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42.チェルニィ救出作戦②

「九十六!」

「あうっ」

「九十七!」

「ひぎっ」

「九十八!」

「ぎゃひっ」

「九十九!」

「ぴぎゃっ」

「ほい、ラストォ!」

「ぐぴぃぃぃぃぃっ」


 100の激痛と、100の悲鳴と共に私たちの『お仕置き』はようやく終わってくれた。

 要は『お尻叩き』だったわけだけど、その痛さは半端じゃない。

 何ていうのかは知らないけど平べったいしゃもじのお化けみたいなので100発だよ!?

 なんて表現したらいいんだろう。

 終わった今でも、『お尻がマグマのように熱い』って言ったら伝わるかな・・・?

 何度も意識をなくしかけて、何度も激痛で目を覚ました。

 子供だからとか、女の子だからとか言う手加減は一切なかった・・・と思う。

 お尻じゃなきゃ、間違いなく死んでるよね・・・。

 まあ、だからお尻なんだろうけど。


 そんな状況だから、もちろんお尻が痛くて座ることはとても無理。

 今は『お仕置き』が終わって待たされている状態で、椅子もあるんだけど私たちだけは4つんばいで耐えるしかない。

 これ以外の姿勢は無理・・・なんだけど。

 

 ガラの悪い執行人が

「オラオラ、そんなところでケツ突き出してるのはもっと引っ叩かれてえのか?」

 なんて言ってきたりして・・・。

 私とフタバは

「ヒッ」

 と悲鳴を上げながら、慌てて立ち上がって背筋をピンと伸ばす。

 100発ってのが決まりだから、個人の裁量でそれを増やしたりすることは出来ないんだろうけど、私たちをからかって遊んでいるのだ。

 かと言って、万一にでもこの状況でホントに叩かれたらたまらないから、私たちはこんな反応をせざるを得ない。

 コイツ、絶対性格悪いよ!趣味も悪い!!

 もうやだよホントに・・・(泣)


 でも、本当に私たちはラルフお兄ちゃんに見捨てられたのかなぁ・・・。

 そうだとしたら、お尻の痛さなんかよりそっちの方がずっとつらい。

 本当は、私もフタバもちょっと期待していたんだと思う。

 きっとラルフお兄ちゃんだったら分かってくれるって・・・ね。

 だからこんなことになって、余計にショックが大きかった。

 

 だけど、ラルフお兄ちゃんは誰よりも多くの魔物と戦ってきた勇者様だ。

 だから『モンスター』扱いされてるダークエルフのチェルニィを助けようとしたから見捨てられた、って可能性も・・・。

 ああ、もう、考えるほど気が滅入ってくる。


 私とフタバの気分がどん底のどん底の、そのまたどん底まで落ち込んでいる頃に、その人はやってきた。

「よぉ、悪ガキども。そろそろピーピー泣いてる頃かと思って来てやったぞ」

 え?グロリアさん!?


 グロリアさんって言うのはほぼ風魔法しか使えなかった私に水魔法を教えてくれた人で、クラスメイトのユリカの師匠だ。

「・・・私悪ガキじゃないもん」

私がそう言うと、

「泣いてなんかいないわよっ」

 とフタバが続けた。


「・・・あれ?フタバってグロリアさんのこと知ってるんだっけ??」

 ふと、浮かんだ疑問。

「あんたよりよっぽど前から知ってるわ。ラルフお兄ちゃんのパーティに何度も参加してるんだもの」

 そういうんだけど、フタバの反応見てると、何となくだけどグロリアさんの事、苦手なんだろうなあと言うのが分かる。

「コイツの秘密もいっぱい知ってるぞ。今度ミルフィにも話してやろうか?」

「や、や、や・・・やめてよっ!」

 うわ、フタバすっごく慌ててる。噛んでるし。

 

 フタバはちっちゃい頃からラルフお兄ちゃんの剣の弟子でいろんな所に一緒に旅をしてた。

 最近フタバが意外と臆病だって分かってきたから・・・ものすごく強い敵が出てきたときとか、どんな怖がり方をしたんだろう・・・って感じの話かと思ったんだけど、でも危ないところに行くときはお留守番だったみたいだからそういうことじゃないのかも。

 一緒のパーティにいたグロリアさんは当然戦力としてラルフお兄ちゃんと一緒に行ってたんだろうから、そのグロリアさんが知ってる事って言ったら普段からの生活の中の話なんだと思う。


 一体何だろう。

 興味はある。

 あるんだけど・・・。

 でも今話さないとならないのはそこじゃないよ!

