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34.挑戦!レベル2ダンジョン!!②

「ほんとはね、フタバはすっごく強いんだよ。だけど・・・」

 そこまで言った私を軽く制し、それからひざまずいてゆーくんとフィオナちゃんの肩の上にそっと手を置いてから、その先をフタバは自分で言った。

「あたし・・・ゴブリンが怖くってたまらないんだ・・・今も泣いちゃいそうなぐらい怖くて、体も震えて・・・カッコ悪いよね」

 言いながらも、きっとすっごく悔しかったんだと思う。

 でも、フタバの言葉はゆっくりだけどハッキリとしていた。


 ゆーくんもフィオナちゃんも最初は、やっぱりビックリしてるみたいだった。

 フィオナちゃんはゆーくんの方を見て、ちょっと恐々と反応を確かめるような感じ。

 そしてゆーくんは・・・。

「カッコ悪くなんかないと思うよ。だって、自分で立ち向かうって決めたんでしょ?それと、僕が言ったの、なまいきだったよね。初心者だと思っちゃってたから・・・ごめんなさい」

 そう言ってから、しゃがんでいるフタバの頭を顔ごと抱いて、頭の後ろを何度かポンポンと軽くたたいた。

 ゆーくん、やるなあ・・・。だけど、ここは冷やかす場面じゃない。


「ゆーくんには、すっごく勇気をもらったよ。2つ目の部屋なんて、ゆーくんが声かけてくれなかったらきっと戦うこともできなかったかもしれないぐらい。だから、生意気だなんてぜんぜん思ってない。それにこうしてると、今も・・・ちょっと安心できるんだ」

 フタバは嫌がるどころか、そんな反応だった。

 こういうところもいつものフタバとは違うな、とは感じたけど・・・でも、何とかしよう、って思ってる意志は伝わってくる。

 自分の弱いところをさらけ出してでも、変わろうってしてるって感じ。


「ゆーくん、あたしも~」

 あら、フィオナちゃん、やきもちやいちゃったのかな?

「あ、ごめんね。もう平気だから・・・」

 フタバはゆーくんの手を振りほどいて、立ち上がる。

 ちょっと泣いてたのかな?

直接涙は見えなかったけど、ちょっと目のあたりを拭うような仕草をしたような気がした。

 けど、怖くて泣いていたわけではないと思いたい。


「次がさいごだから、がんばろうね」

 そうやって、最後にフタバに声をかけたタイミングも絶妙。

 私と2人で行った時もそういう感じの所もあったけど、これじゃあどっちが上級生かわからないほどだ。

「ゆーくん、はやくぅ!」

 空気は読まないフィオナちゃん。

 ゆーくんもちょっと苦笑。

 でもフィオナちゃんにそれを求めるのは無理があるか・・・。


「はい、これでいい?」

 ゆーくんはフィオナちゃんの求めに応じて前から頭をぎゅっと抱きしめる。

「もうちょっと!」

 微笑ましい場面ではある。

 ゆーくんも嫌がらずに付き合ってあげてるし、きっとゆーくんは、本当の年よりも精神年齢が高めなのかも。

 うちのクラスの男子たちとは大違い。

 おっと、これはあんまり言っちゃダメなんだった・・・。


「じゃあ、ミルフィもね!」

 油断してたら、私も同じように、前から頭をギュッとされた。

「うわっ、ゆーくん、私は大丈夫だってば!」

 自分でもちょっと動揺してるのがわかる。

「ミルフィには、ボクがしたかったの」

 フタバやフィオナちゃんに聞こえないように、ゆーくんに小声で耳打ちされた。

 もう、前言撤回!ゆーくんってばいたずらっ子だ!!


 だけど、ゆーくんにこうやってされるとなんか安心できる、って気持ちはちょっとわかる。

 気を抜いたらこのまま眠くなっちゃいそうなぐらい・・・って、それはダメダメ!まずいってば!!

 むう・・・。


「そ・・・それよりゆーくん、次の部屋の作戦立てないと!」

 思わず声に動揺が出ちゃってるけど、それは仕方ない。

 ちょっと強引にでも話題を変えないと大変なことになっちゃう!

