44.チェルニィ救出作戦④
『0話』も追加していますのでよろしくお願い致します。
「そんな事言ったらダメだよ。チェルニィは私が絶対助けるから。チェルニィも私たちを助けてくれたんだし・・・それに、チェルニィの事、大事な友達だって思ってるよ。だから・・・」
私は必死だった。
チェルニィが自分で生きる気になってくれないと、助けるのはもっと難しくなるって思ったからだ。
けど、それでもチェルニィは首を横に振る。
「あんたは、お人よしすぎるのよ。あたしがアンタたちを助けたのは、仲間を裏切ったわけじゃない。むしろあたしとしては、本当は助ける気なんて全然なかったのよ。けど、こちらの都合で仕方なく助けたって言うだけ・・・」
どうしよう、どうしよう。
とにかく頭を働かせるんだ。
まずはどうやってチェルニィを説得するか・・・だ。
「あんたみたいなチビっ子が何カッコつけてんのよ。強がってないで、助けて、って言っちゃいなさいよ。あたしたちがなんとかするって言ってんだから!」
私よりも早く、フタバが・・・ってこれ、挑発になっちゃってるってば。
けど、結果的にはこれで正解だったのかも。
「そんな事言ったって、一体どうするつもり?あの牢屋番に戦いでも挑んでみる??そしたらどうなるかなんてあんたでも分かるでしょ!あと、あたしのことちびっ子って言うなっ!あんたらより何倍も長生きしてるんだから!!」
って、言葉の上では拒否されたけど、さっきまでよりも気力があるって言うか、これなら少なくとも話す余地はありそうだ。
まあ、力づくってのは絶対なしだけどね。
チェルニィの言うようにあの牢屋番と戦ったとしても・・・きっと、この牢屋の床か壁に、赤い染みが3つ増えるだけだ。
ひえ~・・・。
「ねえチェルニィ、力づくじゃなくって他に方法あるよきっと。だから、3人で考えてみようよ。私たちにできる方法を・・・。そうだ、私たちここを出たらチェルニィの村に行ってみるよ。そしてこのことを話してみる。そしたらなんとかなるかも」
方法としたらこのぐらいしか思いつかないけど・・・
「ホラ、さっきも言ったでしょ。あんたお人よし過ぎって。あたしがここで人間につかまって処刑されるって言ってんのよ。あんたたちがあたしの村に行って、同じようにならないってどうして思えるわけ??」
う・・・そこは考えてなかった。
だけど、少しでも可能性がある以上、あきらめたくはない。
・・・ていうことは、ちゃんと話を聞いてもらうための準備が必要ってことだ。
「それよりも、知っておきたいんだけどあんたがあたしたちを助けた『こっちの事情』っていったい何?」
それを言ったのはフタバだったけど、確かにそれは私も気になる。
だから私は、
「確かに、それがなんかのヒントになるかも!」
って続けた。
チェルニィは、私とフタバを見てちょっと考えているようだった。
「それはね、本当は人間に教えてはいけないの。だけどあんたたちは『例外』かもしれない・・・もしかして、この世界の『創造主』のことを知ってる?」
「ルシェルフの事なら知ってるわ」
と、即座に答えたのはフタバだ。
私はその名前を知らない。
だけど、それでも大筋は分かっているから、口を挟まなかった。
「じゃあいいわ、教えてあげる。だけど絶対に他の人間に話したらダメよ。なんでダメかは・・・あたしの話を聞けば理解できると思うわ」
そう言って語り始めたチェルニィの話は驚くべきものだった。
「あたしたちダークエルフはね、『創造主の黒子』なのよ。この世界が出来たときからずっとそう。そして創造主はこの世界である『実験』をしているの。それは彼らにとってもすごく重要な実験らしいの。詳しいことはあたしも知らないけど、その実験の為に都合の悪いことはあたしたちが修正しなければならない。つまり、アンタたちが死んだら創造主の実験にとって都合が悪いから、あたしがアンタたちを助けただけ。そして、あたしたちは人間が決して知ってはならないことを沢山知っている。だから創造主は、ダークエルフと人間が交流しないように『設定』したの。特に事情を知らない人間側がみんな、ダークエルフに対して憎悪を持つように・・・ね」
なんかね、驚くのに慣れるっていうか・・・本当は表現としておかしいのかも知れないけど、そんな感じ。
この所、驚くことが多すぎるもんね。
「それじゃまるで、ダークエルフがまるで天使みたいじゃない。・・・でもちがうか、人間がそれを嫌うように『設定』されるって・・・うーん、わかんないわ!」
フタバは両手で自分の頭を抱える。
「何が違うかって言うとね、『この世界の創造主は神様じゃない』ってことよ。だから創造主は人間を導いたりはしない。彼らにも正解は分からなくて、しかもそれを知りたがっている。この世界の人間が、自ら正解を見つけるのを待っているのよ」
今の話の中からチェルニィを助けるための手がかりを探さないと・・・。
なにかあるはず。
・・・あれ?
