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たなびく戦旗の下に  作者: 澤木無我
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第五王子と仲間達

ゴール城攻防戦2。戦闘開始。

            11 ゴール城攻防戦2 戦闘開始。

 朝、城を囲むカリガン軍はすでに隊伍を組んで指揮官の号令を待っていた。空は晴れ、初夏を思わせる爽やかな風が吹き抜けていた。陣営には、多くの、色とりどりの旗がはためき、時折軍馬が連絡の為か走り回っていた。攻撃開始の合図はまだ出ない。

 街道の東から大きなものが城に近づいてくる。大きな階段型の攻城塔が四台姿を現した。その後に三角の屋根をつけた家のようなものが二つ続く。それよりもさらに投石器らしい、小型の武器が十六台。馬に引かれて戦場に出てきた。攻城塔は左右に分かれゴール城の北と南に二台づつ城壁から距離を置いて止まった。家の形をしたものが東門と西門方面に一個ずつ、投石器は東西南北に四台ずつ城の周囲に配置された。

 それぞれが配置される様子を、丘にある本陣からアランとベルトが眺めていた。

「驚いたな、あんなものを作り上げてくるとは。アランは知っていたのか」かれらのの周囲の、二人の話が聞こえる範囲には人は入ってこなかった。ベルトは友人としての口調でアランに言った。

「いや。城の包囲ができたとき、男爵が近くの製材所を接収したいと言ってきたから、何か作るとは思っていたが、あれが出てくるとは思わなかった。主要な部品は本軍から持ってきたので、作るのは簡単だとは言っていたが」


 昨日の軍議でキクサンは攻城塔の小さな模型を会議テーブルの上に置いて、武将達に説明した。

「ゴール城は王都の城壁より低いので、然程大きくなくてもいいのです。一番上のこの部分は、精々建物の四階位の高さしかありません。構造は周囲を頑丈にした動く階段といったところです。ここが、階段部分。一階に当たるところのここと、ここに車輪をつけ、攻撃の時は下のたくさんある横棒を押し、前に出ます。城壁に付いたら、歩兵が階段を駆け上がり、一番上の架け橋を下ろして、城内に入る仕組みです。上に乗って動くのが可能なら、上で何人か待機させることもできると考えます」工兵隊長の男爵は周囲を眺めて、質問がないことを確認する。確かに、質問は出なかった。

「次に、この破城槌は城門を破壊するために用います」

 テーブルの上に小さな三角の家のような破城槌の模型を置く。

「ですが普通の破城槌ですと城門の上から、攻撃されいつも多大な犠牲を伴います。そこで、このように三角の屋根をつけ、屋根の中に丸太をつるす構造にしてあります。その際これも屋根と一体の車輪をつけて、城門の前まで移動できるようにしてあります」

 キクサンは一旦話すのをやめて、質問を促す。質問はなかった。すると、キクサンは部下の工兵を呼んで、また別な機械の模型をテーブルの上に置いた。

「これは投石機です。攻撃の補助に使います。皆さんが知っている投石機よりは小型に作ってあります。こちらの方が移動もしやすく、構造も簡単です。分解すれば数台まとめて馬車に載せて行くことも可能です。使うのは、石、鉄球、それと火薬を詰めた破裂する玉も発射することができます」

「破裂する玉?我々の方は危なくないのか」とイリア。

「すぐに発射すれば、大丈夫です」キクサンは部下の工兵を呼ぶ。工兵は手に黒い丸い玉を持ってきた。武将、士官達は一瞬ギョとした。キクサンはその黒い玉を無造作に受け取ると、

「丸い玉のここから紐が出ています。この紐を工兵は導火線と言っているのですが、発射するときここに火をつけて、燃え尽きたところで破裂します。導火線の長さで、破裂の時間を調整できます」

「・・・わかった、が。今、そこに持っているものは、破裂したりしないのかね」とテイラン伯爵。

「あっ、大丈夫です。模型なので火薬は入っておりません」

 心の中でそれを先に言えと思ったのは、一人だけではなかった。


 キクサンのつくった攻城兵器は所定の位置に納まったようだった。準備完了の信号旗が振られた。アランは大きく息を吸うと、振り返り後ろに控えたラッパ手に頷いた。四人のラッパ手達は高らかに攻撃の合図を吹き鳴らした。


ゴール城攻防戦3。ベネット子爵側と城内。

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