話の中心の筈なのに蚊帳の外。
「シーカージン、お前は何をしようとしているのか理解しているのかね?」
皆様おはこんばんちわ(死語)シーカージンです。ワタクシは現在ギルド二階の応接室に呼び出され、ギルドマスターから詰問を浴びております。
相変わらず窓もなく、ちょっと雰囲気が重いというか淀んだルームに気分がドヨンとしそうになりますが、今回は横で朱音さんがニパーとしつつシッダウンしてますので、この前より少しだけ雰囲気が明るk ────
「アポなしで呼び付けるだけでも無礼な行いであるのに、加えて封印と防音が施された部屋に通すとか、死にたいですか人間」
明るくNEEEEEE!? むっちゃ喧嘩腰ィ!? いやなに笑顔で殺す発言してんの朱音さん! ほらギルマスもポーカーフェイスが微妙に崩れて口元ピクピクしてるし!
「えと、何をしたと聞かれれば、PT申請に来ただけですとしか言えませんが」
「確かに、お前の攻略ペースだともう中規模ダンジョンの事を考えなければいけないのは理解できる。そして"元始の迷宮"では中層以降に潜ろうとすればソロではギミックが解除できないからPTを組むのが必須と言えよう……」
「え、何それそんなギミックがあるの?」
「"元始の迷宮"で中層以下へ降りる為には通路を塞いでいる門を開く必要があります。まぁ手順は簡単で階層の端と端にあるギミックを二つ同時に作動させるだけなのですが」
「おっふ、成程、そりゃソロじゃ突破できんわ。てかそういうギミックてもしや…… 二人以上のパターンもあったりする?」
「最小は二人から、最大は六人まで。つまり上限がフルPTまで要求されるパターンが存在しますが、まぁその時は物見衆の誰かを臨時で引っ張って来ればいいだけですから大丈夫ですよ」
「ちょっと待ちたまえ! "森の民"が六人一緒に行動するだと!?」
「何ですか横から会話に割り込むなんて失礼ですね。それにPTのリーダーはジン様ですのでフルPTを組んだとしても物見衆の数は最大五人ですよ」
「六人が五人になろうが誤差でしかないではないか…… 寧ろその数で攻略に赴いた場合、ルナリス教国の者と迷宮内でカチ遭った時は戦闘になるぞ」
何か物凄く物騒な話を聞かされた気がするのですが、どういう事でしょう朱音さん? え、何かすんごくいい笑顔と言うか、シャレにならない笑顔と言うか、物凄くゾクゾクするので殺気を抑えて下さいオネガイシマス……
「我らは古の約定に従い己から誰ぞを害する事は致しませんよ? たとえそれが遭魔と戦っている時に背後から騙し打ちをしてくるド腐れ教国の者であったとしてもです。ただまぁ、相手側から先に手を出してくるならその限りではありませんが」
「教国の教義を知っててそう言うか…… 幾ら我が領の自治権が他領より優遇されてるとはいえ、異邦人と森の民複数人が組んでダンジョンに潜るなど、聖戦を誘発する事になり兼ねんではないか! アガルタを戦場にするつもりか!」
「我らに国同士の折衝事を押し付けるのは止めて頂きましょうか。そも此度の計らいは森の長、彌榮よりの計らいでありますから、何ぞ不服があるのならば私ではなく長にお願い致します」
「"森の長"の肝煎りだと…… では、シーカージンは正式に"森の民"に組み込まれる事になると? こんな…… 一方的な力と無法で押し通すやり方、これでは今まで築いてきた互いの信用も何もあった物ではない」
……ねぇちょっと、ものっそシリアスと言うか朱音さんがギルマスに殺気をバチバチに浴びせてるんですが、ボクって事情がわからないんですけど? 何か口を挟めそうな雰囲気じゃないですけど? 寧ろコレ俺の事で話し合ってるんとちゃうんかい、えぇおい?
しかも今聖戦って言いました? うっへ、古今東西宗教絡みの戦争って妄信者が主体になるから止まらないし退かないし、最後の一人になっても辞めない泥沼の戦いになっちゃうんだよなぁ。ところで聖戦って聞くとスーファミのソフト、某なんとかエムブレムにそんな単語がタイトルに含まれたヤツがあったっけなんて事を思い出してしまいましてね?
