぐ迎えをよこしてくれるらしい。もう大丈夫だぞ!』


 両親の文をもらった夜、ひとりきりの家でルティは全身全霊で魔力を注ぎこみ、幻影魔法を発動する。



「お願いします、水さま、風さま……!」


 精霊さまに祈りを捧げたら、身体のまわりに青と緑の光が舞いあがる。



 パァアァア──!


 あふれる光につつみこまれたルティは、思わず目を閉じた。



 あたたかな魔力が、髪を、瞳を、ゆうるりなぞって、消えてゆく。




 そうっと開いた目に映るのは、栗色に揺れる髪だった。










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