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第二十六話 もう一人の転生者

「うわっ!?」

「ほう、これがその勾玉の変身か」


 その場で源一は即座に変身した。最初に変身した、あの拳銃の姿である。とくに望んでもいないのに、急に勾玉が変身したことに驚く真澄。

 今までだって、何の条件で変身しているのか、彼女にも判らなかったが、こんなところで敵もいないのに、急に変身したのには、かなり動揺しているようであった。


「ふむ、確かに変わった銃だな……それで眼妖を?」

『ああ、そうだ! そして今この場にいる、このゲチョグロ野郎もぶっ殺す! 真澄!銃口をこいつに向けろ!』

「そっ、そうです! くそっ、なんでこんな所で、おい戻れ!」


 直ぐにでもロビンに向かって発砲しそうな勢いの源一。だが運悪く……いやこの場合は幸いと言うべきか? 真澄が掴んでいる、拳銃形態の源一の銃口部分は、ロビンの方を向いていなかった。

 源一は変身すると、自動で発砲することは可能だが、狙いを自分でつけることはできない。敵を倒すには、持ち主である真澄の協力がいるのだが、生憎今日の真澄は、源一の望みを叶えてくれそうにない。


 こんな宿の中で、火器を持ち歩くのは良くないと思ったのか、真澄は源一をしきりに元に戻そうとする。だがそもそも戻る条件が、彼女には判らない。

 いつもならば、戦いが終わると、何も言わずとも勝手に元の勾玉に戻るのだが……


『おい真澄! 早く俺を……うわっ、何してんだよ!? 馬鹿か!? 銃口を自分に向けるな!』


 元に戻そうと必死な真澄は、あろうことか拳銃形態の源一の身体を、何度も叩いたりしてる。それどころか銃口に指を突っ込んだり、銃口の中を見ようと、目に向けて中を覗き込もうとしている。

 魔具が変身した拳銃に、暴発というものがあるかは不明だが、これはかなり危ない。良い子の皆は、間違っても火器を叩いたり、銃口を覗いたりしてはいけません。


「あっ……はあ~~」


 このままだと真澄の命は危ないと思ったのか、怒りをどうにか収め、源一は直ぐに勾玉の姿に戻る。それに真澄は、ようやく安堵の息をする。


『くそっ、てめえとの決着は、またいつかだ! その時まで待ってろよ!』

『自分で動けない身体で、どうやって決着をつけるつもりですか? 真澄さんに、俺に銃を向けるよう頼むつもりです? ていうか何で俺、こんなに怒られてるんですか?』


 源一の怒りに、心底判らないといった風のロビン。それは隣にいる小次郎も同じようで、首を捻って彼らの会話を聞いている。


『ふざけんな! お前が持ってきた脚本のせいで、俺がどんな目にあったと思ってんだ! おかげで俺は頭のいかれた芸人として、芸能界から……それどころか社会全体から追放されちまったんだぞ!』

『何ですかそれ!? 八つ当たりも良いところですよ! 俺はただ、貰ってきた脚本を渡しただけですよ! 文句があるなら、あのアホ脚本家に言って下さいよ! 俺だって、あいつには腹が立ってんですよ!』

『だったら貰って、中身を見た時点で、突っ返せば良かっただろうが! あれがどんだけいかれた内容かなんて、見ればすぐに判るだろうが!』

『何言ってんですか!? 沼田さんだって、あれ見てノリノリで演じてたくせに! そういうなら、まず自分で気づいて下さいよ!』

『……そうだったか? いやでもあいつに脚本頼むの決めたのも、お前だろうが! だったら責任は全部お前に……』


 その場で激昂して口げんかを始める二人。だが勿論彼らの会話は、真澄たちには聞こえていない。

 先程は、犬から別のモンスターに変身する能力を見せて、その異質さを見せつけたロビン。だが今、この人間くさい会話を聞いていると、折角の異質な雰囲気が台無しである。


『ちょっとあんた達……どっちが悪いか知らないけどさ……今はこっちの話しを聞かない? 結構重要な話しをしてるんだし……』


 呆れながらそう諭す小次郎。事情はさっぱり知らないが、どうも会話を聞く限りだと、どっちもどっちの話しであるようだ。


「しかし不思議な話だな……君がその宝玉を手に入れた経緯と、私とロビンとの出会いは、とてもよく似ている」

「ええ、確かに……とても偶然とは思えません」


 生前は知り合いであった二人が、何故か似通った能力を持って現世に現れて、何故か似たような境遇で、人についていっている。これは話しに聞くだけで、何者かの作為的なものを感じることであった。