いや内容はごく普通の王道SLGなんだけどね? ただまぁ…… フィールドでは性別が男なのに戦闘始まったら何故か女グラフィックになってしまう"女装僧侶"とか、女性しか装備できない筈の"いのりの剣"が男でも装備可能になるバグとか目白押しでさ、俺の中でアレはファイアーエム〇レム聖戦の系譜じゃなくてファイアー〇ムブレム女装の系譜ってイメージしかないんだけどそんなの今はどうでもいい話だよね。
うん。
……いや、何か激しく蚊帳の外だし、身の置き場がないからどうでもいい事に思考が行っちゃうんですが。
「一方的な力と無法? 無法と言ったか人間? ……後から入植してきたお前達には分からないだろう、嘗てこの地、アガルタが陥落した時。戦わねば人が死ぬ、街が死ぬ、国が死ぬ。だから、人の為にと! 街の為にと! 国の為にと!! 貴様ら人間に助けて欲しいと請われて戦場に向かった我らが輩を…… 穢れた獣だとぬかし背後から襲ってきたあのクソ共にぃッ!!」
ダンッ! とテーブルを叩けばそこを中心に淡い光の魔法陣が浮かび上がる。床にも、壁にも、天井にも、同様の物が沢山。これは何だと思ったもんだが、そも陣が表出した切っ掛けと、部屋の作りを見れば簡単に答えが出る。
不自然に窓が無いのは外部と隔離すると共に、内部の会話を外に漏らさない為のもんなんだろうってのは造りを見ただけで予想ができた。しかしこの仕掛けは内部で間違いが発生した際に被害を最小限に留める為か? 例えばそう…… 物理的な衝撃を無効化する為とか、この分だと魔法関係なんかも使う事ができないようになってるんだろうな。なんともまぁ用心深い事で。
んで前回も俺はこの部屋に通された訳だが、まぁ現地人が異邦人と面と向かって話をしようとすれば、この程度の備えは最低限必要だろうってギルド側は警戒していたって事か。まぁそんな備えじゃ全然足りないんですけどね?
「何故我らが退かねばならぬ? 何故我らが譲ってやらねばならぬ? 人間よ、何故我らが未だにあのクソッたれ教国を野放しにしていると思う? なぁ人間よ…… こんなくだらない仕掛けを施した部屋になぞ籠ってないで、外に出てアガルタの地を掘り返してみるがいい、そこからは…… 我らが先人が流した血が染み出してくる事だろう」
うわぁ、テーブルに落とした拳辺りからミシミシと音が聞こえてくるんですが。魔法陣もこう、チカチカしてるしちょっとコレヤバくない?
「此処を奪還する為にそれだけ多くの血が流れたのだ。そして我らは先に逝った輩達の血に誓った、深淵から這い出てくる異形を決して後ろに通しはしないと。我らの爪も、牙も、その為にある! ゆえに…… これまでは身の丈に合わぬ欲をかかない限り狂信者共を見逃してきてやったのだ!!」
あー、随分とヒートアップしてきたなぁ。話の内容的に色々と事情もあるんだろうし、何も知らない俺が口を挟んでいい問題じゃないんだろうなってわざと思考を別に向けて見て見ぬ振りしようとしたけど、流石にこれ以上はダメだろ。
「教義だと? 聖戦だと? そんなものは知った事ではないな! もし奴らが我らの往く道を塞ぐというのならば……」
「ねぇちょっと朱音さん…… っッ!?」
ヒィッ!? 目から殺気がビンビンに飛んできてるんですが!? いやいやいや待って、その絶対コロス、慈悲は無い的目力って心臓が弱い人とかお年寄りに向けたらマジで死人がでるレベルですよ…… ヤメテクダサイマセンカ
「何も知らない俺が口を挟んでいいものかどうか分からないんですけど、取り敢えず今日此処へ来た目的は俺と朱音さんとがPTを組みましたよってのを登録する為だったのでは?」
「……」
