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第四十八話 異世界の武器

今回少し、前作の内容を含みます。

「あれは……もしかして私と同じ?」


 その少女は、村人の前に立ち、そして巨人眼妖を迎え撃つ。

 持っていた魔道剣から、ルチルが使っているのと同じ、白く神々しい神聖魔法の光を纏う。そしてルチルよりも遥かに強力な神聖魔法力を纏った斬撃がその眼妖を切り裂いた。そしてあっさりと巨人眼妖を殲滅して見せた。

 村の危機に颯爽と現れて、神々しい外観の力で、邪悪なる敵を滅した女司祭。戦いの後、村人達から一斉に感謝の言葉を贈られているのが見える。


「そうあなたと同じ、浄化魔法の養育を受けた聖女様よ。ちなみに彼女は何も知らないわ。ディークがどんな横暴を繰り返しているのかも。そしてあの眼妖を放ったのは、ディークの王政府だって事もね」

「私とブルーノさん以外にも? しかも自分の国の民を襲わせたんですか!? どうして……」

「セヴァルも言ってたでしょ? 権威付けのためよ。眼妖を何かに利用できないかと考えたディークはね、こんな自作自演の英雄劇を作り上げたのね。これのおかげで、ディークは今まで以上に民から信仰されて、更なる絶対敵権力を得たわ。この行為は更に拡大してね。他国に眼妖を発生させて、それを討伐させて、多くの国に恩を売ったりもしていたみたい。国外の政治問題にも、随分と有用に使われたみたいね。ただし浄化魔法は、ここの腐った奴やいかれた奴には使えこなせないから。その英雄劇の主演を任せられる者は、何も教えずに、完全に管理された環境で養育していたのね」


 それがセヴァルも言っていた、ディークの自演の英雄創成。小次郎はそれを、映像付きで更に詳しくルチルに説明を続けている。

 ルチルにとっては、聞きたくもない話しだったが、真実を知るためには、引き下がれないこと。


「ちなみに今の映像に映っていた人物は、ラチル・パイパーという人でね。あなたの実の姉さんよ」

「えっ!?」


 名前が似ていると思ったら、結構な衝撃な事実を口にする小次郎。だがルチルの困惑をさらりと流して、小次郎は次の話を続けた。


「そしてその聖者の育成こそが、あなたがこれまで聖女として育てられた、本当の理由。そうやって手にした権威の元に、ディークは多くの国々を、愚民を正しい道に導くと言って、多くの国に攻め込んだわ。その結果、多くのゼウス大陸の国々が、ディーク神聖王国と対抗する為に、結託し始めた。その結果、ディークは次第に苦戦するようになった。するとディークは、今度はそいつらじゃない、戦争し慣れていない別大陸の国々を占領することにしたの。それがトーマの所属していた、自称使節団ね」


 トーマの言っていた国家交渉の話しは、最初から色々おかしかった。人数のあまりの多さと、大量の兵器を持ち込んでいる辺り、誰もが怪しいと思うだろう。事実真澄、トーマを最初からかなり疑っていた。


「超大型魔道船八十隻。総兵員数は水夫も含めて約十万人。しかもその戦闘員として乗ってる奴には、ディーク神聖王国でも相当鍛えられた精強の戦士達がかなりの数いたわ。奴らはこれで、アマテラスを一気に制圧できると思っていたみたい。まあ私の見立てだと、最初から無理だったと思うけど。津軽王国みたいな小国ならまだしも、アマテラス大陸を実質支配している列強国の前では、いとも簡単に捻られたでしょうね。最も奴らは、そいつらと戦うまでもなく、大陸に着く前に海入道に、全部沈められたけど」

「あの……海入道とは何ですか? トーマさんが言っていた、黒い巨人のこと?」


 その名前は、真澄と美夜子の会話の中にも出てきた。ルチルは聞くタイミングを逃して、聞けなかったこと。

 どうも二人の会話だと、その存在を元々知っていたようであるが……


「海入道ていうのは、精霊の一種で、この国で崇められている土地神の一種ね。アマテラスの海の守護者で、大陸に敵意を持ってやってくる者を、潰しにかかる役目をおっているわ」

「そんな方が? その方も本当の神なのですか?」

「人々から信仰されていて、実際にそれに見合う仕事をしてるんだから、一応神様と言ってもいいじゃないの? まあ海入道は何百年も世に姿を現してなかったから、今ではそれをお伽噺みたいに思っている人も、増えてきたけど……。今回の件で、一気に存在が再認識されそうね。アマテラスには海入道以外にも、沢山の精霊や霊獣が、神として崇められてるわ。ゼウス大陸も、大昔はそうだったんだけどね……。今はロア教みたいなインチキ宗教が幅を利かせて、そういった信仰はほとんど残ってない。精霊や動物を崇めるのは、邪道と淘汰されているし。私達鬼神の存在も、完全に歴史から抹消しやがったし……。ゼウス大陸は、この世界で最も神の加護を受けていない土地と言っていいわ……」


 鬼神の話しをしたときに、何やら苛立った声色になっている小次郎。

 この説明で小次郎が言いたいこと。それはディーク含めたゼウス大陸の人々は、本当の神を突き放して、偽りの神を崇めて自らを神聖視している、最も愚かな民であるという侮蔑であった。


