43.チェルニィ救出作戦③
今回アップしたのはこのお話ではなく『0話』です。
次のお話は予定通り明日 2月19日(日)になります。
私たちは20部屋並んだ牢屋の内の、一番奥の部屋まで連れて行かれた。
私たちをここへ連れてくる係の兵士から、牢屋の見張りの人に引き渡される。
この見張りの人が、大きいのなんの。
比喩じゃなくて、ホントに私たち2人分足したくらい身長がありそう。
そりゃね、私たちは子供だし、4年生の中だって平均よりも小っちゃい方ではあるけど・・・。
ううん、はっきり言った方がわかりやすいから言うけど、私の身長は128センチ。
フタバが133センチ。
それを足したら・・・計算してみて。
なんと2メートル61センチだよ!
正確にピッタリじゃないとは思うけど、もしかしたらそれ以上あるんじゃない?ってくらい大きい。
「今日は一段とちっこいのが来たなあ・・・」
なんかこの人、熊みたいなんだけど。
でも、私たちとしてはそれどころじゃないんだった!
「ねえ、私たち処刑されちゃうの?(泣)」
もうね、気持ちに余裕がない。
だから思ったことをそのまま聞いた。
「誰がそんな事言ったダ?」
ってこの見張りの人が言ったから、私とフタバはジーッと兵隊さんの方を見て、それから指さして口を揃える。
「「この人!」」
「いや、お前らが処刑されるとは言ってないぞ。こっちの牢屋は処刑される奴らが入る牢屋だって言っただけだ」
この兵隊さんの言い分にもいろいろ言いたいことはあるんだけど、そこはまあ置いといて。
「そしたら私たち、これからどうなるの!?」
って聞いたら、一瞬間をおいて、
「どうなると思うダ?」
だって。
こんな所で焦らさないでよ!
「ま、一晩生きてられたら帰れるダよ。がんばるダね」
そう言ってから、豪快に笑う。
また不吉なことを・・・。
この人も趣味悪い・・・。
20の牢屋のうち、私たちが来ている地下2階にあるのはその半分の10部屋。
上の階の牢屋は格子で中が見られたんだけど、ここは中が見えないようになっている。
「お前らの牢屋は17番って言われてるダ。けど、他の部屋が良ければ変えてもいいダよ。オススメはせんダがね」
・・・。
私とフタバは顔を見合わせた。
「フタバどう思う?」
ってちっちゃい声でこっそり聞くと。
「コイツ絶対性格悪いよ。騙そうとしてるから17番はダメと思う」
ってフタバは答えた。
じゃあ、どこにしよう・・・。
こういうのは考えたってわからないから当てずっぽうしかない。
「じゃあ、11番!」
私は宣言した。
「本当に1番でいいダか?それとも先にちょっとのぞいてみるダか?」
う・・・そう言われると、やっぱりいきなり決めるのは怖い・・・。
「じゃあ、先に見せて!」
結果的には、いきなり決めないで正解だった。
熊みたいな見張りの人がちょっとだけ開いて中を見せてくれた1番の部屋は、幽霊部屋。
牢屋として使われてるんじゃなくって、資料とかゾンビとかアンデッド系のモンスターがたくさんいて、半分肉の腐り落ちた顔で牙を剥いている。
「ひっ・・・」
この部屋選んでたら私たち絶対喰われてるじゃん!
「ガハハ!ションベン臭い小娘が2人そろってちびったダか?」
このセリフ、下品なおじさんの常套句だよね。
「ち、ちびってなんかないもん」
私はすぐ言い返す。
そんなに何度もちびったりしないもん!
「・・・」
けど、フタバは無言。
しかも半泣きだ。
ここはツッコミ入れたらダメな所だ。
「どうしてもと言うなら止めはせんが、素直に7番にしといた方がいいダよ。全部のぞくつもりならお前らの下着がいくらあっても足らんダよ」
このオジサン、まだ言うわけね・・・。
むう・・・。
「な・・・17番は怖くないのね?」
私は恐る恐る、聞いてみる。
だってこの人、17番は怖くないとはまだ言ってないもんね。
「7番も邪悪な奴ダよ。けど、多分怖くはないダ。そいつはお前らよりチビだしな」
・・・
私たちは、きっと鈍かったのだ。
本当は、もっと早く気付いても良かった所。
けど、さすがにもうわかったよ。
私たちが入れられる、その牢屋の中にいるのは、チェルニィだ。
そしてラルフお兄ちゃんが、そういう風にしてくれたんだ。
そう思うとちょっと元気が出てくる。
だから私とフタバは、むしろ自分から17番の牢屋に入った。
でもそこは牢屋って言うより、長方形の石だけで組み上げられた、ただの檻。
身を隠す場所もない、ただの真四角い空間。
ちょっと!女の子的にはこれ、すごく困るじゃん!!