 だって私はラルフお兄ちゃん一筋だもんね(しつこい)。


「まってよ、最後の部屋も、今まで通り2人だけでやらせて」

 フタバは『それならもう決まってる!』とばかりにすぐにそう言った。

 あれ、私ちょっと余計な事言っちゃったかな?


「次のへやは、パターンどおりなら大ボス1ぴきと中ボス2ひきだよ。よゆうがあるなら弱い中ボスの方を先にやっつけちゃうのがいいと思うけど・・・でも、ぼくが自分で戦ったのはレベル1だけだから、もしかしたらちょっとちがうかも」

 ゆーくんはそう言うけど、戦ったのはレベル1だけでも全部見てはいるから、敵の構成については多分間違いないはず。

 どのレベルでも強さが違うだけで敵の数とかのパターンは一緒なのかな?

 

「わからないけど、どのぐらいできるか試しながらやってみる。全力でいけそうなら手近な敵から倒してくだけでもいけるはず。だけど、もしかしたらやっぱり何もできなくなっちゃうかもしれないから、その時は・・・」

 フタバには、敵の強さはわかっている。

 むしろ自分がどれだけの力を出せるかの方がわからないんだ。

 さっき『泣きそう』って言ってたのも、比喩とかじゃなくてホントにそうなんだろう。


「いいよ。思い切って行ってきなよ。ダメそうだったら手伝うから心配しないで」

 ゆーくんはそう言って、フタバに目で合図。

 うーん、うまい。

 フタバがここまで頑張れてるのは間違いなくゆーくんのおかげ。

 簡単にはいかないだろうけど、これで恐怖症が治ってくれるといいなあ。


「フィオナちゃん、頼りないセンパイでゴメンね。でも最後まで2人でがんばろ!」

フタバはちょっと自虐的な感じで言うと、微妙なニュアンスをちょっと感じ取ったのか、フィオナちゃんはどう反応していいかちょっと困ってる。


「フタバったら、そんな風に言われたらフィオナちゃんも答えようがないでしょ。もっと前向きにがんばろうよ!」

 私もそんな風にフタバに声をかけた。

「うん・・・そっか、そうだね・・・じゃ、いくよっ!」


 フタバはそう掛け声をかけて、勢いよく最後の扉を開いた。

 敵の数も想定通り、大ボス1の中ボス2。

 ある程度の距離もあるから、お互い不意打ちになることもなく、万全の体制で戦える。

 フタバが前に、フィオナちゃんはその真後ろに立って、私とゆーくんはちょうどフィオナちゃんの横あたりでサポートできる体制を整える。


 敵の3体はちょっとばらけていたから、フタバは中ボス2体をうまくけん制して引きつけつつ、中ボスとの距離を詰めていった。

 ボスと中ボスの内の1体はフタバが攻撃しに行くと迎え撃つ体制なんだけど、もう一体の動きが牽制につられてなくておかしい感じなのに私は気がついた。


「フタバ気を付けて、魔法使いが一匹入ってるよ!離れてるやつ!!」

 私はとっさに言ったけど、フタバの作戦に変更はない。

 もしかしたら私が口を出すまでもなくフタバはそれに気がついていて、その上で『ゴブリンの魔法使いの魔法なんて威力は大したことない』って読みなのかもしれない。

 作戦としてはちょっと危険だと思うけど。

 だったら・・・。


「フィオナちゃん、あの一匹だけ離れてるゴブリンの顔めがけて『ウォーターボール』を撃って!」

 顔面に魔法を当てれば相手の呪文を止められる。

 だから私はそう言ったんだけど、フィオナちゃんにそれを求めるのはちょっと無理があったかも。


 私は思わず簡単に言っちゃったんだけど、敵に当てればいいのと敵の顔面に当てなきゃならないのとでは魔法の難易度が数段違う。

 『自分ならたぶんできそう』って言う感覚だけで思わずの発言だったんだけど、これは完全に私の判断ミスだった。

 フィオナちゃんは当てないといけないと思って数歩前に出てから呪文を唱え始めた。

 私はアッと思った。これは危ない。

次回の更新は1月15日(日)の予定です。

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