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たなびく戦旗の下に  作者: 澤木無我
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第五王子と仲間達

アラン別動軍軍議中。

                 6 アラン軍の陣中会議

「国内の内乱を終結させたルイス王は多くの政治改革に手を出しているようですが、その中に軍の改革も入っています」

「軍を縮小したと聞いていますが」とイリア。

「その通り。ですがただ縮小したのなら、王太子殿下や宰相殿の思う『軍の弱体化』でしょう」

「違うのですね」とアラン王子。

「フリアノ軍はジスカルを総司令官に据えて兵を選別し、たとえ一時は敵であった者であったとしても『戦う能力のある者』『王国に忠誠心のある者』を軍に残し、他の者は内戦で荒れた農地や街に振り分け、農民や市民として復興の努力させたということです」

「つまり、単純に見えるところでは兵数は減っても、兵士の個々の質は高い・・・、ということですか?」とベルト。

「それに対して、はたして我々はどうなんでしょうね?・・・確かに戦闘力の高い者もいますが、大概は諸侯の騎士や士官、農村から徴用した兵に頼っています。兵数は確かに多いのですが、本当に戦える力のある兵士は・・・」

「では、今我々が相手をしているゴール城の兵士も?」ベルトが訊く。

「いや、あそこにいるのは恐らく・・・、内戦後で残ることが許されたベネット子爵の私兵と領民の兵でしょう。ベネット子爵は領民に慕われた領主だと聞いていますし、内戦でも北方では珍しくルイス王側に立って参戦していましたからね。フリアノ軍の本体の部隊はいないと考えるのが妥当でしょう」

「それらの情報はベールの王都に届いているのでしょうか?」とアラン。テイラン伯は王子に向き直って言った。

「もちろん、私が知っているということは、宰相府に届いていますよ。ただ、王子。・・・情報というのは聞こうと思わなければ聞いていないと一緒です。王都では、フリアノ軍の兵力が減ったということがだけが大事なのでしょう。軍の質に目は向けません。相手は自分たちと同じような軍隊。ならば、内乱などで疲弊していない、しかも兵力で勝っている自分たちが有利・・・、征服の絶好の機会だと考えたとしても、間違いはないでしょう」

 陣中は戦う相手を思って沈黙に包まれた。

 末席に座っていたキクサン男爵が発言を求める。

「テイラン伯爵。今、我々が対峙しているゴール城。ベネット子爵はフリアノから見捨てられたと見た方がよいのでしょうか?」

 テイランはうむと唸りながら腕を組む。

「それは、・・・恐らく違うでしょう。・・・死兵となるよう頼まれたか?・・・死守すれば、子孫に何かしらの恩賞を与えることを約束したか?」

「死んでも、いいと?・・・厄介な相手ですね。我が軍はできるだけ兵の損傷を避けたい。城側は我々をできる限り傷つけたい。無視して軍を進めれば・・・」ベルトが言うと、

「補給が止まります。輜重が攻撃されて」クリムソン伯爵公子ベック。

 皆の目がアラン王子に向かう。アランは両手をテーブルにつけ、右手の指でテーブルの表面を軽く、ゆっくりと、リズムをつけてたたく。彼が考えるときの癖だった。

 少し時間をおいてから、アランは自分を見つめる者達の目に向かい合う。

「ゴール城は落とす。でも、これからはなるべく損傷の少ない形で行いたい。我々はすでに七日かけて、攻めあぐねている。キクサン男爵、工兵を指揮して城壁を崩せるものを作ってもらいたい。それまでは他の者は城をしっかり囲っておくようにしよう。テイラン伯爵、ベネット子爵家や領内のことについてもう少し詳しく探って欲しい」

「王子、いつまでに」とキクサンが緊張気味に言う。

「できる限りと言っておこう」

「では、私の方もできる限り、どういう人間がいるかも調べておきましょう」

「よろしく、頼みます」

「では、今日はこれまで。何かあれば、招集をかけます」ベルトが言うと、皆一斉に席を立った。

 


次はゴール城内。ベネット子爵家の事情。

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