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雨の日はカモミール
今日も雨は上がりそうにない。
ここ三日間、雨が降りしきっている。
僕は雨の日が好きだ。地球が生きているのを感じるし、孤独感もいくらか薄れる。
今日は珍しくカモミールティーを淹れる。ほわほわとカップを包み込む湯気が良い。
今日は誰もこないかなぁ
ふうっ っと息をついて、カップに口をつける。熱くてまだ飲めない。
ここは転生相談所。死んだ者は、来世に宿りたい生きものの種類を一つ挙げられる。死んだ者は天の世界、又は地の世界で10年過ごす。その間にゆっくり考えておきたい項目だが、これは死んでから1ヶ月以内に決めなければならない。なかなか難しい選択だ。
僕は6837歳。3000年くらい前からこの仕事をしている。あれ、4000年前だっけ?
雨はこの三日間で1番酷い土砂降りだ。7月の中旬だと言うのに少し肌寒い。
カモミールティーを口にたっぷりと含む。疲れを溶かすようなこの香りは、たまに飲むから特別感がある。
カランカラン
お客様の御来店だ。
『いらっしゃいませ』
そう言うとおもむろに腰を持ち上げて、扉に向かった。