 

「とにかく、あたしたちラルフお兄ちゃんに見捨てられて凹んでるからしばらくほっといて・・・」

 フタバが私の言いたいことを代わりに言ってくれた。

 まあ、フタバには話を逸らそうって言う意図もあった感じだけどね。

 本当はこれ以上言われたら泣いちゃいそうだからやめてほしいんだけど、黙っててもそれはそれでどんどんマイナス思考になって行きそう・・・八方ふさがりじゃん。


「馬鹿言うな。ラルフがお前らの事見捨てるわけないだろ。だいたい、アイツだって勇者になる前はここでケツ真っ赤にしてたクチだぞ。・・・おっと、それともお前らのケツは青いのか?」

 う・・・グロリアさん、以外と口が悪いなあ。

 私とフタバが恨みがましく頬を膨らめていると、グロリアさんはこう付け加えた。

「あ、そうそう。ラルフから伝言だ。『うまくやれ』ってさ」

「それだけじゃわかんないよ!」

 と、私はすぐに抗議。

「牢屋の中でがんばれ、ってことさ。これからな」


「え~・・・まだ帰れないの?」

 てっきりグロリアさんが引受人できてくれたから帰れるもんだと思ったのに・・・。

 でも、そしたら

「ここで帰ったら意味がないだろ」

 って当たり前みたいに言われた。うーむ・・・。


 それからグロリアさんは私とフタバのお尻を応急処置だけしてくれた。

 このまま一晩痛いままだと大変だから・・・ってね。

 でもこの人の専門は水と火の魔法だから・・・回復魔法じゃなくって、水の魔法で冷やしてくれただけっぽい。

 それでもだいぶ助かったんだけれども。


 そして係の人に連れられて、私たちは牢屋に入れられることになった。

 旧王城の中心部から見て、訓練用のダンジョンになっているのと全く反対側に、左右対称の構造で、今も使われている牢屋がある。

 そりゃあ、センパイたちをケガさせたのは私たちも悪かったと思うけど、それにしても牢屋に入れられるほどかなあ・・・。


 その『係の人』は、さっきまでのガラの悪い連中とは全然違って、普通の若い兵士って感じの人だった。

「お前ら、一体何やらかしたんだ?」

 なんて言ってたから、事情については全く聞かされていないみたい。

「・・・ちょっと、人に怪我をさせちゃって・・・」

 と、私は少し言葉を濁した。

 まさかダークエルフの子を助ける為、とは言えないもんね。

 だけど、嘘は言ってないよね。

 無難に答えるとなるとこの程度しか言えないんだけど。


「そしたら、相手の人がよっぽど偉い人でものすごく怒ってたか、打ち所が悪くて死んじゃったとか・・・どっちかかな・・・?」

 え?なになにこの言い方・・・すごく嫌な予感しかしないんだけど・・・。

「そんなことないはずですよ?だって2人とも平民の学校のセンパイだし・・・」

「怪我はラルフお兄ちゃんが魔法で簡単に直しちゃったし」

 私とフタバは口を揃える。


「ふーん、そうか・・・まあ事情は知らないけど大変だな」

 この兵士さんはなんでこんな言い方するんだろう・・・。

 私が見上げていると、さらに何か言おうとするんだけどそれをやめて、その後

「かわいそうにな・・・」

 って・・・。

 なんか憐れむような顔で見られても不安ばっかり募るんだけど。


「ちょっとどういうこと!?はっきり言ってくれないと気になるじゃん!」

 フタバは兵士さんに食って掛かった。

 言いたいことは私も同じ。

 だけど、立場的に考えたらもうちょっと下手に出た方が良いと思うんだ。

 多分フタバはこのせいでかなりのトラブルに巻き込まれてるし、私もそのとばっちりをしっかり受けている・・・。


 まあ、この時は幸いその点を咎められることはなかった。

 ・・・なかったんだけど。

 けど、それ以上に大変なことを告げられたのだ。

「だってお前らがこれから入る牢屋、相当罪が重い奴らが入れられる所だぜ。・・・処刑される奴とか」


 え・・・私たち、こんなことで処刑されちゃうの!?

 ひどすぎる・・・。

 私たちを処刑したらこの物語終わっちゃうかんね!絶対ダメだかんね!!


次回の更新は明日、2月12日(日)の予定です。

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