33.挑戦!レベル2ダンジョン!!①
さあ、レベル2のダンジョンに挑戦!
レベル2ってことは2年生の4人パーティくらいでちょうどいいレベルだから、実は私たちが全員で本気を出したら楽勝のはずだ。
でも、今回の目的はあくまでもフタバとフィオナちゃんのリハビリ。
だから、基本的に私とゆーくんはできるだけ手出しをせずに、フタバとフィオナちゃんに頑張ってもらうことにした。
ううん、本当を言えば、実はフタバはソロでこのレベル2のダンジョンは楽々クリアしているのだ。
フタバの場合強いから、もしかしたら実力で言ったら私とゆーくんが2人で失敗したレベル4だってソロでクリアできちゃうかもしれない。
だけど、レベル2ダンジョンには大きな問題があった。
だって、このダンジョンの敵はゴブリンなのだ。
つまり、フタバが打ち勝たないとならないのは敵ではなくって自分の心の中にある恐怖だってこと。
とは言え、2年生向けのダンジョンだから、敵キャラクターは本物のゴブリンよりもデフォルメされてかわいい?感じになってるし、それに『1回自分だけでクリアしてる』って言う自信もあるはずだから何とかがんばってほしい。
私の希望的観測としては、このぐらい、何事もなくクリアしちゃうような気もしていた。
でも、長い廊下を歩いて行ってだんだん暗くなってきたぐらいで早くもちょっとフタバの様子がおかしい。
2人だけの時ならなんか声をかけて勇気づけてあげたりしたいところなんだけど、1年生2人がいるからそういうわけにもいかないし・・・。
フタバにだって意地とかあるだろうから、カッコ悪いところを見せちゃったらかわいそうだ。
とはいえ、最初に部屋の扉を開けて中に入るのはフタバなんだよね。
さすがにフィオナちゃんにやらせるわけにはいかないもん。
けど、扉の前まで来てもフタバはちょっとためらっている。
フォオナちゃんもちょっと不安そう。
そして私にはどうすることもできない。
うーん、やっぱり一度、私とフタバの2人だけで来てみた方が良かったかなあ・・・。
「フタバちゃんだいじょうぶ??」
フタバが怯えているのは、フィオナちゃんにもわかってしまったんだろう。
フィオナちゃんはホンモノのゴブリンを見たことがないのはもちろん、このレベル2ダンジョンに挑戦するのも初めてだから、フタバが怖がっているのを見て『ゴブリンって怖い』って思っちゃっても仕方ない。
自分が知らないものを、年上のお姉さんが怖がっていたら、それは怖いものなんだって思っちゃうよね。
「心配させてゴメンね。でも、大丈夫。フィオナちゃんも失敗してもいいから思いっきりやってみて。あたし頑丈だから、ちょっとぐらい当てても平気だよ!」
あんまり余裕はなさそうだったけど、やる気にはなってるみたいでひと安心。
それからフタバは思い立ったように勢いよく扉を開けた。
最初の部屋のゴブリンは1匹だけ。
まあ、最初の部屋は腕ならしっていうところだ。
でもこの部屋は、1匹目に手間取るともう一匹出てくる仕掛けがあるからそれだけは注意しないと。
けど、やっぱりフタバは腰が引けている。
私には戦士系の子の技術的なことはわからないけど、それでもすごく怖がっていて、逃げ腰なのははっきりわかるぐらい。
それに、ゴブリンが攻撃してきても棒立ちだ。これはマズイ・・・。
フィオナちゃんが撃った『ウォーターボール』がゴブリンに直撃して怯んでくれたから助かったけど、うーん、やっぱりまだ無理なのかなあ・・・。
今のはタイミングが良かったから動きを止めることが出来たけど、フィオナちゃんの攻撃力だとやっぱりこいつを倒すには足りないしね。
私が手出しをするかどうか迷っていると、見かねたゆーくんが先にフタバの隣に肩を並べた。
けど、ゆーくんはゴブリンをやっつけるのを手伝おうとしてるわけじゃなかった。