すっげぇ、ハイライトがOFFになってる目とか初めて見ましたよ。でもまぁ反論がないって事はこのまま話を進めてもいいんですよね? ね? いやマジでキレてる人相手に話をするのっていつも気を遣うんですよ。
こういう場合、話自体が逸れているなら強引にでも元に戻してやればいい。その後ヒートアップした頭が冷えればいいし、敵意がこちらに向くのならこんこんと正論を展開し、納得するまでOHAMASHIタイムを続けるだけだ。なにせ筋としてはこっちのが正しいのだから、文句を言われる筋合いはない。
そんな訳で反論するなら相手が折れるまdもとい納得するまで付き合いますよ? えぇ付き合いますとも。はぁ、GM業務で頻繁に揉め事の仲裁をしてきた経験がこんな処で役に立つとは……
「で、ギルド的に俺と彼女がPTを組みますよって申請は通るんですか? 通らないんですか?」
「……冒険者は人の道に外れた行いをしない限り何物にも縛られず自由である。その権利は誰が認めなくともギルドが保証する。これはギルド憲章の最上位に記されている」
「つまり?」
「シーカージンの行動が犯罪行為に及んでいない場合、ギルドはその行動を阻害する事はできない。という事だ」
「だそうですよ? はぁ、これで用事は済みました。済んだよね? んじゃ朱音さん帰りましょうか」
「シーカージンよ」
「はい、なんでしょうか」
「今言ったギルド憲章のくだりで、"犯罪行為"と言わず敢えて"人の道に外れた行い"という言葉にしているのは、犯罪の定義や量刑などは国によって変わり、種族によって善悪すら変化してしまうので敢えて曖昧な表現に留めているのだ。たとえ歪んでいたとしても真なる中立でありたいというギルドの理念、それだけは嘘ではないと理解しておいて欲しい」
うん、国に属さない武装集団、それでいて国に敵として認定されない為には清濁併せ呑みながらも表向きには中立でなければならない。ある意味綱渡り染みたバランス感覚が要求される組織運営は、公言する理念でさえ誤魔化しを混ぜ込まないと成り立たないのだろう。
で、今回は一応手続き上俺が森の民と結び付く事を止める事はできないが、国家規模の戦略兵器認定されてる異邦人が森の民と関係を持つのは教国とやらとの関係を考えると好ましくない、と、ギルドマスター(※アガルタ辺境伯側関係者)は言いたい訳だ。成程?
って事は恐らく何某教国と森の民は敵対関係にあると? んで現状ギルド…… いやアガルタ辺境伯側では、森の民は表向きダンジョンを根城にする少数民族でありながらも、ギルマスの反応的に戦力として相当頼られてる…… いや、恐れられてるって感じだろうか。
そして教国というからには相手は国家であると。で、ギルマス的には国と少数民族が揉めた場合、理念に反していたとしてもギルドとしては…… いやアガルタ辺境伯側としてはどっち側に付くかなんて聞かなくても分かるだるぉ? おん? って事を言いたい訳だ。そうだよね?
この状態で森の民と教国が本格的に揉めたらどうなるか…… うん戦力比的に教国側の負けはない、但し、ダンジョンの深層で活動してる森の民相手に彼らの拠点へ至れない時点で勝てないのも確定なんだけどね。これを世間では"知らぬが仏"と言います。
て言うかそもそもナニこの状況。ダンジョンの管理業務に必要だからって部下(仮)とギルドに来てみれば、ギルドマスターに別室へ呼び出され詰問ざるわ、部下が激しくキレ散らかしてるわ、そんな中で無い知恵絞って空気読みつつ揉めないように話を収めないといけないとか無茶振りをされてもムゥリィ、もーこっちは頭脳系主人公でもなきゃ、文字通り単純なルーチンワークを熟して来た現場要員なんですけど?