「そして貴方は、そのロア教を後ろ盾にしたディークに、まんまと動かされる駒だったわけ。私最初、あなたのことよく判らなくてね。審判の目で見ても、あなたには善事も悪事も読み取れなくて、ちょっと不思議に思ってたの。あれだけ人を助けてたのに、善事が読み取れないなんておかしいしね。まあその善事をするきっかけが、元々は貴方が蒔いた種だったからみたいだけど」

「私が蒔いた? ……ミルクですか」


 やたらとルチルの周りに、眼妖が現れていた理由。それは簡単なこと、彼女が連れていた白猫が、機を見計らって、眼妖を故意にばらまいていたからである。

 ブルーノの周りにいるのは、もしかしたら護衛騎士の仕業かも知れない。つまり彼らは、自分が蒔いた種を、自分で刈り取っていただけだったのである。


「そして最後に……あなたの相方の真澄と、ブルーノが持ってる、あの不思議な勾玉と動物のことも話すわね」

「えっ!? 知ってるんですか!? そうか鬼神様なら当然……教えて下さい!」


 今までの小次郎の話の中で、今一番で真剣な様子で聞き入るルチル。あの謎の道具と動物は、先程までの祖国の話しと違って、手がかりなど何もない全く謎の存在であった。


「あれはこことは違う世界の者、カーミラって言う異世界の魔道士が作った、新型魔具の試作機よ。ある異世界の魔道士が、この戦乱の予兆がある国を、こっそり実験場にしたのね」

「異世界の……春明様みたいな方ですか?」


 唐突に別大陸どころか、異世界の話しを持ち出されるが、割とルチルはあっさり話しを受け入れた。

 狩り場を生み出したという春明のことも含めて、このアマテラス大陸は、異世界の実在は一般にかなり知られているのだ。


「ええ、何でもそいつの故国で、ある事故のせいで、人間の精神が宿って勝手に動く、機械兵器があったそうね。“亀戦車”とか“転生戦車”とか言われてて、普通に作った戦車よりも、遥かに優れた能力を発揮したそう。そいつはそれを意図的に作り上げる研究をしていたそう。まあ人間の魂を武器の材料にするのって、人道云々とか色々批判が来そうだから、こっそりやってたけど」

「表沙汰にできないから、別の世界で人体実験を? それは悪行ではないのですか? ご本人の同意は?」


 少し棘のある反応をするルチル。それは魂を弄ぶ、人体を扱う実験以上に、危険な所業と受け取られかねない。


「まあ、そうよね……。魂を肉体以外の者に入れるのって、結構危ないから、好きで被験者になる霊は少なかったみたい……。ともかくそいつの研究は、かなり進んでいった。そして最初の転生戦車以上の物を作るのに躍起になってきた。その後期段階が、あの勾玉ね」

「あの勾玉に、人の魂が? それはどういう方が……」


 てっきり只の魔具かと思ったら、中に人が入っていた物だった。普通の道具でないのは、最初から判っていたので、さして驚かない。

 だが今までずっと、共にいた謎の人物のことは、ちょっと気にかかることである。


「とある情けない理由で死んだ芸人達の魂よ。どうも性格的に、魔具扱いの身体になってもノリノリで受け入れるだろうという人選みたいだけど。あまりそいつの性格は知らない方がいいかもね」


 女子の肌に密着したり、一緒に風呂に入って、何やら興奮していた源一のことを思い出し、小次郎は少々苦笑していたようであった。


「そんでそのへんた……いや被験者が入れられた魔具の素材は、大層なものでね。あらゆる道具の存在を記憶する、とても特殊な魔石よ。あれの素材になった石にはね、そいつのいた異世界の武器の記憶を、沢山読み込ませたみたい。その武器の素材も、内部構造・製法も、ありとあらゆる情報をダウンロードしたの。そしてその石に変化能力を付加する加工と、その武器のことを知っている人間の魂を入れることによって、その武器の存在を完全にコピーする能力を与えた。その結果、異世界に実在する様々な武器に、自在に変身できるようなったわけ」

「異世界の武器? じゃあ今まで真澄さんが使ってた武器は、別の世界で普通にあるものなの?」


 ダウンロードという単語の意味も判らず、ルチルはその話を完全に理解するのに、少々時間がかかった。そして話しを呑み込んでいくと同時に、少々怖いことに気づく。

 今まではあの勾玉の形をした魔具だけが持つ、特別な力だと思っていた物。何十という巨人を撃ち抜く車や、砦一つ破壊できそうな強大な矢を放つ空飛ぶ乗り物。神の力と言われても過言ではないほどの力を持ったそれらは、別世界では普通に使われている武器だということだ。


「ええそうよ。10式戦車にF-1……あなたが今まで驚愕していた武器は、別世界の国……日本という国ではさほど特別な武器じゃないわ。しかもそれらももう現在じゃ、旧式になってる。日本の今の軍隊は、あれよりもっと強力な武器を、沢山作って所持しているわ」

「そっ、そうなんですか……」


 この世界の住人からすれば、かなり怖い話しである。もしそんな国が、この世界に押し寄せてきたら、あっというまに世界が蹂躙されるのではないか?

 しかし現状敵かどうかも判らない、その日本という国を恐れても仕方がない。自分より強い力に敵意を抱く愚人の発想を持ちそうになった自分を、ルチルはすぐに心の内で諫めた。


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