プロローグ ~まずは異世界転生から~
初めて書くので誤字脱字、ストーリーの矛盾などご容赦ください。
とある日の病院の一室で、看護師達が切羽詰まった様子で対応に追われていた。
「304号室のーーさん急変です!」
「ご家族に連絡ーー!」
「先生はーー」
看護師達がバタバタと対応していく。
その中心では一人の青年が、看護師の用意した酸素マスクをあてられながら、弱々しく息を続けていた。
慌ただしい看護師達の声、取り付けられた心電図計の電子音、そのどれもが遠くに聞こえる。
そんなな中、自分の呼吸音が一番大きく聞こえるような気がした。
「ーー!!ーー!!」
その遠く聞こえる音の中に、聞き覚えのある声が自分を呼んでいるのが分かった。
あぁ…そういえば今日は兄さんが見舞いに来てくれるって言ってたっけ…
『お前の大好きな小説の続編、明日発売だから持ってくわ!』
昨日そんな事をアプリで通話した記憶があった。
あぁ、すっげー楽しみだったのになぁ…リリィ先生の続編…
必ず読むって…あの『約束』も、果たせない…なんて…
「ーー!!ーー!!」
耳元から兄さんの声が聞こえるが、上手く言葉として聞き取る事が出来ない。
すると感覚の薄れていく指先に、何かが触れた気がした。
温かい感覚と固く冷たい感覚に、きっと兄さんが小説を握らせてくれているんだと感じた。
読みたかったなぁ…今ちょうどヒロインを巡って王子達が盛り上がってた所なのに…
最近身体の調子良かったのになぁ、油断したなぁ。
まだ俺は20だぞー、ピチピチだぞーちょっと早すぎじゃね?
あーもう、病気のバカヤロー、ふざけんな。
神さまよ、もし本当に居るのなら俺の願いを聞いてくれ。
次は超健康体で生まれ変わらせて欲しい。
あ、いや、やっぱ普通でいいっす。
健康は自分で頑張るから、とにかく病気だけはもう勘弁。
そんで、今回早く終わっちまった分、うーんと長生きがしたい。
だから、頼むよ。
俺に次の人生をーー!!
そう願った直後、俺の視界は暗闇に覆われた。
・
・
・
ズダダダダダダダーーーン!!!
いきなりの激しい音と衝撃が、いきなり俺の体を駆け巡る。
いつの間にか暗闇は明けており、俺はあまりの衝撃にその場に倒れこんでしまった。
「(痛っっってええええ!!おい、なんだよこれ!何かめっちゃ痛ぇじゃねぇか!!)」
そんな全身の痛みに顔をしかめながら、俺は体を起こそうとした。
「(あれ?痛いけど、苦しくはない?でも体、重っ…)」
俺は、先程まで全身にあったハズの倦怠感などが、いつの間にか全く無くなっている事に気がついた。
その代わりなのか、妙な身体の重さを感じはしたが。
「キャアアア!坊ちゃん!」
「坊ちゃんが階段から落ちたぞ!」
「医者を呼べ!!」
ん?坊ちゃん?階段?落ちた?
いきなり響いたその声の方に目を向けると、階段の上の方に制服?のような黒っぽい服を着た人たちが、顔を真っ青にして叫んでいる。
その中に小さな男女の子供の姿がみられ、そのどちらも真っ青な顔をして震えている。
んー?坊ちゃんって俺の事?皆俺の事見てるし…夢…ならこんなに痛くねぇか…ってことは…
…転生成功かよヒャッホオオオオオ!!!!
余りの嬉しさに俺は叫びそうになるが、ここでそれをしたら完全に不審者まっしぐらだ、落ち着け俺と自身の心を静めるよう努めた。
とりあえずは、階段上の人達に大丈夫だと伝えようと、俺は痛む体を上半身だけ起こした。
そしていきなり目に入った白い枕の様な物に自然と目が行った。
「…ナニコレ?」
俺はその枕のような物に触れてみるとそれは温かく、同時に腹部から何やら擽ったさを感じた。
…それは、どうやらたっぷりと脂肪を蓄えた俺の腹だった様だった。
俺はさらに自分の手の平も見てみた。…あんパンかと思ったら俺の手だった。
続いて顔を触ってみる。…餅がくっついてるみたいだった。
ちょっと気持ちいい。
しばらくムニムニとその感触を堪能していると、落ち着いた俺の脳内はある結論を導き出した。
「……って俺、デブじゃねぇかああああ!!」
思わず声を上げると、腹の肉がプルプル震えた感じがした。
と、同時に酸欠からか頭を打ったからか頭痛がする。
遠くでなんか呼ばれてる気がしたけどそれどころじゃない。
思わず遠退く意識の中で、真っ青な二人の子供が印象に残った。
あれ?どこかで会ったような…
そこまで考えて、俺は意識を失った。
とりあえず兄さん、俺無事転生したみたい。