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6.フタバvsジャッキー

 そんなわけで、その後私は学校にはいなかったんだけど、この後の事は次の日にユリカが教えてくれた。

 私の敵討ちって感じでフタバがジャッキーに挑んでくれたらしい。


 ジャッキーが悪いことをしたわけではない(からかわれたこと以外)というのは私も分かってるし、別に逆恨みしようと言うつもりは全然ないけど。

 ただ、そこはノリとか勢いとか、そういうやつだ。


「なんだよ、それじゃあ俺、勝っても負けても悪役じゃんか」

 と言い返したジャッキーの言い分も、まあわからないことはない・・・。

 フタバの方も実際には別に敵意むき出しでやる、というわけでもないらしく、反応は

「なによ、ノリが悪いわね」


 だった。要は、単に盛り上げるための『設定作り』だったわけで。

(しゃあねえ。合わせてやるよ。けど始まったら手は抜かないからな。あと、お前が実力不足だったらシラケるだけだからな)


 フタバはそんな心配御無用、と言わんばかりに笑みを返した。

「敵討ちだと?できるもんならやってみろ!返り討ちにしてやる!!」

 残念なのはその台詞が、あまりにも芝居がかっていて下手くそすぎたと言うことだ。

 彼に、芝居の才能はあまりないようだ。


 フタバは普通にしとけばよかった、とちょっと後悔。

 が、シュミット先生はそんな空気は完全にスルーして試合開始の合図を出した。

 後がつかえてるから先生の立場からしたら当然で、むしろ「無駄口叩くな」って怒られてても仕方ないくらいのところだけどね。


 フタバの武器は小剣、左手には小さな丸い盾。

 ジャッキーは両手持ちの剣。

 そして二人とも右利きだ。

 二人とも本当は、武器はレイピアだったりバスタードソードだったりするんだけど、それに相当する長さの木刀にきっちり布も巻き付けてある。


 それにさっきと同じで、2人とも守護の腕輪Lv2を装備している。

 2人の武器の相性でいうと、通常は剣と剣がぶつかったら両手剣側の方が有利、剣を盾で受け止められたら片手剣側の方が有利となる。


 開始直後、まずフタバが仕掛けた。

 ジャッキーは中段に構えていて剣の切っ先は常に相手の喉元に狙いをつけているから、正面から切り込むのは危険すぎる。

 だから構えを低くして右側から足元を狙いに行く。

 それに反応したジャッキーは、狙われた方の足を一歩引いて上から剣を振り下ろす。


「それは見え見えっ!」

 フタバはその攻撃を、盾で防ぐ。

 片手の腕の力だけでは支えきれないので、盾に体を寄せて全体で受ける、というのも予定通りだ。

 けど、フタバは一瞬でそのままだとマズイというのを感じ取って、相手の力を利用して距離を取った。

 身長や体重で言ったらミルフィとあまり変わらないフタバにとって、この相手の攻撃を受け止めるのは危険なのだった。


 定跡通り単純に盾で受けておけば有利、というわけにはいかなそうだった。

 もし一度でも押し込まれて体制を崩せば、その瞬間に勝負が終わる可能性が高い。

 だが、そうは言っても腕の長さも剣の長さも違うから、フタバとしては相手から来るのを待つような戦いはできない。


 しかも身長が違うから攻めが単調になっても足狙いから入らざるを得ない。

(じゃあ、今度は・・・)

 フタバはさっきとは逆の左側に動いた。

 ジャッキーの上からの反撃をあえて不利な剣の方で受けようというのだ。

 もちろんまともに受け止められるわけはない。

 だからうまく剣を滑らせるようにして中に入って盾で体当たりする。

 

 これでちょっとでも体制を崩してくれれば足を引っかけて倒れる所を追撃し、一気に決めるのが狙いだ。

 でも、ダメだった。

 ジャッキーの体制はほとんど崩れておらず、足を引っかけようと出したフタバの足の方が逆に踏みつけられてしまった。

 足の痛みはほとんどないんだけど、このままだと逃げられない。

 

 そこへジャッキーが剣を振るう。

 足技でも相手に一枚上を行かれて焦ったフタバだったが、怯んでいるひまはない。

 靴を脱ぎ棄てて、絶体絶命のピンチから間一髪で脱出した。

 

「ふう、これは・・・面白すぎるわ」

 正直、フタバは初等学校にこんな相手がいるなんて全く思っていなかった。

 力だけ多少劣っても反応と技術でどうにでもなる、という思惑は完全に外れた。

 

「強がり言ってんじゃねえよ。この辺で終わりにしてやる!」

 強がり・・・確かに強がりだ。

 そして、大ピンチ。

 

 (けど、大ピンチを楽しめるぐらいじゃないと、戦士系の戦いはやってらんないのよっ!)