「ねえチェルニィ、その話の通りだとすると、人間はダークエルフを嫌うようにされてるけど、ダークエルフは人間を嫌ってるとは限らないってことになるよね?それなら私たちがチェルニィたちの村に行っても話を聞いてもらえるんじゃないかしら?」
そうだとしたらちょっと希望が見えてくるんだけど・・・。
「あのね、ミルフィの考え方は、単純すぎるのよ。確かにあたしの話をそのまんま聞いて、他に条件が何もなければそうなるかも知れないし、もしかしたら最初はそうだったかもしれない。けどね、あたしたちは常に人間から敵視され、攻撃されてきたのよ。それが創造主による設定だ・・・ってことは知っていてもダークエルフにだって感情がある。そんな状況で人間の事を好きになるはずがないでしょ!」
うぐ・・・言われてみれば確かにそうだ。むう・・・。
「それでもやっぱり、なんとか話を聞いてもらうことは出来ないかな。とにかく問答無用にさえならなければ頑張ってみるから!」
私はこの時、一つの方法を思いついていた。
けどそれは、口には出さない。
とにかく話を聞いてもらうところまでいかなければどっちにしてもダメだし。
「いいわ。あんたを信じてあげる。これを持って行って。・・・ていうか、そもそもこれが無きゃ、村を見つけることも出来ないんだけどね」
そう言ってチェルニィが取り出したのは小さな銀の笛だった。
「道をそれてから最初の沼を超えてすぐの所でその笛を吹きなさい。そうしないとその先は無限ループになるわ。この笛を持っていってあたしから渡されたって言えば話ぐらいは聞いてもらえるはずよ。けど・・・あたしを助けに来て、って言っても無駄だからね。だってあたしは村の掟を破ってこの人間の街に来たんだもの。そのあたしを助けるために仲間を危険に晒すようなことは絶対にないと思うわ」
イメージで言うと、ダークエルフって一人ひとりは人間よりも強そうだけど人数が少なそうな感じ?
だからきっと、チェルニィの言う通り、たとえ人間に対して良くない印象を持っていたとしても、自ら望んで人間と戦うようなことはしないんだろう。
でも、私が思いついた『あの方法』ならきっと大丈夫。
そんな気がする。
「チェルニィ、絶対に助けるから、心配しないで待ってて!」
それは、気休めとかそういうのじゃない。
根拠はないけど、確信はあった。
私がそう言った途端、チェルニィは我慢できなくなったのか、わっと泣き出した。
「あたしだって、ホントは絶対死にたくなんかないよ。だけど・・・ミルフィは無茶したらダメだよ。もしダメでも、アンタの事を恨んだりはしないから・・・」
私はチェルニィを抱きしめる。
「大丈夫・・・大丈夫だから」
そう、何度も繰り返した。
チェルニィは、震えていた。
そりゃそうだよね。
私たちの何倍も年上だって言っても、やっぱり子供だもん。
そして、この子を救えるのは私たちしかいないんだ。
だから、助けて見せる。
絶対・・・絶対に。
次回の更新は2月25日(土)の予定です。