「もっと踏み込んで、こうだよ!」
ゆーくんはていねいに素振りを繰り返して手本を示す。
そっか、ゆーくんはフタバの『ゴブリン恐怖症』の事も知らないけど、それ以前にフタバが本当は強いってことも知らないんだ。
多分・・・ううん、ほぼ間違いなくゆーくんは、フタバの事を剣の初心者だと思ってるんだろう。
これってフタバのプライドを傷つけたりしないかがちょっと心配・・・。
でもフタバは素直にゆーくんに従って、動きのマネをした。
本当はきっと、フタバにしてみたら何万回も繰り返してきた基本中の基本の動き。
だけどそれが全然できていないことは事実で・・・。
「こうやって、こう・・・ちがう、こうかな・・・」
フタバは何度かゆーくんのマネを繰り返して自分の動きを確認した。
もちろん頭の中ではわかりきった事ではあったんだろうけど、冷静になって再確認できたのが良かったんだと思う。
まだ本来のフタバの動きとは程遠いけど、さっきよりはだいぶいいように見える。
「うん。いいよ。そんな感じ。じゃあ、アイツに思い切って打ち込んでみて。自信を持てば大丈夫だから!!」
それにしてもゆーくん、教え方もさまになってるなあ・・・。
フタバはもしかすると、剣を習い始めたばっかりの頃を思い出してたのかもしれない。
その頃のフタバは・・・今のゆーくんよりも小っちゃかったころだよねぇ・・・。
それからフタバが木刀を横薙ぎに振るうと、一撃でゴブリンをやっつけてしまった。
「すごいすごい!次は踏み込む方だけじゃなくって後ろの足の体重移動も気を付けてみて。あと、今度の部屋は敵の数が増えるから剣を振った後のスキに反撃されないように注意だよ!!」
その後も、フタバの動きはゆーくんのアドバイスでちょっとずつ良くなっていくみたいだった。
怖がる気持ちよりも自分の動きを確認することに集中できているからかな。
2部屋目の敵の数は4匹だった。
つまり、パーティの最大人数と同じなんだけど、私とゆーくんは手出ししないことにしてるし、フィオナちゃんは前には出られないから実質的にはフタバが全部相手にしないとならないことになる。
だからさっきの部屋よりはだいぶきついはずだけど、全然、問題はなさそうだ。
自分の動きだけじゃなく、フィオナちゃんが攻撃されないようにちゃんとサポートもしているし、2人の息もだんだんあってきている。
フィオナちゃんの魔法の威力はやっぱり足りないけど、少なくとも相手の連係を乱すのには役に立っているし、命中率の方もなかなかだ。
いくつかはフタバに当たっちゃいそうな魔法もあったけど、それはフタバがうまくかわしている。
フィオナちゃんに『失敗した』って思わせてもいけない、ってぐらいフタバは気を使っていたみたい。
それが出来る状態にはなってきたってことでもある。
こうなれば、4匹いようが物の数じゃない。もともと本物よりもはるかに弱いザコゴブリンだからね。
フタバはきっちりノーミスで4匹とも倒し切った。
フィオナちゃんにもきちんと活躍の場を用意してあげられるぐらいで、ちょっとは余裕がでてきた感じだ。
最後の一匹を倒した後には、小さくガッツポーズをしてフィオナちゃんに握手を求めたぐらい。
「ほんとにすごいや、けど、次の部屋は相手も強いよ。実は僕も自分でやっつけたことはないんだ。どうする?今度はボクたちも手伝おっか?」
ゆーくんは本気で心配しているらしい。
私はちょっと、フタバと顔を見合わせた。
嘘は言ってないとはいえ、なんかこのままじゃ、ゆーくんたちをだましてるみたいで悪いからね。
「ねえゆーくん、最後の扉を開ける前に、ちょっとお話があるんだけどいい?あと、フィオナちゃんも一緒に聞いて」
私が言うと、ゆーくんもフィオナちゃんも目をぱちくり。
だけど、ちゃんと伝えなきゃ。
次回の更新は1月11日(水)の予定です。