・・・って言うかそれ以前にね、ここの牢屋ってそもそも人間扱いじゃないよ。
この部屋はまだ、中にいるのがチェルニィだったからまだいいけど、11番の部屋はアンデッドだったし、他の部屋もきっと恐ろしいモンスターでいっぱいなんだろう。
なんか不穏な吠え声が聞こえたりするし・・・。
つまり、扱いとしては『モンスターのエサ』ってことだ。
そこまで考えるともはや、『女の子的には・・・』どころの話じゃなくなってくる。
そんな恐ろしいモンスターからしたらエサが男でも女でも変わらないもんね。
せいぜい『女の子の方が、肉が柔らかい』ってぐらいのもんだろう。
なんてことを考えていると、見張りのおじさんは容赦なく扉を閉める。
後ろでは石のこすれる音。
鍵とかじゃなく、石の扉にカンヌキだ。
扉自体もすごく重そうだし、こんなの絶対に開くわけがない・・・。
それから、地下2階だから外からの窓がないのは仕方ないとしても、扉側についた窓も閉じられたままで内側からは開けられない。
私たちが逃げないかどうか、外から見張るためだけの為にある窓だ。
そういえば訓練用のダンジョンも同じ構造だったけど、あの時は閉じ込められてたわけじゃないから気にもしなかった。
そして中には思った通りそこにはチェルニィがいて、でも石畳の上だというのにうつ伏せに寝っ転がったまま。
よく見ると首筋にひどい怪我をしていて、まったく治療された様子もない。
「チェルニィ、大丈夫!?」
勢いでそういう風に聞いちゃったけど、大丈夫なはずないよね。
「あ・・・んたた・・・ち・・・」
チェルニィは一応意識はあって話そうとするんだけど、息が抜けている感じで苦しそう。
「チェルニィしゃべったらダメだってば!じっとしてて」
私はすぐに駆け寄って、チェルニィの怪我の状態を確認する。
首筋の怪我は、牙の跡だ。
私たちはチェルニィが怪我をしたところを見ていたわけじゃないけど、大体の状況は分かった。
太い血管までは行ってないみたいで血が止まりかけてるのが不幸中の幸いではあるんだけど・・・。
「ミルフィ、あたしにやらせて。なんとかしてみるわ」
そっか、フタバは回復魔法が使えるんだった。
私が場所を譲ると、フタバはチェルニィの怪我の所を指先で触りながら確認していく。
普段は指圧しながらの回復魔法だけれど、そうじゃなくても出来ないわけじゃない。
けど、魔力の大きさとかいろんな事情があって、患部に直接触りながら指先に集中して魔法を使わないと効果が薄いらしい。
(まあ、もしそうじゃなければとっくにお尻に治療をしてもらっちゃってるけど)
それにしても、戦士系で回復魔法が使えるって羨ましいよね。
フタバの場合は触れてないとダメだから戦闘中には使えないってこともあるけど、それでも剣で戦えて終わったら自分で回復、っていうのは黄金パターンには違いない。
戦闘中は使えないって言う弱点は、もしかしたら将来的には欠点も克服できるかもしれないしね。
チェルニィは体力的にはまだきつそうだったけど、怪我自体はだいぶ回復したみたい。
でも・・・。
「ダメじゃないあんたたち、あたしを助けたら人間を裏切ることになっちゃうんだよ!それに、どうせあたしは明日、処刑されるんだから・・・」
チェルニィはゆっくりと言った。
諦めているというか、気力がない感じ。
そして、そのままこんな風に続けた。
「あのね、あたしは明日、死ぬの。そしてあんたたちは、おとなしくしてれば無事にここを出られる。だからね、明日になったらあたしのことはきれいに忘れるの。あたしが死んだ、ってこととかも考えちゃダメ。会った事も全部忘れて・・・そしたら元通り。あんたたちには今まで通りのふつうの毎日が待ってるはずよ・・・」
次回の更新は2月19日(日)の予定です。