これってダンジョンの件だけじゃなく、周辺諸国の事とか、国や民族の関係性なんかも知っておかないとこの先やってけないんじゃないか? ぅーわ面倒くせぇ……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
基本的に身分階層が設定された封建社会では、民主主義が成立するのは難しい。
民主主義社会では、民が主導し社会を形成する。建前では国民全てが平等であるが、それを実現する為に教育を受ける義務が発生し、成人にはある程度の知識と道徳が求められる。また国体としては三権分立が機能していなければならないとされる。
対して封建社会は身分其々に役割を強要し、生きるという行為にさえ誰かの許可を要する事がある。領民や国民は支配者層の財産であり、その財産を守る義務があれど、生殺与奪の権利は支配者達が握っており、これらの関係に平等など一欠けらもありはしない。
「のぅジンよ、強力な武力を持つ者が主導したとして、この中世の頃まで文明が衰退したアステラの世界で民主主義社会は成り立つと思うかの?」
「……絶対に無理とは言いませんけど、かなり難しいんじゃないですか?」
「ほぅ? それは何故じゃ?」
「先ず民主主義とは、実態は兎も角幾つかの種類があって、俺達の住んでいた国を例に挙げるとするなら間接民主主義になるんでしょうか…… とりあえず、基本的に民が代表を選出し、その代表者達が議会政治を行い国を運営していきます」
「ふむ、それで?」
「代表を選出しているとはいえ、建前的には国民主導を謳っているので、民全てにある程度の知識を得る機会を与え、国政に関する権利を持たせなければなりません。が、これは封建社会を真っ向から否定する事になります。身分制度が敷かれているという事は、知識を得る事自体が制限される、其々の身分や家業によって得るべきそれらの知識範囲は決まっている。でなくば支配階層の絶対性が揺らぐからです」
「うむ。下々が知恵をつければ、それまで当たり前であった事が不公平と感じるようになり、鬱憤が溜まれば謀反の原因となる。民草とは支配者の財産であり、生殺与奪の権利は支配者にあるからの」
「で、そういう世界に異邦人が民主主義国家を設立しようとすれば…… まぁ確実性を取るなら、手間がかかりますけど一から国家を作る事から始めないといけないんじゃないかと。 逆に…… 国家簒奪からの民主国家樹立とかは手段としては割とお手軽簡単ですが、そこから国として維持していくのはかなり無理があるんじゃないかと思います」
「ふむ? 国を簒奪する武力があるのであろ? なら統治もできるのではないのかの。一体何が問題になると言うのじゃ」
「国の統治はできても周辺国家に国として認められる事が難しいんじゃないかなと。何せ封建社会って「国とは王」って考えが基本ですから。例えば下剋上をしたのが王家筋の血縁者とかなら兎も角、縁も所縁もない簒奪者の事なんて誰が信用するんです? 封建社会では国家間の繋がりは基本的に血縁を結ぶなんて事でもしなけりゃ信用は得られないと思うんですよね。ねぇ牡丹さん、隣接する国家間ってこっちじゃ婚姻関係を結んだ親戚筋みたいな状態が多いんじゃないですか?」
「そうじゃな、まぁそうではない国もあろうが、それなりの国を構えてる王家や帝室なんぞというのは、近隣諸国と繫がっておるのが普通じゃの」
「で、そんなトコにある日国を簒奪し、新しい国家を建てた者が現れる訳です。当然その国の支配階級、王家か帝室かは分かりませんが、その辺り下剋上が成功してしまったというなら、国民感情的に打倒されていると考えるのが普通でしょう。そんな血縁者を屠った簒奪者が推し進めるのは民主主義、封建国家の支配階級の方達から見れば認められない国体である訳です」
親類縁者をぬっ殺された上に、自分達の立場を危うくし兼ねない国作りなんか隣国でされた場合、周辺国家はどう反応すると思う? そんなの超軽く見積もっても国交断絶からの鎖国がセットだわな。まぁ普通なら全力の宣戦布告をするのが普通なんじゃないかと思うんだ。
んで国同士の付き合いがないって事は、産業革命も越えてない文明レベルでは単体国家で何もかも揃えるのは不可能なのでその時点で終わってる。そして中世レベルの国っていうのは保存技術も輸送技術もお察しレベルだからな。生きていく上での必要物資を入手するなら周辺国家以外にあり得ないんだよ。って事で国を維持するにはご近所さんと持ちつ持たれつやり取りする事が必要不可欠になってくる。
うん? 内政チートで自給力を底上げすればいいんじゃないかって? ノーフォーク? 二毛作? ほぉんナニソレオイシーノ? ってかんなもん作物の品種改良もしていない、トラクターもコンバインもない、そして近代農業に一番必要な化学肥料がそもそもない。そんな状態で劇的な食料増産なんかできる訳ないっつーの、農業舐めんなよ?