「ですからこれはきっと、女神ロアのお導きですよ! ロアはきっと、この大陸を眼妖から救うために、真澄さんとブルーノさんに、その魔具と使い魔をお与え下さったに違いありません! ロアの司祭であるブルーノさんの元にロビンが現れたのも、同じくロアの司祭である私が真澄さんと出会ったのも、きっと偶然じゃありません! むしろこれがロアからの贈り物であるという、真の証拠じゃありませんか!?」

「うむ……確かにそうかもしれないな。全く別の大陸で、司祭としての任を働く厳しい境遇の我らに、ロアが御慈悲を与えて下さったのかも……。であればその勾玉とロビンの両方共に、ロアの司祭が巡り会った偶然も、納得できる」

「ブルーノさん……あんたもそういう口ですか?」


 だがその作為的な状況も、ロア教信者からすれば、神のお導きの一言で片付けられるらしい。ルチルだけでなく、恩人であるブルーノまでもが、そんなトンデモ理論を信じることに、真澄は落胆していた。


「しかしそれが判ったとて、これからどうすればいいのか? ロアは、ルシア殿下の消息までは教えて下さらない様子。真澄君が協力してくれるのは嬉しいが、未だに何の手がかりもないようでは……」

「とりあえず、今は眼妖を狩り続けるしかないでしょうね。それともし今度異人狩りが出てきたら、何としてでも生け捕りにして、話しを聞き出さないと……」

「でも、この間みたく、その人も知らなかったら?」


 以前一時捕まえた異人狩りは、自分たちは只雇われただけで、自分たちは何も知らない様子であった。


「この間? まさか君たちは一度、異人狩りを捕まえたのか?」

「ああ、まあすぐに逃げられたけどな……」


 真澄はその件のことを、ブルーノに話すが、それに彼はまたもや困惑した様子であった。


「それは妙だな……。私を襲ってきた者は、そのようなその日雇いのならず者とは、明らかに違っていたぞ。あれはかなり高度な訓練を受けた、手練れの暗殺者のような動きであった。まあ、私達を殺す意思はなかったようだが……」

「手練れの? そんなに強かったのか?」

「ああ、向こうに殺意があったならば、私とロビンも、もっと苦戦していたかも知れない。少なくとも、君が出会ったような、銃の扱い方すら知らないような素人とは、全くかけ離れた存在だったよ」


 どうもこちら遭遇した異人狩りと、ブルーノが遭遇した異人狩りは、かなりレベルが違うようであった。雇い先が違ったのであろうか?


(そういえばあいつら……どうも異人を襲うのは初めて見たいな雰囲気だったな。もしかして私が会ったのは、今まで異人を攫ってきた奴らとは違うのか?)






 しばし話し合った後、ブルーノと真澄は一旦ここで別れることとなった。トーマは真澄たちから離れ、これからはブルーノの先に着くようである。


「ではしばしの別れだ真澄。もし互いに何か、危機があったら、その時はお互いに助け合おうじゃないか」

「ああ、勿論です。こっちも何か判ったら、すぐに連絡に来ますんで」

「しかしここから、弘後は少し遠いな。何ならロビンに空から送ろうか?」

「いえ大丈夫です。私達は空便を通っていきますから。今はお金に余裕があるから、そこも簡単に借りれるんです」


 互いに宿の名前と郵便先を教えて、真澄は弘後町への帰路へと行く。ブルーノ一行に手を振って宿を後にし、真澄たちはこの町の鳥車駅へと向かっていった。



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