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衝撃の事実ー魔王討伐の真実

 あまりの疲れた表情のカイにそれ以上触れるべきではないと察したベルティーナは話題を変えることにした。

 そして気になっていたことをレイモンドに尋ねた。



「魔王になってしまったことはわかりましたが、どうしてそれが聖女を招くことにつながるのですか?」


「先ほども言ったが、私は魔王になりなくてなったわけではなかった。だからもちろん私は魔王にはならぬと皆に言ったのだが……」



「でも魔王を倒した魔族が次の魔王になるのですから、それは無理なのでは……?」


 マーラの言葉にレイモンドが眉を寄せて頷いた。



「ああ。皆が私以上に力のあるものはないのだからと無理やり魔王にされてしまった。何もしなくてもいいからと言われたのだが、結局あれこれさせられるハメになってな」



 レイモンドが当時を思い出したのか疲れたような表情になる。




「だから思ったんだ。早く倒されて魔王を辞めてしまおうと!」


「え……?」


 魔族の中での感覚がどうなのかはわからないが、それでも自分から倒されたいと願うなど、人間では考えられない。

 ベルティーナが感覚の違いに困惑しつつ、レイモンドを見つめていると、やっと立ち直ったカイがベルティーナにこっそり告げる。



「ラモン様が異常なだけで、普通なら魔族であっても自分から倒されようなど思いませんよ」


「そ、そうなんですね……」



 やはりレイモンドの感覚がだいぶずれているのは間違いないようだ。

 ベルティーナが若干頬を引き攣らせながらレイモンドを見つめると、全くそれには気づいていないレイモンドが悲しげな表情ではーっとため息をもらす。




「しかしどれほど待っても私を倒せるものは現れなかった……」


「現れなかったというのは魔王に挑もうとするものがいなかったのですか?」



 ベルティーナが尋ねると、レイモンドはいいやと頭を横に振る。




「挑む者は現れたのだが、皆弱すぎたんだ……私は倒されようとワザと攻撃を受けたのだが、傷一つつけてもらえなかった……」


 レイモンドが悔しげな表情を見せる隣で、カイがぶんぶんと頭を横に振る。


「いやいや! 違いますよ! ラモン様が頑丈すぎるのですよ! 挑んできた者の中には先代魔王に匹敵するような者もいました。それなのにワザと攻撃を受けに行って無傷だなんて……誰だって心が折れますし、噂を聞いた者は誰も挑もうなんて思わなくなりますよ」



 彼らの間には相当な認識のずれがあるようだ。

 しかし今までの流れから、おそらくカイの言っていることが全面的に正しいのだろう。

 ベルティーナは苦笑いを浮かべながらレイモンドに「そうなんですね……」と返した。




「だからそれならば、自分で自分を攻撃してみようかとも思ったのだが、やはり自分自身に全力の攻撃を放てる自信はないし、失敗したら結局痛い思いをするだけで終わるのではと思ってな……途方にくれていたんだ……しかし、ちょうどそんな時に耳に入ったのが聖女の話だったんだ」


「聖女の話ですか?」


「ああ。元々魔族は聖属性魔法には弱く、他の魔法より格段にききやすい。その上、聖女に浄化された者は痛みも感じず、穏やかな表情で静かに消えると聞いて、もうこれしか無いと思った」



 自分を倒そうという者をこれだけ嬉々として語れる者が一体他にいるだろうか……

 レイモンドとの感覚のずれに戸惑いつつもベルティーナは何とか「へぇ〜な、なるほど……」と頷きながら、引き攣った笑みを浮かべる。



「だいぶ引かれておられるようですけど……まぁこのような経緯でラモン様は聖女が魔王城に来るように仕向けられたのです。なので、聖女に対して憎しみや恨みなんてものは全く持っていらっしゃいません」


 カイが頭を押さえながらも、やれやれというように告げる。

 少しでも主人の印象をよくしようと考えているのだろう。

 しかしここまでぶっ飛んだ考え方だと、どうフォローしていいものか思い浮かばないのだろう。



(彼ってきっと前世からずっとレイモンド様に振り回されているのでしょうね……)



 かわいそうににという哀れみの視線を向ける。


 しかし今話していたことが本当なら疑問が残る。

 ベルティーナは気になっていたことを尋ねた。




「もしそうであるなら、どうして魔王城にいた四天王のうちの二人はこちらに攻撃してきたのですか?」


「ああそれは……」


「私が提案したのですよ。誰とも対峙することなく魔王城の最上階までスルスル行けるというのはおかしいでしょうし、何か罠があると思われませんか?」


「た、確かにそれはそうかもしれません……で、でも魔王に聖女の浄化の力を使わせたいだけであれば、わざわざ戦闘をしなくてもよかったのでは無いですか?」


「ではもし、魔王城に攻め込んだ全員が怪我もなく、戦闘による体力や魔力の消耗もなければ、魔王を倒した帰りに出くわした魔族や魔物をどうしました?」


「それは討伐して……」


「でしょうね。だからですよ」


「この計画は私のわがままだからな。他の者たちを危険に晒すことはできない」



 そういった感覚はあるのかとベルティーナは少し不思議に感じながらも、やはりレイモンドも魔王ラモンも本質的には変わらないのかもしれないと思う。


 レイモンドは滅茶苦茶ではあるが、優しいところがあるのもよくわかっている。

 騎士団での訓練の時、話を止められ不機嫌ではあったが、他の騎士団員に負傷者を救護室に運ぶよう指示していたし、街でアベルとフランに出会った時も子どもたちを当然のように教会まで送っていた。


 冷血な者であれば、自分より爵位が下の負傷者など気にもかけないだろう。

 そして貴族であれば、孤児の子どもなど気にとめない者がほとんどだ。

 自分から手を繋ぎ教会まで歩いて送り届けるなど普通あり得ない。

 ベルティーナは十和の記憶があるからこそそれを普通ととらえるが、こちらの常識ではあり得ないことなのだ。



 そして先ほど聞いた魔王の他の者を傷つけないようにという思い……

 もっと早くにラモンの性質を知れていたなら、あの戦闘は必要なかったのかもしれない。

 そんな今更どうしようもないことを考えていると、マーラが震える声で叫んだ。

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