つまり民主主義に転換しても広大な農地と農民によるマンパワーがなければ国民総餓死ルートまっしぐら、職業選択の自由? そんな余裕農業従事者にはナイナイ。
てか職業的なアレが関係するのは農民だけじゃないぞ? 商人も役人も何もかも専門知識はメシのタネって事で秘匿され、それらは師弟制度、若しくは一子相伝で伝えられるのが普通だから。
何が言いたいかって言うと封建社会での偏った教育って結局『血筋=知識の世襲』って事だからな。そういうのを満遍なく世に広めるには二~三代は世代を跨がないと無理だぞ、と。
で、そういう環境では必要な物を手に入れる為に国家間での取引が不可欠って話しに戻るんですけどね? でもそれって血が繋がってる親戚筋って担保があるからやり取りをして貰えるんであって、そうじゃないなら信用も担保もないって事で相手にされないんですよ。これは民間レベルの付き合いに関しても国という後ろ盾がない時点で、もぅ詰んだ状態なんじゃないか? と、俺は思うんだけど。
だから民主主義は難しい。実現させるなら国政を担う知識層を育てる、つまり教育を国民に浸透させるには子供を労働力として頼らず学業に専念させる環境を作らなければ始まらない。、次に子供という労働力が無くなったにも関わらず今まで以上に生産拡大を図るべく産業革命を成して人手が必要ない労働環境を整え、爆発的に増えるであろう人口がもたらす大量消費を支える生産施設・流通網も用意しないといけない訳で、更にはetcetc…… と、始めてしまうと際限なく続く厄介事のタスクを延々と消化していくとか。ね? ムリでしょ? 俺ならこんな面倒事なんて匙をトルネード投法でぶん投げるわ。
「しかし一部の異邦人はそんな無茶な事を無策でやらかしてしもうての、当然周辺諸国を巻き込んでえらい事になってしまったのじゃな」
「……それがルナリス教国の前身であったと。んでその名も無き民主主義国家が何故宗教国家に変貌したんです?」
「ん? 今そちが言うたであろ? 血縁もない、周辺国家から国として受け入れられない、そんな状態では幾ら武力を持ってしても国としてやっていける訳なかろうが」
「まぁ、そうですね」
「で、結局多数の国家に国教として食い込んでおったルナリス教を引き込み教国とし、周辺諸国との関係を無理くりどうにかしてしまったというのがルナリス教国の始まりという事じゃな」
「おい民主主義どこいった!? て言うかやらかしちゃった異邦人達はどこいったの!?」
「神ルナリスの祝福を受けて聖女や聖人に指定されたの。今は確か枢機卿だの大司教だのに収まっておった筈じゃ」
「おおぅもぅ、ほんともぅ……」
お前やるならやるでちゃんと最後まで責任取れよ! 無理なら無理でちゃんと後顧の憂いを断ってから去るべきだろうが。何で文字通り宗旨替えした上でのうのうと支配者階級に収まってんだよ!
「因みにの、この世界はおろかそちの世界にもルナリスという名の神はおらんからの」
待って、ねぇちょっと待って? ナニソレ神ルナリス(仮)を主神とする宗教国家(笑)って。おい笑いごとちゃうぞ! 寧ろシャレになってねぇ!!
「まぁタマにディノールとかメビュラニカが神のお告げっぽい事をして民草をコントロールしておるがの」
「あ、一応宗教国家的な役割は果たしてるんですね」
「何度天啓を降ろしても人族至上主義のままではあるがの」
「それって、獣人とか亜人を弾圧してるとか。そういうカンジでしょうか」
「いや、そうではない」
「あ、もっとソフトなカンジで?」
「いや、獣人は抹殺対象、亜人は下等劣種と言うておるの」
すんごいハードコア表現がキタ!?