 今ここにはいないけれど、本当はそれを、ミルフィに伝えたかった。

 まあ、その役目は話のうまいユリカにお願いすることにして、今はこの戦いに全力で挑むだけ。

 決めに来ているから、今はジャッキーの方から踏み込んできている。

 

 それに対し、フタバは正面から迎え撃った。

 中段に構えているときには自分の喉元に相手の剣が向いているから正面から飛び込むのは自殺行為だが、相手が攻撃するために剣を振り上げているとなれば話は別だ。


 相手が剣を振り下ろしてくる前に、少しでも前に踏み込む。

 理想は剣の根元の部分を盾で受け止めて押し返すことだ。

 根元ならば、てこの原理が働かないから威力は大したことがないはずだ。

 しかし、その踏み込みの早さすら、相手が上手だった。


 ジャッキーの攻撃を避けるにはもろに剣撃を受け止めるしかない状況を強いられる。

 そして次の瞬間、フタバの持った盾は破壊されていた。

 そこで見ていた誰もが、ジャッキーの勝ちで勝負はついたと思った。


 けど、フタバはその瞬間に盾を手から放し、体を反転させながらジャッキーの右横に並ぶような体制になる。

 ジャッキーは振り下ろしてしまった剣をあわててもう一度振り上げようとするが、その時にはもう遅く、フタバの小手への攻撃をかわすことは出来なかった。


「そこまで、勝負ありだ」

 シュミット先生の合図で、試合が終わった。

 

「ホントに勝っちゃうなんて、フタバすごすぎじゃん」

 次の日の午後、学校が終わってから。

 ここはラルフお兄ちゃんとフタバが止まっている宿屋がある、旧王城の中庭。


 ちなみにラルフお兄ちゃんは忙しくて今はいない。残念・・・

 で、今はフタバとユリカで私に昨日のその後の事を教えてくれていたのだった。

「ユリカの説明だとそう思えるかもしんないけど、ホントは違うんだってば。多分、あいつが本気だったら100回戦って100回負けるわ。それも、そのうち半分は一瞬で負ける。手の内がバレた今なら、なおさらね」


「え?ジャッキー手は抜かないって口では言ってたのに、ホントは本気じゃなかったの?」

 ユリカはそう聞き返す。

 ていうか、フタバの時で手を抜いてったって言うなら私の時はもっとじゃん・・・

「ん~、わざと負けたとかはないと思うんだけど、痛くしないように戦ってたっていうか。特に足を踏まれたとこは、まともに力入れられたら、靴脱いで抜けるなんて無理だった」


「じゃあもちろん私の時も・・・だよね?」

 ちなみに私には全然そういうふうには見えなかったけど。

「ミルフィ最後の突きを受けたとき、全然痛くなかったでしょ?魔法でガードしてたのによ。ガードだけ全部突き破っておいて、痛くしないように寸止めするってどんな技術だと思う??多分そもそも、本気でやるつもりならあんたの『固い風』のガードは一撃で全部貫かれてると思うわ」


 うわ・・・そうだとしたら、私がどう頑張っても絶対無理じゃん。

 勝ち負け以前に、そもそも戦い自体が成立しない。

「だいたいアイツ、負けたのに全然悔しがりもせずに、次もヨロシク、って言ったのよ。どう考えたって、本気でやって負けたらそんなことないでしょ!」


 フタバは自分の太腿のあたりに握った拳を叩きつける。

「フタバは本気のジャッキーと戦ってみたい?」

 私は、あえて聞いてみた。

 フタバってば、昔っから負けん気は強いほうなんだけど、この時ばかりは

「ん~・・・そりゃ、そうに決まってるけど・・・」


 とちょっと首をかしげる。

 それから少し考えて、こんな風に答えた。

「アイツが本気になってくれないのはあたしが弱いからってことだから文句言っても仕方ないわ、本気を出させるぐらい、あたしが強くなるしかないってこと。それに、来週からの授業はずっとあたしが相手させられそうな流れじゃん。勝ち逃げって思われるのもかっこ悪すぎだし。フルボッコにされるのもやだから・・・そういう意味でもあたしが頑張るしかないわ。ミルフィ、先週はあたしが付き合ってあげたんだから、今度はあたしの特訓に付き合ってよ」


「ごめん、それは無理・・・」

 と、私は即答した。

 いくらフタバのお願いでもしばらくは戦士系の子との訓練は控えたい。ほんとに、人と向かい合うだけで震えが来ることもあるぐらいだから。


 それに、フタバはいくらでもラルフお兄ちゃんに稽古つけてもらえるじゃん。

「しばらく私はユリカといっしょに魔法の腕を磨くことにするわ。特に、ダメージ獲れるまともな攻撃魔法を覚えられるように・・・」


次回更新は10月22日(土)の予定です。

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