「そしてアガルタが壊滅した数年後にの、魔物で溢れたこの国を助ける為に結成された義勇軍をじゃな、獣人だという理由で魔物ごと殲滅しようとしたのもルナリス教国じゃな」
「え、それって……」
「前には魔物、後ろには狂信者。そんな理不尽が横行したおっての。それが余りにも余りじゃったのでな、生き残りを我が保護し、眷属として迎える事で迷宮でも生きて行ける力を与えたのじゃ」
「それが拙ら"森の民"の始まりであり、ルナリス教国は未来永劫、不倶戴天の敵って訳で」
牡丹さんは座椅子に背を預け、鉄扇でパタパタしており、その隣では彌榮さんが無表情で淡々と事の次第を口にしている。
んでその向こう側…… 枯山水の白砂のド真ん中では、石抱きの刑に処されている朱音さんがプルプルしているのが見えてたりしたり……
「朱音は拙と同じく当時から生き延びてきた古参でやしてね。まぁ気持ちは分からんでもないんでやすよ。もしアガルタ卿にそういう事を面とう向かって言われたとあっちゃぁ、拙も同じ事言ったかも知れやせんがね」
「彌榮じゃったらその場は黙って聞いておいて、後にバレん形で報復しておったじゃろ」
「そうしてしまうと歯止めが効くか分かりやせんで、やはりその場で脅しをくれておったと思いやすね」
あー、うん。彌榮さんも顔に出てないけど、不倶戴天とか歯止めが効かないとか言うってかなりキてるな。教国関係者でもないギルマスに対してコレだから、相当根が深い問題なんだろうと言うかもぅ俺は教国に関しては絶対関わらないからな、絶対にだ!
「て言うか、朱音さんってアガルタ陥落の頃からの生き残り組って事は、最低でも歳は百五十歳以上…… ヒッ!?」
何気ない疑問を口にした瞬間、石抱きでプルプルしてた筈の朱音さんの震えがピタリと止まり、殺意が乗った視線がこっちに向く。アレはヤバい…… 何と言うかマジヤバい!
「ん? 朱音の歳でやすかい? 確か…… そう……」
「あ。イエもうそれはイイデス、はい。どうかそのまま! 謎のままでお願いします!」
これからも上司部下の関係で付き合っていくんだし、人間関係的にそういう地雷は踏まない様に知っておく必要はあるっちゃあるんだけど、踏み込み過ぎて余計なモノまで踏んでたって事のないように気をつけないといけないと思いました。はい。
「結論としてはの、ジンよ、そちと朱音がPTを組むということを公言したとなれば、そちも獣人を排除すると公言しておる教国から抹殺対象にされてしまう訳じゃの」
「……そこまでしますかね? 一応異邦人が要職に就いてるんでしょ?」
「それなりの立場におるからこそ教義に反する輩を見逃す事はできんのじゃ。そして己が教国での立場を考えれば、寧ろ率先して殺しにくるじゃろうな。それが同族なら猶更…… の」
「って事は、やはりシーカーとして行動するのは自粛の方向で考えておけばいいんでしょうか」
「その判断はそちに任せる。しかしの…… ダンジョンに居る限りそちは迷宮主たる我に連なる者であるからの、無法を働く奴ばらを前に何もせん方が問題ぞ」
「そうでやすな。寧ろそこで退いちまっちゃぁ下のモン達に対して示しがつきやせん」
「本来あの様なクズ共を生かしておく必要はないのじゃ。迷宮の維持に関わる事もなく、ましてや邪魔にしかならぬ。それどころか我の配下にコナを掛けてきよる。ディノールとの約定が無ければあのような奴ばらなんぞは悉く…… 黄泉比良坂の向こう側へと蹴り飛ばしてやったものを!」
何やったんですかルナリス教国の人達ィ! 世界最大迷宮の主がオコになってるんですけど!? コレ絶対やらかしたの騙し討ちだけじゃないよね? キレ方ハンパないんですけどぉッ!
「そんな訳でジンよ、遠慮なんぞせんで良いわ。堂々と朱音を連れて迷宮探索に往くが良い。装備が必要とあれば迷宮下層に鍛冶場があるでの、そこの頭に用意せよと我が申しておったと伝えるがいい。さすればポン刀じゃろうが何じゃろうが幾らでも揃うからの」
「それではジン様、早速ですが鍛冶場へご案内致しますね」
「え、アレ? 朱音さんいつの間にこっちに? てか今の今まで石抱きの刑に処されてた筈では……」
「アレは質量を持つ残像です。偉い人にはそれが分からんのです」
「それ色んなガ〇ダムの名言混ざってるから! て言うか何で朱音さんがそんなネタ知ってるの!?」
こうして良く分からない内に不倶戴天の敵がいる状況になったり、アレだけ探しても手に入らなかったブツ(見せ装備)が手に入る事になったり。
……なったり。なりました。
そんな訳でご拝読、評価、ブクマ有難うございます。拙作はゆるやか~な更新になると思います。
また拙作に対するご評価を頂けたら嬉しいです。
どうか宜しくお願い致します。




